新宿二丁目の路地裏。店内入って左側は壁一面本棚、なかなか主張の強いタイトルが並ぶ。外の看板と同じ、赤いテーブルがアクセントになった店内の、カルチャー色濃いめの雰囲気に押されそうになったそのとき、陰気な人見知りの目には眩しい、黄金(ところどころ茶色)の暖かそうなもふもふが視野に入る。今回はなんといっても、4匹もネコがいるのだ!入店時に私を含め人間が6人。人:ネコ=3:2の割合だ。
溶け合うネコ、どこからどこまでが、誰なのかわからないからみ(絡み)餅状態。3色の首輪で、なんとか個体を判別。ミシファス♀(赤)、クチマリー♀(黄)、サピラ♀(緑)。「あとで、もう1匹、おやつを出したら出てきますよ」とカウンターにいた女性が教えてくれる。やってきたのが、キロワティオ♂(青)。姿の判別もできないし、名前も難解で、笑えるほどまったく覚えられない!
この難解な名前、実はスペイン語。4匹を飼い始めた頃、藤本さんは、スペイン出身の作家ラモン・チャオの著書出版に関わっていた。その時に敬愛するラモン自らがゴッドファーザー(名付け親)となってくれたという。
「これは、4匹全員元気に育てないとというプレッシャーがのしかかってきました」と藤本さん。
店の近くの駐車場で生まれ、保健所送りにされそうになっていた4匹の仔ネコと出会い、育てることに。全身茶トラのメスは、遺伝子の関係でかなり珍しいとされているのに4匹中3匹がメスだった。奇跡的な出会いの喜びと共に、経験する苦労。初めて飼うネコを4匹も同時に世話するのは、本当に大変だったという。
「仔ネコはおしっこがちゃんと出ないと命に関わると聞いて、毎日必死に数えていました。4匹、見分けがつかない上に名前も覚えられないから、大変で」と、とにかくおしっこのチェックで必死になり、当時は育児ノイローゼ気味だったとか。
最近ウチのネコたちも結石で、おしっこ観察の日々なので共感した。ネコの体調は見た目で判断がしづらく、言葉で通じ合えない相手とのコミュニケーションは不安も大きいからこそより一層愛が深まる。「今はもう、顔でなんとなく区別つきますけど、赤ちゃんのときは、尻尾で見分けていました」。
体だけでなく顔もそっくりすぎるほど似ている4匹でも、性格はそれぞれ違う。「クチ」と呼ばれる黄色の首輪のクチマリーは活発な上、少食でスリムな体型。
一方緑のサピラは、「いつも食べてるか寝てるかウンコしてるか」と言われ、顔と手足は細いのに胴体が丸くてとても柔らかい。
赤い首輪の「ミシ」ことミシファス(♀)はマスターによく懐いていて、戦隊ヒーローものの赤=主人公みたいな、一番ノーマルな性格のように見えた。唯一のオスで青い首輪のキロは「やっぱり男の子は甘えん坊」だそうだ。
大きな愛情を注いでもらっているのに、知らん顔して寝ているネコたち。それでいいんだ、みんな揃って健康で、長生きしてくれれば。まだまだ寒さ残る3月、自宅の我がネコの体調も心配しつつ、目の前の暖かい茶トラの塊に手を突っ込みながら少し安心感を覚えた。
石井芳征(ネコ偏愛者/クリエイティブディレクター/Cat’s Whiskers編集長)
カフェ・ラバンデリア(Cafe Lavanderia)
電話:03-3341-4845
住所:東京都新宿区新宿2-12-9 広洋舎ビル 1F
最寄り駅:新宿三丁目駅
ライター紹介
ネコ偏愛者・クリエイティブディレクター。ネコを偏愛する5人で「ネコ親戚」と自称し、ネコ新聞やポップアップストアCat’s ISSUEなどで、ネコへの偏愛を普及する活動を行う。
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※本記事内の情報は2017年03月21日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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