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[PR:公益社団法人 日展]

「今、すごく描きたい!」光宗薫の創作意欲を揺さぶった“日展”の世界



作品から伝わる、作家たちの圧力。初めての「日展」へ



今回は、日展会員で洋画家の石田宗之さん、彫刻家の中原篤徳さんとともに、会場を巡りました。会場に足を踏み入れると、思わず「わぁ!」と声を上げる光宗さん。

石田:ようこそ、「日展」へ。光宗さんは作家活動もされていますが、「日展」はご存じでしたか?

光宗:もちろんです。知ってはいましたけれど、実際に観に来たのは今日が初めてです。日本で最も歴史ある公募展なので、なんとなく堅いイメージがあって、少しハードルの高さを感じていました。

中原:実は、そういうイメージをお持ちの方も多いんです。日展には「日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書」の5部門があり、3,000点を超える作品が並びます。古典的な作品からモダンな作品まで、さまざまな表現に出合えるので、作家さんならなおさら楽しんでいただけると思います。


▲光宗薫(みつむね かおる)
モデル、アイドル、俳優としての活動を経て、現在は絵画制作を中心に活動する。


光宗:3,000点! 1日では全然回りきれないですね。

石田:一点一点じっくり観ていたら、1日では到底足りません。会期中、何度も足を運ばれるお客様もいらっしゃいます。作家にとっては、ここに展示されることが目標であり、喜びでもありますから、ぜひじっくり楽しんでいただきたいですね。

光宗:公募展だから、応募すれば必ず展示されるわけではないんですよね。飾られるまでにも戦いがある。どのくらい応募があるんでしょう?

中原:毎年、全国から11,000点を超える応募があります。

光宗:1万点以上! そして、飾られたから終わりではなく、会場ではまた別の戦いがある。作家なら誰だって、自分の作品の前で来場者にできるだけ長く立ち止まってほしいし、作品やその世界観に思いを馳せてほしい。そんな作家さんたちの圧力を、早くも感じています。

▲左/石田宗之(いしだむねゆき) 洋画家。日展会員、光風会理事。
▲右/中原篤徳(なかはらあつのり) 彫刻家。日展会員。流通経済大学教授。


石田:作品をご覧になるとき、どんなところに注目されますか?

光宗:切り取り方ですかね。なぜここを切り取ったのか。観る人に何を受け取ってほしいんだろう。どこに引っかかりをつけたのかなって。作者の意図を想像することから入るかもしれません。

中原:それは、ご自身で描かれる方だからこそ出てくる言葉ですね。

光宗:作品を見ることで、本人と直接話す以上に感じてしまうこともあるのが、アート鑑賞の楽しいところだと思っています。もしかしたら作者が想像している以上に、知った気になってしまうときさえあるというか。一方で、他人は他人だなと、しみじみ感じることもある。面白い。

石田:今日、光宗さんがどんなことを感じられるのか、私たちも楽しみです。





現場で描くひまわりから、驚異のボールペン画まで。「洋画」に潜む作家たちの美学

▲西村みのり『遠い記憶』(上段右から3番目)

光宗:わぁ〜、すごい迫力ですね。あ、昆虫の絵だ!

石田:光宗さんは、ご自身の作品でも昆虫をよくモチーフにされているそうですね。

光宗:はい。昆虫の中でも特にセミが好きなんです。すごく情報量が多い部分に安心するというか。機械がすべて意味のある部品でできているように、セミの腹側の造形は時計の内部のようで、無駄のない美しさを感じます。

石田:この絵の作者、西村みのりさんとも話が合いそうですね。

光宗:ふふふ。きっと西村さんも、昆虫にメカニカルな魅力を感じていらっしゃるんでしょうね。これくらい大きな作品だと、一つ一つの世界観に引き込まれます。想像が止まりません。日展には作品の大きさに規定があるんですか?

