やってきたのは高田馬場のふなわカフェ。 「人からもらう手土産」の印象が強い芋ようかんだが、ぼくはあれを自分で買って食べるくらい好きだ。ここも最初に見つけた時には喜んで飛び込んだ。



芋ようかんを食べたことのない2人



今回「ふなわカフェ」に連れてきたのは、おじさん2人である。しかもただのおじさんではない。芋ようかんを全く食べたことのないおじさん2人である。

この2人は友達でも何でもない。ぼくと金田さんは全くの初対面だ。中西さんは3年前になんらかの交流会で知り合い、その後何の交流もなく、フェイスブックで近況を拝見するだけの関係である。

事情が込み入ってきたので、わかりやすいように一度図にしてみよう。



余計にわからなくなった気もする。やっぱりあまり気にせず読み進めてほしい。

知らない男同士が3人で甘味を食べるという状況は、猛烈にくすぐったい。全員がさほど広くもない店内でキョロキョロしている。どこに視点を合わせたらいいかわからないのだ。



特に金田さんのモジモジっぷりがすごかった。なんどもシャツの裾を上げたり下げたりしている。

とうとう「初対面の男3人で甘味屋さん来ているの変じゃないですか……?」と言い出した。それ、みんなが言わないでガマンしていたセリフである。



初めてふなわの芋ようかんを食べる人たち



まずは「芋ようかん」を食べてみよう。

昔、舟和の芋ようかんを初めて食べた時は本当に驚いた。まるで実写がアニメになるみたいに、さつま芋の味を巧妙にディフォルメして芋ようかんにしている。製作した人の「さつま芋を味わう視点」をまじまじと見せつけられるような思いだった。

それでは初めて芋ようかんを食べた人のリアクションを見てみよう。



金田「あーっ芋だ! あっ芋が激しい! ああっ、思っていたよりもずっと芋なんですね~。ようかんって感じはあんまりないですね。おいしいです」

金田さん、食べて急にしゃべりだした。多分びっくりしたんだと思う。そうそう、ぼくも初めて芋ようかんを食べた時はびっくりしたんだよな。



中西「うまい。うまい。焼き芋をぐっと濃縮したような味ですね。味はようかんじゃないですね。こんな味初めてです」

中西さんはぐっと落ち着いたリアクション。「芋ようかん」を改めて考えると、相当に変わった味の食べ物だと思う。普通「変わった味」という表現はまずいものに対して使われるが、芋ようかんの場合は「変わった味」である上にとてもうまいのがすごいところだ。



お芋ラテが甘くておいしい



飲み物に「お芋ラテ」のホットを頼んでみた。飲んでみると、まさしく芋ようかんを液体で再現した味でびっくりする。



中西さんは「お芋ラテ」のアイスを注文。店員さんによると「アイスの方が甘みが抑えられて感じるので、芋ようかんと一緒に食べるならこちらの方がお勧め」なんだそう。そっちにすればよかったか。

なお金田さんはこの時に抹茶を頼んでいた。芋ようかんに合わせるならこれがベストだと思う。ただし、面白みには欠ける選択と言えよう。



芋ようかんソフトパフェに興味津々

芋ようかんを完全に理解していただいた後に、今回の大本命「芋ようかんソフトパフェ」に行ってみよう。特別に作っているところを見せてもらえた。



かぶりつきになるおじさん2人。取材とはいえ、なぜこんなにパフェを作っているところに興味津々なのか? 店員さんもこんな衆人環視の状況でパフェを作ったことはないんじゃないか。



思わずパフェを見ている2人ばかりを撮影してしまった。わかりやすい取材の失敗例である。でもあまり見ないタイプの画像なのでみんなにも見てもらいたい。



これが芋ようかんソフトパフェだ



こちらが完成した芋ようかんソフトパフェだ。



サイズは小さめだが、このパフェの密度の高さを僕たちは知っている。材料に惜しみなく芋ようかんがガッツリ使われているのだ。 スプーンを持つ手に緊張が走る。



中西「おお、これはすごい」

金田「濃いんですねえ……」

中西「いや、でも、うまい……」

金田「意外と食べていて飽きない」

みな感想は「濃い」「うまい」であった。このパフェ、材料のほとんどに芋ようかんが使われている。食べ進むにつれて芋ようかんのいろんな角度からの味がわかるようになってくるのだ。

ぼくも一口目食べた時は正直「芋の味が濃すぎてこれ全部食べられるのかな?」って思ったが、意外とスイスイ進む。おいしいのだ。



無駄に上がるテンション

パフェも終盤に差し掛かったころに、中西さんが「せっかくだから記念にみんなで自撮りしましょうよ」とスマホを取り出した。



中西さんふだんこんなことする人じゃないだろう(あまりよく知らないが、間違いなくそうだ)。

芋パフェでテンションがすっかり上がってしまっている。「おっさんの自撮りなんて止めましょうよ」とは誰もいわなかった。



この世の誰も得しないタイプの自撮りである。しかし「甘味で人はこれほどまでにたかぶる」ということの例として後世に語り継ぎいでいきたい。



自分たちの自撮りを見てキャッキャしているおじさん3人。繰り返すが、この3人はほぼ初対面である。恐るべし、甘味の魔力。ぼくもなんだかとても楽しかった。



舟和の商品を一通り購入可能



カフェだけではなく店頭で舟和のお菓子を買うことができる。あれだけ芋ようかんを食べた後なのだが、中西さんは真剣に物色している。



中西さんはずいぶん悩んだ後に芋ようかんを一箱買っていた。さっきまでこの人は、人生で舟和の芋ようかんを食べたことのなかった人間なのだ。感慨深い。



「おれたち、小学校のころからの悪ガキ仲間!」
……今、ウソを書いてしまったが、だれも疑う人はいないと思う。



最後に取材後における相関図を載せておこう。もうみんな友達ということにしておいた。それでいいだろう。

なお店員さんによると「男性も一人で結構いらっしゃいますね」とのこと。みんなも全然仲良くもなんともない人と、舟和の芋ようかんソフトパフェ、食べに行ってみようぜ。


ふなわかふぇ 高田馬場店
住所:東京都新宿区高田馬場3-3-9
最寄駅:高田馬場



企画・執筆:斎藤充博

1982年生まれの指圧師(国家資格)。「下北沢ふしぎ指圧」を運営しています。インターネットで記事を書くことをどうしてもやめられない。



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