辛酸なめ子がタクシーで行く、夏夜の「心霊スポット巡礼」【八王子・多摩編】

【おでかけ時のポイント】

・居住地やおでかけ先の都道府県の要請に従って行動しましょう
・体調に不安を感じるときは外出を控えましょう
・なるべく少人数で空いている時間に行きましょう
・周囲の人との距離をできるだけ保つようにしましょう
・マスクを着用し、手洗いは小まめに行いましょう

多いときには倍率約40倍超え!?即完売の「心霊スポット巡礼ツアー」に参加

タクシーで心霊スポットを回るツアーがあるらしい・・・そんな噂を聞いていたのですが、自分には無縁のことだと思っていました。それがこのたび取材の依頼を賜り、心霊スポットに呼ばれているのかもしれない、と逃れられない運命を感じ、参加することに。

本当だったら抽選で数十倍を超える人気のツアーを、短縮して少し体験させていただきます。

参加するのは三和交通さんの「心霊スポット巡礼ツアー2021」の「多魔（多摩）」コース。八王子～高尾エリアをめぐる「多魔」コースのラインナップから運転手の山本さんが選んでくださった数カ所を訪れることに。通常はオールナイトで十数カ所も心霊スポットを回るそうですが、山本さんは霊障とか大丈夫なのでしょうか・・・。

「霊に憑かれたことはないですし、霊感もあまりないです。だからこそ心霊ツアーのドライバーをやれているのかもしれません」と、穏やかな笑みを浮かべる山本さん。「ツアー中は基本的に話しっぱなしです。無理矢理連れてこられたお客さんも楽しめるように、怖い話だけでなく歴史も交えて話しています」とのこと。ずっとトークしていてスキがないから霊がとり憑けないのかもしれません。

ツアーに組み込まれているスポットは、かつて殺人事件が発生したＫトンネル、全国でもトップ3に入るといわれる心霊スポットで江戸時代に攻め落とされそうになって自害者が多数出たというH城址、いわくつきの廃病院、死体遺棄事件があった近くのバス停など・・・。八王子周辺にこんな怖いところがたくさんあったとは！

よく、心霊スポットに行っておかしくなってしまった人の話を聞くので心配でしたが、今までのツアーでそのようなことはないとのこと。でも、参加前に、心霊現象で異常をきたしても主催者に責任を問わない、といった内容の誓約書にサインをします。

自称プチ霊感の持ち主である私ですが、今回は何も霊障を受けずに済むのでしょうか。念のためネガティブエネルギーを浄化するセージのスプレー（霊除けスプレー）を持参してタクシーに乗り込みます。

暗闇の中をしばらく歩いて、霊広場的なお堂へ

ツアーはJR八王子駅前からスタート。「ツアー中は気持ち悪い話をたくさんしますが、聞くに耐えないようなら言ってください。やめませんので・・・」と、不敵な笑みを浮かべる山本さん。八王子には江戸時代に数十万人処刑した刑場だった場所もあるのだとか。

鑓水（やりみず）という地名の由来や村境のいざこざ、「古代中国では隕石のことを『天狗』って言ったんですよ」といった豆知識を聞いていたら、あっという間に第一のスポットに到着。車を停めて、ちょっとした山道を歩いていきます。

▲Ｄ堂に向かう山道の入り口

「こちらのＤ堂は心霊スポットとしてはＳクラス。全国の心霊スポットの中でも5本の指には必ず入ってきます。お寺の別院として建てられたお堂の跡地で、昭和38年に堂守の82歳の老婆が殺されるという、いたましい強盗殺人事件が発生したといわれてます」（ちなみに堂守の女性は生涯独身だったのに3人もお子さんを出産したそうで、そんな訳あり感も気になるところです）

現在のＤ堂は供養されていて、何もない土台だけ。その周りを柵が囲っていて結界になっています。霊能者の人が見たところ、柵の中はやばいですが入らなければ大丈夫とのこと。