石田:洋画の場合、一般出品者はF100号(縦162cm×横130cm)まで、会員以上はF130号(縦194cm×横162cm)以内と決まっています。

光宗:「まで」ということは、小さなサイズでもいいんでしょうか? 観ている限り、100号で出品されている方が多そうですね。

石田:小さな作品を出品される方もいらっしゃいますが、大きなサイズを選ばれる方が多いですね。


▲石田宗之『云何遊此娑婆世界』

光宗:石田先生の作品、色使いにすごくこだわりを感じます。ターコイズやパープルピンクのようなニュアンスカラーが美しいですね。

石田:いろいろな色を使うと賑やかになって統一感に欠けてしまうので、最初にキーカラーを一つ決めています。

光宗:モチーフやタイトルはどう決めているんですか?

石田:日展の出品作はいつも人物画です。若い女性にモデルをお願いして、東洋的というか、オリエンタルな雰囲気を醸し出せればいいなと思って描いています。ただ、タイトルはいつも「読めない」と不評なんですよ(笑)。

光宗:不評なんですか(笑)。確かに、難しい漢字ですね。

石田:毎回、仏教の経典である「観音経」から一節を拝借しています。今回のタイトルは、観音様が娑婆世界(しゃばせかい/私たちが暮らす世界)で遊んでいらっしゃる、といった意味です。モデルの女性と観音様のイメージを重ねています。

光宗:筆のタッチも大胆なところと繊細なところがあって、そのコントラストも、色の重ね方もすごく美しい。どういうことを意識して描いていらっしゃるんでしょうか?

石田:自分の気持ちよさに正直なんです。この色とこの色を組み合わせたら気持ちがいいな、と自分が思えば、それでもう正解だと思って進めています。それが本当に正しいかどうかは、自分ではわかりませんけどね。

光宗:気持ちよさ、ですか。絵から楽しさが伝わってくるので、きっとその思いが表れているんでしょうね。


▲佐藤哲先生と、作品『向日葵』

石田:あちらに佐藤哲先生がいらっしゃいますね。ぜひ、お話を伺いましょう。日展では毎日、誰かしら作家が会場にいますから。作家から直接話を聞けるのも、楽しみの一つなんですよ。

光宗:すばらしい作品ですね。遠くからでも、すごく目を引きます。

佐藤哲先生(以下、敬称略):ありがとう。これは、ほとんど筆を使わずに描いています。手で直接色を塗ったりね。その方が、色がきれいに出るんですよ。キャンバスを現場に持って行って、その場で描いています。

光宗:この大きさのキャンバスを現場に持って行かれるんですか!? ひまわりということは夏ですよね。過酷な環境が目に浮かびます。左上でこちらを向いているひまわりは、ものすごくインパクトがありますね。

佐藤:うれしいね。今回は中心のひまわりから描き始めて、左上のひまわりへ視線が向かうよう、意図的に構成しています。現場でないと、こういう動きはなかなか描けない。ひまわりの間から見える空も、意識的に入れているんですよ。

光宗:私も先生の意図を読み取れて、うれしいです。お話を聞いてから改めて見ると、また違って見えますね。


▲未央賞受賞作 保坂裕一『天国への足跡』

石田:日展では、今年から新たに「未央賞」という賞が設けられました。一般入選作品を対象に、今後の成長や将来性を重視して選考する賞です。こちらの水彩画もその一つですね。

光宗:水彩も洋画なんですね。他の作品とは少し違う印象を受けました。こう、絵の中に吸い込まれていくような感じがします。これは何を描いているんでしょう?

石田:作者に聞いてみないとわかりませんが、タイトルは『天国への足跡』。大切な人が旅立った世界なのか、自分がこれからつける足跡なのか。見る人の想像力に委ねる、その表現力が評価されたと聞いています。

光宗:私だったら、100号の大きさで表現するとなると、いろいろな要素や質感、テーマを盛り込みたくなると思うんです。でも、この作品は、ある種、最小限に描かれている。無駄を排除する潔さは、私にはないものです。欲張らない感覚というか。

石田:引き算の美学、でしょうか。この余白が想像をかき立てるのでしょうね。どこを歩いているのか、どこに向かっているのか。



▲渡邉裕公『憧れは若冲!』

光宗:これはボールペン画ですか!? 私もボールペン画を描くんですが、キャンバスってペン先がすごく引っかかるんですよ。こんなにきれいに発色させるには、何度も何度も塗り込まないと、キャンバスの目にインクが入っていかない。少し離れると、ボールペン画だとはとても信じられません。

