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ソロ活の達人に聞く!

2014/12/11

荻窪の老舗喫茶店『邪宗門』をひとりで訪れる味わい深さ

楽しい文化に富む中央線沿線。その中でも荻窪で途中下車する理由は、この喫茶店、「荻窪 邪宗門」があるから。店は店主の人柄そのもの。どんな空間もそこにいる人間達が時間をかけて作り上げるものなのだと、再確認できる場所。

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純喫茶の達人

塩沢 槙さん

1975年生まれ東京都出身。作家・写真家。単行本の執筆を中心に活動中。最新著作は『明日へのしょうゆ すべてをなくした蔵元の、奇跡の再生物語』(マガジンハウス刊)

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第三回 60年という年月が詰まった空間で、心が洗われる時間を過ごす

第三回 60年という年月が詰まった空間で、心が洗われる時間を過ごす

大好きな喫茶店についてあらためて考えたとき、特にひとりで行く場所として思い浮かべるのは、店にいる人の人柄がよい店であることに気づく。
今回は、中央線沿線の喫茶店として必ず名の挙がる、いや、日本の喫茶店文化を語るときには必ず名の挙がると言ったほうが適切だろう老舗、荻窪の「邪宗門」を訪れる。
私の大好きな人がいる店のひとつだ。

「ソロ活」として、純喫茶にひとりで訪れることの良さを挙げるとしたら、そのひとつはその店の歴史とじっくり向き合えることではないだろうか。そう思いながら歴史のつまった「荻窪邪宗門」の戸を叩いた。

▲荻窪駅すぐのところ、古い商店街に店はあります。営業時間は15:00~22:00、不定休です!

▲こちらが目印

「荻窪邪宗門」は今年8月に創業から59年が経ち、60年目に突入。店主は、風呂田和枝さん。よく笑い、やさしくて、とても素敵な女性である。
この店は、2008年に店主を失って閉店した「国立邪宗門」の暖簾分けとしてオープンした喫茶店だ。店名は、北原白秋の詩から。同名の喫茶店は他にもいくつかある。店主の方たちは趣味のマジックを通して繋がり、友情を築いてきたという関係だという。

まずは、この趣のある店の物語を紹介したい。そこには昭和という時代に生きた人たちの姿が見えるからだ。

「荻窪邪宗門」の物語は、和枝さんと亡きご主人・風呂田政利さんが、1955年(昭和30)に北九州から上京するところから始まる。

▲私が最初に取材したときは“おかげ様で52年”でした

「主人は昭和25年に結核にかかり、療養所に5年間入院していました。のめりこむととことん極める性格で、模型飛行機や、短歌、写真などが大好き。病院の個室に暗室を作ってしまうほどでした。お医者さんや看護師さんのフィルムまで引き受けて現像したり、焼いたりしていたんですよ。

退院した後、ふたりで一度は東京へ行ってみようという話になって、上京しました。そして『貸家』の札がぶら下がっていたこの場所で、住居兼DPEの店を始めたんです。主人は日本短歌社というところの専属カメラマンになって、撮影も担当しながら店をやっていました。

時代が変わり現像機が登場して、カラーフィルムができたことでも仕事が減り、ふたりでどうしようかと話していたんです。そんなとき、同郷だった『国立邪宗門』の名和さん(故人)に、喫茶店をやることを勧められたのが始まりです」

▲店にはマジシャンをモチーフにした置物があります

病み上がりで、医者からはいつまで生きられるかわからないと言われていたという政利さん。名和さんは、和枝さんに「喫茶店ならもしものことがあっても、女手ひとつでもできるから」と言ったという。

名和さんがマジックを嗜んでいたことから、政利さん・和枝さんもマジックに興味を持ち、政利さんは喫茶店を営むかたわら、亡くなるまでマジックに没頭する。オリジナルのマジックを考え、一から道具を作り、練習を繰り返し、その自分の作ったマジックを年に一冊の本にまとめるということを長年続けた。

政利さんは結核を患ったために肺活量が普通の人の1/3くらいになっていた。そんな体ながら2003年に他界するまで、77歳まで生きた。見せてもらった政利さん写真はどれも笑顔。マジックをやっている姿はとても幸せそうだ。
ご主人亡き後は、和枝さんがひとりで店を営業している。コーヒーの注文が入ると豆を挽き、丁寧に淹れる。

▲▼2階の様子

▲本日のサービス<ストレートコーヒー>570円を注文。この日は”インドモンスーン”でした。そのときによって豆の種類が変わって今回はどんなコーヒーかと楽しみ、オススメです。

▲この壁も、店の歴史の長さを表しています

60年という時間が詰まった濃密な空間。
のんびりと時間も流れる。急ぐ人には向かない。
私はここへは必ずひとりで来る。とにかく居心地がいい。
何が居心地がいいのか、2階の席に座って見渡してみてもはっきりとはわからない。ただ、空間にはそこにいる人間の人柄がにじみ出るのだと、ここへ来ると思う。

和枝さんはこう言う。
「私たちは、『こういうコーヒーを淹れるために生き甲斐でやっている』とかそんなことを考えてやってきたのではないの。生きていくため、生活のために始めて、気がついたら普通に60年が経っていたの。本当にいいお客さんに恵まれてね。

コーヒーを点ててお客さんが来てくださるという、それだけが楽しくて。お店をやっていることが好きなんです。60年経ってもお客さんがいらし続けてくれるお店を私たちが作ったのではなくて、お客さんが作ってくださったんです。
私はとにかく世の中の人と仲良くなりたいの。お客さんに限らずね」

▲店主の風呂田和枝さん

和枝さんと話していると、この人の笑顔は少女の頃からまったく変わらないのではないかなと思う。私もこんなふうに変わらずに無邪気に笑える、素敵な年の取り方をしたい。そんな人生の道しるべのような存在なのである。 帰り際、心が洗われたような感じがして、いつも少し泣きそうな気持ちになるのだ。

「荻窪邪宗門」を楽しむための3か条

その1
60年のときが詰まった空間そのものを楽しもう
その2
急いでいる人には向かない店です。時間のあるときにゆっくりと過ごしてください
その3
ひとりだからこそ、店主と話せることも。その人柄に触れて、自分がどんなふうに歳を重ねていきたいかを考えよう

この場所の詳細

coffee 荻窪 邪宗門

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電話

03-3398-6206
※お問い合わせの際はレッツエンジョイ東京を見たとお伝えになるとスムーズです

住所

東京都杉並区上荻1-6-11

最寄り駅

荻窪

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coffee 荻窪 邪宗門

電話番号

03-3398-6206
※お問い合わせの際はレッツエンジョイ東京を見たとお伝えになるとスムーズです

住所

東京都杉並区上荻1-6-11

営業時間

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最寄り駅

荻窪

この記事を書いた人

塩沢 槙さん

1975年生まれ東京都出身。作家・写真家。単行本の執筆を中心に活動中。最新著作は『明日へのしょうゆ すべてをなくした蔵元の、奇跡の再生物語』(マガジンハウス刊)