しかし真っ暗な夜の山は普通に怖いです。雨上がりでぬかるんだ道を滑らないように気をつけて登っていったら、開けた場所に出ました。

ここが霊広場的なスポットで、山本さんがパッと懐中電灯で照らしながら「あちらが現場のお堂跡です！」「首なし地蔵の怪談の元になったお地蔵さんです！」「このベンチでよく老婆の霊が目撃されています！」と説明してくださり、ゾクゾクしました。

ちなみに過去に何度も首が落ちたというエピソードがある地蔵は、よく見ると顔と首から下の色が違っていて、後づけ感が…。暗闇から何かに見られているような気がして、茂みからカサカサという音が聞こえました。

極めつけは山本さんが放ったこの言葉。「今日は虫の声がしないですよね・・・。霊がいる時は虫が黙るそうですよ」というのを聞いて、速攻退散したくなりました。

たしかに夏なのに不思議と虫の声が聞こえず、不自然な静けさが・・・。「きっと雨が降ったからですよ」と震え声で自分に言い聞かせながら、スピーディにその場を立ち去りました。オバケ屋敷ならわりと平気な私も、ガチな現場はちょっと危険を感じました。車の中で除霊スプレーを散布。

住宅街に佇む教会で起きた、悲惨な情事

▲現場に向かう道中の風景

続いて訪れたのは、Ｒ大学助教授教え子殺人の現場になったＫ教会。

「今は教会としては使っていないようです。もともとはＲ大学のＨ教授の別荘でした。よく同僚がこの別荘で集まっていたそうですが、助教授がここで不倫関係になった女子学生の首を絞めて殺害したんです。助教授には他にも不倫相手が何人もいたのですが、女子大生は本気になってしまい・・・」とのことで、女学生はもちろん、何の関係もないのに自分の別荘で殺人を起こされたＨ教授もかわいそうすぎます。

「女学生を殺して埋めた助教授ですが、見つかりそうになったので自首する前に妻子とともに無理心中してしまいました。その後、女学生の遺体は離れたところから白骨化して見つかったそうです・・・」

負の連鎖がエグいです。心霊スポットに行くと人間の業について考えさせられます。非業の運命を引き寄せてしまう因縁に関わらないようにするために、日々できるだけ言動に気を付けたいと、自戒の念を抱きました。

▲現場に向かう道中の風景

こちらのＫ教会は住宅街にあるので、タクシーを停めて車中から見学。

「遺体発見時のオレンジ色のワンピースを着た女子学生の霊がこのあたりで目撃されています」

暗い中からぼんやり教会のシルエットが見えます。まだ哀しみの残留思念が残っているのか、軽い吐き気と頭の重さを感じました。いつの時代もこのような悲劇が繰り返されないことを祈ります。

ただならぬ霊気？かつて謎の事故が頻発したというトンネル

最後に訪れたのは、Ｈ第二トンネル。車でトンネルをゆっくり通行した後、車から降りて見学をしました。このトンネルから数十メートル離れた両隣には、事故が多発したという廃トンネルがあるそうです。車で走行中、トンネルの真ん中あたりからもわっと空気が変わった感じがありました。

まだ21時頃だったので車通りもありますが、草木の生い茂った隣の廃トンネルからはただならぬ霊気が・・・。ここで撮影した写真の白いもやの中に人の顔が写っているような気がしました。

今回はこちらで最後となり、「家に帰るまでが心霊ツアーです」と、山本さんはお清めの塩を手渡してくださいました。

通常のオールナイトツアーは、朝4時頃に高尾駅で解散します。解散時には「お清め塩」と「終了証」がもらえます。

現場を後に

名残惜しいというか、もっと心霊スポットを体験したい、霊に後ろ髪をひかれるような感覚がありました。自分たちの物語を聞いてほしい、そんな霊たちの思いがあって、このツアーには人が集まるのかもしれません。その中には人生訓だったり戒めが込められたりしています。

霊たちのメッセージを受け止めて、明日からポジティブに生きていきたい、と不思議に前向きな気持ちがわいてきました。

※2021年8月2日時点の情報です。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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