石田:ご本人にお会いしたことがあるんですが、腕が腱鞘炎になるくらい描き込んでいるとおっしゃっていました。ボールペンは海外から取り寄せていて、何百本と使うそうですが、管理も難しいそうです。怠るとすぐにインクが固まってしまうと。

光宗:ボールペンって、一本一本インクの出方が全然違うんです。私も使い分けていました。でも、これ、描くのは楽しそうですね。細かいところを描き込んでいって、完成する時の高揚感は、やっぱり何にも代え難い。制作以外では感じられない気がします。

石田:非常に共感します。最後のピースがはまった瞬間、ワッと歓声が上がるような感覚ですよね。私は最初の構想段階が一番楽しい。そこからは、なだらかな上り坂と下り坂。上っている時はゴールが見えなくて苦しいけれど、先が少し見えてくると楽しくなりますよね。

光宗:あぁ、わかります。最初の真っ白な状態って、一番自由な時間。何でもできるんだ、という時間がすごく楽しい。途中は、終わりが見えない時間が結構長くて作業という感覚。でも、最後の最後、完成が見えてくると、気持ちが昂ります。

石田:途中はある程度、機械的な作業になるところもありますからね。やっぱり最初のクリエイティブな時間は楽しいですよね。


実際に触れて、見て、作家の思考をたどる「彫刻」

▲中原篤徳『海やまのあいだに』

光宗:これだけの彫刻作品が一つのスペースに並んでいる景色を見るのは、初めてな気がします。特選に選ばれるには、何か基準があるんでしょうか?

中原:基準は審査員それぞれだと思います。古典的な彫刻と現代的な彫刻では評価するポイントも違いますし、モチーフや質感など、さまざまな要素を見ています。彫刻は安定感も大切ですが、不安定さが心の揺らぎを表現することもある。そうした表現が、見る人の心に響くこともあるんです。

光宗:審査員は何人くらいいるんですか?

中原:1部門あたり19人ですね。

光宗:それだけの人数の琴線に触れなければ入選できないとなると、難しさが想像できます。先生の作品をよく見ると、細かな傷や指の跡が残っていますね。これは制作の過程でつくものでしょうか?

中原:自然についたものもあれば、意図的につけたものもあります。きれいに消してしまう作家もいますが、僕はこういう形跡を生かしたい。今回は粘土の状態が良かったので、制作の痕跡が残りやすかったのかもしれません。

光宗:粘土の状態がいいというのは、どういう状態ですか?

中原:僕的には水分量が多い状態です。水分が多ければ柔らかく、減れば硬くなる。僕は柔らかい粘土が好きですが、硬いものを好む人もいます。粘土はぬか床みたいなもので、昔の彫刻家が使っていた古い土を混ぜたりもするんですよ。

光宗:ちなみに、彫刻も絵画と同じようにモデルさんがいるんですか?

中原:人によりますが、僕の今回の作品はモデルがいます。彫刻の場合は「モデル台」という、中華料理店の円卓のように回転する台に立ってもらいます。角度を変えながらモデルを見て制作するんです。絵画との違いは、そこかもしれませんね。

光宗:なるほど。360度、あらゆる角度から見るんですね。

▲鈴木紹陶武『開かれた静寂のやぎ』

中原:彫刻部門では、「OK」と手のマークがある作品は触っても大丈夫です。ぜひ触れてみてください。

光宗:わっ、思っていた質感と違います! ゴツゴツと硬そうな印象でしたが、サラサラしていて、少し柔らかさも感じます。ところで、彫刻で動物をモチーフに選ぶのは珍しいんですか?

中原:そうですね。日展は明治40年に「日本画」「西洋画」「彫刻」の3部門で始まったのですが、特に彫刻では、高度な技術で写実的に作られた人体像が評価されてきた背景があります。今も人体の具象表現を追及する作家が多い側面があります。

光宗:この作家さんは、それでも動物で勝負していらっしゃるんですね。私もあまり人間を描かないので、周りの方から「人を描いてみたら」と言われます。

中原:僕は好きなものを作るのが一番だと思います。ただ、人間を作ることも勉強にはなりますよ。自分も人間ですから。

光宗:だからこそ、なんですかね。見るのは好きなんですけど、描くとなると、表情一つで意味合いが強くなりすぎる気がしてしまう。その表情だけで作品の世界観が決まってしまうような。

中原:それは僕もよくわかります。だから僕の作品も、表情は少しぼんやりさせています。

光宗:たぶん、表情がはっきりしている方が、見る人にとっては意味がわかりやすいんだと思います。理解してもらうという意味ではいいのかもしれませんが、私はそのわかりやすさを求めたくないんです。

中原:わかりやすいことが、必ずしも伝わるという結果につながるわけではないですからね。だからこそ、人を表現する面白さもあります。

※手のマークのある彫刻作品についてのお願い
・どなたでも触れることができますが、やさしく触れてお楽しみください。
・着色してある作品は、色が落ちる可能性があるのでお気をつけください。
・疑問や質問などがございましたら、お気軽に会場にいる作家までおたずねください。



崩すために、極める。論理的なアート「書」の表現

中原:続いては「書」です。日展で最も応募点数が多い部門で、毎年9,000〜1万点ほどの応募があります。

光宗:1万点近くも、書だけで応募があるんですか?

中原:はい。非常に狭き門です。ここに展示されているのは、数多の砂の中からすくい上げられた、珠玉の作品ということになります。

光宗:書の評価基準は、どういうものなんでしょうか?

中原:ここに展示されている作品は、すべて創作なんです。お手本があるわけではありません。自分で選んだ漢詩や短歌を書いたり、文字を独自に崩したり。墨のかすれや濃淡も表現の一部。そうした全体のリズムやバランスが評価されるんです。

光宗:それって、ほぼアートの感覚に近いような……?

中原:その通りです。書の先生方もそうおっしゃいます。ただ、アートとしての感性だけでなく、相当な修練も必要です。古典漢字や変体仮名といった歴史的な文字を研究し、基本や知識を身につけなければ、そもそも書けないし、ましてや崩すこともできません。

光宗:文字の成り立ちを知った上で、崩す。だから「この形に崩したら面白いかもしれない」と考えられるんですね。すべての線や形に意図があるということか。めちゃめちゃ論理的なアートじゃないですか!

中原:ご理解の早さに驚きます。

光宗:いえ、先生の説明が素晴らしいんです。書の見方が今一瞬で変わりました。鳥肌が立ってます、すごい!



▲中野北溟『よろこび』

光宗:書って「お習字」をイメージしていました。それらを基礎とした表現ということですね。細部まで意思を宿している。

中原:そうですね。基礎をしっかり修練した上で、あえて崩していく。自分の世界を作り上げる美学とでも言いましょうか。見る人が見れば、その作家が何をどう学んできたのかもわかるそうです。

光宗:まずは基本をガチガチに学んだ上で、どうはみ出していくか。えー、面白い!作品を見ると人間性がわかる、とよく言いますけど、書はまさにそれなんですね。

中原:「書」のイメージが変わりました?

光宗:変わりました! 「書」そのものもそうですが、先生方のイメージもかなり変わりました。かっこいいと思うものを追求して表現している「書」の先生は、誰よりもアーティストかもしれない。やっぱり、こうしてお話を聞くことは大切ですね。

中原:こちらは、103歳の方の作品です。この「よろこび」は、こだわりを持って薄墨を使っていらっしゃる。薄墨は濃淡がはっきり出るので、扱いが非常に難しいそうです。

光宗:筆の動きが見えますよね。薄い墨だからこそ、よりはっきりと。息づかいまで感じられます。今日一番の発見は「書」かもしれません。今まで、アートの中に「書」があることが不思議だったんです。でも今日のお話を聞いて、すっと納得できました。




美しさの裏側まで、見てみたい。素材と技が切り拓く「工芸美術」の可能性

▲松田千穂『ねぷたまつり』

光宗:わぁ、種類がいっぱい!華やかというか、空間の彩度が突然上がりましたね。

中原:こちらは工芸美術部門です。染め、織り、陶芸、漆、金工、木彫、竹、ガラス、人形、七宝など、さまざまな素材や技法の作品が並んでいます。こちらは青森の伝統工芸、こぎん刺しです。

光宗:工芸美術は間口が広いというか、自由度が高いんですね。すごく鮮やかな作品。それに、刺繍の幅がすべて均一で美しい。

中原:津軽こぎん刺しは、伝統的な幾何学模様を作るための厳格なルールがあるそうです。一方で、「モドコ」と呼ばれる基本の模様をどう組み合わせるかは自由で、近年は新たな表現も生まれているそうですよ。

光宗:模様の型は決まっていても、大きさや配置、色で個性を表現できるんですね。近くで見れば見るほど、この正確さがすごい。一瞬も気が抜けない作業ですよね。私、こういう細かくて地道な作業は結構好きなんです。


▲鈴木良一『Walking Brain』

光宗:これは何の虫なんだろう。

中原:タイトルは「Walking Brain」。歩行と脳の関係を表す言葉がありますが、それを意味しているかどうかは、作者に聞いてみないとわかりません。

光宗:今にも歩き出しそうな雰囲気があるので、その意味かもしれませんね。よく見ると、ほとんどの足が地面についていない。温かみもありますね。これは彫刻には入らないんですか? 大きさの問題でしょうか。

中原:いえ、どの部門に出すかは作者の自由なので、彫刻部門に出品することもできます。ただ、そこで評価されるかどうかは別の話ですね。

光宗:なるほど。彫刻部門では、硬い素材ほど柔らかなニュアンスを目指していたように感じますが、工芸作品では素材そのものの質感を生かした作品が多いように感じます。

▲宮田亮平『シュプリンゲン25-2』

光宗:それにしても、作品の種類がすごい。工芸美術部門は、どんな素材で作られているんだろうと考えるだけでも楽しいですね。

中原:そうですね。制作過程が想像できない作品もたくさんあると思います。

光宗:この作品はどうやって色をつけているんでしょうか。

中原:繊細かつ大胆さも必要な、非常に高度な技術が使われています。色は、金属の表面に電気を流して着色しているそうです。

光宗:その両方が求められる表現は、私には苦手な分野なので、美しさと同時に恐ろしさも感じてしまいます。

中原:あぁ、わかります。自分には難しいことって、そこはかとない恐ろしさを感じますよね。

光宗:そうですね。生き方にも通じるのかもしれません。私は細かい作業や、神経質なくらいにこだわることは得意なんですけど、「まあいいか」「このぐらいでいいや」と思うことが、昔から苦手で。大胆だったり、潔い表現にも苦手意識があります。

中原:情報量の多い絵がお好きというお話にもつながりますね。

光宗:そうかもしれません。ぎっしりと情報があると落ち着くんです。わたしにとって大胆な表現は、意識しないとできないことです。



一歩近づけば、景色が変わる。「日本画」が誘う想像のその先



▲榊原孔美子『Aluhi - 願い』

中原:最後は日本画です。洋画よりも規格が大きく、最大150号になります。

光宗:150号!人が全然いなくても、人に囲まれているような感覚になりますね。「この世界に入り込んでほしい」という思いを作品から強烈に感じます。この作品は、表面がポコポコしていますね。日本画にもモデリングペーストのような画材があるんでしょうか。

中原:おそらく「盛上げ胡粉」かと思います。表面全体にも「胡粉」を塗っているかもしれません。先ほど作品からの圧力についてお話しされていましたが、光宗さんご自身も、制作時には鑑賞者の視点を意識されていますか?

光宗:そうだと思います。どれだけ長く作品を観ていただけたとしても、描いている時間には到底及ばないと思うんです。だけど作家としては、自分以上に長く作品の世界と向き合ってほしいと、誰よりも願っているのかもしれません。

中原:今日は、僕の方が勉強させていただいているような気がしています。感慨深いお話が多くて、ずっと感動しています。一人の作家として、こうした視点で作品を見ていただけるのは、本当に嬉しいですね。


▲左/佐々木曜東『沈思する』

光宗:この作品、好きです。お顔の印象が一番薄いんですよね。表情は細い線で描かれている一方で、背景や体の印象がとても強い。だからこそ、お顔が際立っている。ファニーな背景色とは裏腹に、表情はどこか憂いを帯びています。私、昔からネガティブ寄りの感情を感じる絵に惹かれるんです。

中原:ネガティブな気持ちをどう表現するのか、というところに興味があるんじゃないですか。

光宗:そうかもしれません。そもそも私が絵を描き始めたのも、ネガティブな感情を消化するためだったんです。絵を描くことで、自分の中にある感情と向き合い、消化していく。とても平和的だと思いませんか?

中原:非常に建設的だと思います。

光宗:だから、アートに関わること自体が、そういう感情と折り合いをつける行為なのかもしれません。暗い心情をそのままネガティブに表現すると、自分もつらいし、作品も重くなりすぎてしまう。だから、あえてポジティブな表現で描く。その方が、伝えたいことがより響く場合もあると思うんです。この作品にも、そういうニュアンスを感じました。

▲木村真光『いのち、薫る』

光宗:意図が違ったら失礼な言葉になってしまうかもしれませんが、日本画って落ち着いた色合いの表現が得意なジャンルじゃないですか。その中で、あえてこんな鮮やかな色を選ばれている。遠目に見たときは、正直あまり好みじゃないかもと思ったんです。でも近づいてみたら、赤ちゃんが描かれている。しかも、少し毒気のある世界観ですよね。それで一転して、好きかもと思いました。

中原:きっと、そう意図されているのだと思いますよ。

光宗:そう考えると、このポップで可愛らしい色合いも、狙っているのかなって。

中原:おそらく、その毒気に気づかず通り過ぎてしまう人もいると思います。そこに気づいてくれたことを、作者は喜ぶんじゃないかな。ちょっともやもや、ざわざわする絵ですよね。

光宗:そう思ったら、もうすごくこの作者さんとお話ししたくなりました。実は私、在廊することも、在廊している作家さんとお話しすることも、避けてきたところがあるんです。作者の思いが100%伝わることはないとわかっていても、受け取ってもらえないのも、受け取れないのも悲しくなっちゃう。でも今日、石田先生、中原先生のお話を伺いながら巡ったら、本当に楽しくて。新たな扉がたくさん開きました。



「一人じゃなかった」。光宗薫が日展で見つけた、創作への新たな情熱

▲秋田美鈴『H_36.10199. 140.10272_26』

中原:今日ご覧になった中で最も印象に残った作品に、彫刻を選んでくださり、ありがとうございます。非常にうれしいです。

光宗:中原先生と巡ったからこそ、印象に残った作品です。

中原:乾漆(かんしつ)という、漆と麻布を重ねて形づくる古い技法の作品です。代表的な乾漆像には、奈良・興福寺の阿修羅像があります。見た目の重厚さとは裏腹に軽く、持ち運びやすいのが特徴です。阿修羅像も、その軽さゆえに火災の際に運び出され、後世に残ったんです。

光宗:作者は20代の女性だそうですね。それを聞いて、さらに印象に残りました。実は私、なんとなく、この技法を選ぶ感覚は、きっと若い方だろうと思っていたんです。見た目は重そうなのに、軽々と抱えられる。その意外性も、作品の意味に含まれているような気がして。そこも含めて、とても興味深かったです。説明を聞いて初めて、面白さに気づけた作品でした。

中原:初めての日展でしたが、いかがでしたか?

光宗:作品との距離がとても近くて、ライトにもディープにも楽しめる展覧会だと思いました。アートにあまり触れたことがない人も、ものづくりをする人なら絶対に来た方がいい。「いい展示を見ると描きたくなる」と昔からよく言いますが、今、すごく描きたいです。まだ何十分の一くらいの作品としか向き合えていないのに、偉そうなことを言っちゃいました。

中原:いえ、非常にうれしい言葉です。

光宗:創作ってすごく孤独な作業だと思うんです。でも今日、自分以外の人たちも、一人で長い時間をかけて制作しているんだと感じました。自分だけじゃなかった。一人じゃなかった。ずっと一人で描いていると、こんなことをしているのは自分だけなんじゃないかと思うこともあるんです。でも、仲間がたくさんいました。なんだか、すごく元気が出ました。

日展(第119回 日本美術展覧会)
開催期間:2026年10月30日(金) ~11月22日(日)
  休館日:11月4日(水)、10日(火)、17日(火)
開催時間:午前10時~午後6時(入場は午後5時30分まで)
開催場所:国立新美術館 東京都港区六本木 7-22-2
問い合わせ:03-3823-5701(日展事務局)
最寄り駅:乃木坂、六本木



光宗薫さんプロフィール&出演映画



光宗薫(みつむねかおる)
1993年4月26日生まれ、大阪出身。画家、俳優。
2011年頃より独学でボールペン画を描き始める。
近年は幅広い画材を用いて夢幻的な昆虫や空想の生物等を描く。
2026年1月15日に作品集『せみにんげん』(玄光社)を刊行。
今年8月には出版を記念した個展を大阪で開催した。
バラエティ番組『プレバト!!』にも定期的に出演中。
俳優としては、『ATARU』『まれ』『闇金ウシジマくん
Season3』『おい!ハンサム』など様々な作品に出演している。近年の出演作は『照子と瑠衣』など。

◆光宗薫 Instagram
https://www.instagram.com/mtmnkor/
◆光宗薫 X
https://x.com/mtmnkor

光宗薫さん 出演情報



テレビドラマ『角醒ハンター オメガホーン』
【PROJECT R.E.D.】第2弾は、人間と巨獣の異色バディ活劇!
かつて地上を支配した「角獣」。時は流れ、角獣の力が封印された「エゴルギア」で戦う「ハンター」たちの時代では、「エゴ」の強さがパワーになる!
青年シャウトは、角獣王・炎角と出会い、「キャプテン・オメガホーン」を名乗って自分の夢を叶えるために戦っていく!

『角醒ハンター オメガホーン』
【出演】楢原聖、国上将大、糸瀬七葉、三浦舞華、加藤憲史郎、田鶴翔吾、小西詠斗、桜庭大翔、光宗薫、長田光平

テレビ朝日系列にて毎週日曜9:30〜放送中!



アートな一日に、もうひとつの目的地を。日展とあわせて楽しみたい周辺グルメスポット3選

日展をきっかけにでかけるなら、周辺のグルメスポットにも足を延ばしてみて。国立新美術館を中心としたこの一帯は、街を歩くだけでも新しい発見に出会える場所。せっかくなら、おいしい食事やゆっくりお茶を飲む時間も、おでかけの目的に加えてみませんか?日展とあわせて訪れたい3つのグルメスポットをご紹介します。

いつもより早起きして、おいしいパンとコーヒーを/bricolage bread & co.




澄んだ空気が心地よい秋の朝は、少し早起きして街へ繰り出しませんか。目指すのは、けやき坂の「bricolage bread & co.(ブリコラージュ ブレッド&カンパニー)」。国立新美術館から徒歩約12分の距離にあり、朝7時から営業しています。日展の鑑賞前後はもちろん、合間にも気軽に立ち寄れるスポットです。

創業者は、フレンチの名店「レフェルヴェソンス」のシェフ・生江史伸さん。パンやコーヒーを愛する生江さんが、全商品を監修しています。落ち着いた店内や、緑を感じるテラス席でやわらかな風に吹かれるのも素敵。気になるパンをお土産にするなど、気分に合わせて自由に過ごせます。

▲「コンビーフエッグベネディクト」(1,680円)

パンはすべて国産小麦を使用し、できる限り全粒粉も取り入れています。まず味わいたいのは、一番人気の「クロワッサン」(420円)。全粒粉の豊かな風味と、独特の形が生む食感のコントラストが光ります。お土産には、ハード系の見た目に反して柔らかな「農民パン」(720円)をどうぞ。

肌寒い季節には、温かい「カフェラテ」(630円〜)をお供に。豆は複数のロースターから仕入れており、日によって種類が変わります。「エスプレッソ」(260円〜)や「ドリップコーヒー」(400円〜)など、訪れるたびに異なる味わいに出会えるのも、リピーターが多い理由とのこと。

店の前のけやき坂では、11月5日(木)からイルミネーションがスタートしています。きらめく光景と温かいコーヒーで締めくくれば、思い出深い一日になるはず。


bricolage bread & co.
所在地:東京都港区六本木6-15-1 けやき坂テラス1階
電話番号:03-6804-3350
最寄り駅:六本木駅

公式サイトはこちら>



おいしい香りの世界へ!五感の総合芸術・和菓子を愛でる/とらや 東京ミッドタウン店




もっとアートに触れたい方は、徒歩約3分の東京ミッドタウン周辺へ。このエリアでひと息つくなら「とらや 東京ミッドタウン店」がおすすめです。日本の美意識に触れながら、ゆったりとくつろげます。

老舗和菓子店「とらや」の喫茶併設店で、大きな暖簾が目印の店内にはギャラリーも設けられています。10月23日(金)から2027年2月24日(水)までは、企画展「おいしいにおい、おいしい香り」を開催中です。食と香りの関係を紹介しており、香りのよい食材の実物展示や、実際に香りを嗅げる体験コーナーも。

見た目の美しさはもちろん、香りや味わい、食感、さらには菓銘に込められた意味まで楽しめる和菓子は、五感の総合芸術とも言われています。

▲「あんみつ」(飲み物付き 3,080円~)

菓寮ならではのメニューなら、「あんみつ」(飲み物付き 3,080円〜)を。北海道産小豆を使ったこし餡を中心に、色とりどりのトッピングが並びます。琥珀羹、粟羊羹、えんどう豆、求肥など、さまざまな味わいを一度に楽しめるのはあんみつならでは。11月末までは、栗餡や蜜栗をあしらった秋限定の「栗あんみつ」(飲み物付き 3,410円〜)も登場します。

日展へ何度も足を運ぶ方は、「季節の生菓子」(飲み物付き 1,947円~)も要チェック。半月ごとに色目が替わるため、訪れるたびに繊細な季節の移ろいを感じられます。


とらや 東京ミッドタウン店
所在地:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア地下1階
電話番号:03-5413-3541
最寄り駅:六本木駅、乃木坂駅

公式サイトはこちら>



東京タワーを臨む特等席で、非日常のひとときを/THE SUN & THE MOON Restaurant




特別な時間を過ごしたい方は、アート好きにおなじみの六本木エリアへ。森タワーの「THE SUN & THE MOON Restaurant(ザ サン アンド ザ ムーン レストラン)」がおすすめです。海抜250m、東京タワーを見下ろせる高さから街並みを一望できます。

月と森をイメージした店内は、都会の喧騒を忘れさせる落ち着いた雰囲気。珍しい植物のディスプレイや、杉本博司、広瀬智央ら現代美術家の作品が空間を彩ります。

※展望エリアのため、ビューチャージが別途1人500円必要(森美術館、森アーツセンターギャラリー、東京シティビューのチケットをお持ちの方は不要)。別途サービス料10%、窓際席は1テーブル2,000円の席料がかかります。

▲「シャインマスカットとマロンのお月見アフタムーンティー」(6,000円)11:00~17:00の提供(L.O.15:00)※2時間制

非日常感のある休日にピッタリなのが、「AfterMOON Tea(アフタムーンティー)」(6,000円)。フレンチをベースに、月の森をイメージしたメニューです。

11月16日(月)までは「シャインマスカットとマロンのお月見アフタムーンティー」を提供。また、11月17日(火)からは新メニュー「ストロベリーとローズのアフタムーンティー」(7,000円)が登場します。ブッシュドノエルやライチとバラのスノーマントライフルなど8種のスイーツと4種のセイボリーが勢ぞろい。モクテルなどのドリンクも飲み放題で、秋冬の味覚を心ゆくまで堪能できますよ。

アフタムーンティーは要事前予約ですが、ランチは予約なしのアラカルトも用意。「松阪牛の麹パティとグリエールチーズのザ・ムーンバーガー」(3,000円)は、ジューシーな極上パティに香り豊かなチーズをとろけさせた、一度は味わいたい一品です。

夜には、夜景と楽しむ「MOONLight High Tea(ムーンライトハイティー)」(8,000円〜)も。日展の余韻に浸りながら過ごす、夜のひとときもまた格別です。


THE SUN & THE MOON Restaurant
所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ 森タワー52階
電話番号:03-3470-0052
最寄り駅:六本木駅

公式サイトはこちら>



取材・文/君島有紀
写真/日展:土佐麻理子
スタイリング/野田奈菜子
ヘアメイク/今道秀子

情報提供/公益社団法人 日展





芸術の秋を楽しもう!アート特集 2026



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