最近、「みんなで食べるとおいしいよ」の意味がわかってきた。共感はしないが、そのメカニズムは理解できた気がするのだ。みんなで食べようが、一人で食べようが、味に変わりはなかろう、と私は思う。けれど、世の中には目の前の人と感想を共有することで完結するタイプの人間と、自分の中だけで完結できるタイプの人間がいるのではなかろうか。つまり、前者タイプの人にとっては、味に変わりないわけではないのだ。むしろ、共有できた喜びによって、彼らの中では味は変わっているのかもしれない。


この断絶こそが、「みんなで食べるとおいしいよ」に繋がるのである。奴らは基本的に好意で言っている。「一人で遊んでいてもつまらないよ」然り、一人で食べたり遊んだりするよりも、みんなで感想を共有したほうがおいしいし楽しい、と本気で思い、よかれと思ってそう言う。


一人で完結できる、ということは、フットワーク軽く何でも楽しめるという点で得だ。“共有”のための誰かを誘う手間がない。

▲よみうりランドのキャラクター「ランドドッグ」。結構シュールな顔をしている

▲よみうりランドのキャラクター「ランドドッグ」。結構シュールな顔をしている

そんなことを、早朝、京王線に揺られながら考えていた。私は今日、一人で遊園地に行く。訪れたのはGW明けの平日。おそらくべらぼうに空いているであろう遊園地を一人で遊び回るのはきっと楽しい。自分のタイミングで、自分の乗りたいものにいくらでも乗れるはず。それに何より、私はジェットコースターや絶叫マシンが大好きだ。大好きなものに乗るから、楽しい。そこに誰かとの共有や共感はいらない。

▲まずは観覧車から(※一人で行っているため、スタッフさんの協力のもと撮影しています)

▲まずは観覧車から(※一人で行っているため、スタッフさんの協力のもと撮影しています)

一人遊園地をする上で、着いて最初に乗るものとして観覧車をオススメしたい。いきなり? と思うだろうか。そう、いきなりだ。日が落ちたムーディな時間帯に乗ると思ったら大間違い。夜景を見るために観覧車に乗るのは、カップルの論理である。こっちは一人。ムーディなど別段求めていない。


観覧車は遊園地の全体像を把握するのに最も優れた乗り物なのだ。ゆっくりとのぼっていく間に、地図を片手に地上の乗り物の位置関係を確認する。どのようなルートで回ろうか、園内がどれくらい広いのか、観覧車が一周する間になんとなく頭に描いておきたい。

絶叫マシンに乗るもやめるも自分次第。「一人遊園地」は精神修行の世界だった_72379

観覧車を降りると、コーヒーカップやメリーゴーランド、子ども用のミニコースターなどに順番に乗って行った。GW明けの平日は空いているはず、という読みが当たり、本当に人がいない。どの乗り物も1秒も待たずに乗れる。

▲コーヒーカップ的な乗り物「スイーツカップ」

▲コーヒーカップ的な乗り物「スイーツカップ」

▲メリーゴーランド的な乗り物「メリーゴーランドドッグ」

▲メリーゴーランド的な乗り物「メリーゴーランドドッグ」

一般的に一人遊園地のハードルは高いとされている。それは大勢のグループ客で混雑する中に一人、という構図になって浮くからだろう。遊園地に限らず、「一人で行くのは恥ずかしい」とよく言うが、これはもう、自分が強くなるか、恥ずかしくない場所を選ぶかしかない。

▲お子さまに大人気のミニコースター「アニマルコースター」

▲お子さまに大人気のミニコースター「アニマルコースター」

しかし遊園地の場合、日によって混雑状況に差があるため、「恥ずかしくない場所」になることもあり得るのだ。ガラガラに空いている日ならば、「恥ずかしい」の要因となる「周囲の目」がそもそもないのだから。

▲消防士体験ができる「ちびっこ消防隊 けしっぴー」という乗り物。周りに誰もいないから全然恥ずかしくないぞ

▲消防士体験ができる「ちびっこ消防隊 けしっぴー」という乗り物。周りに誰もいないから全然恥ずかしくないぞ

▲自分でペダルをこがなければならない乗り物も、一人で粛々とこぐ

▲自分でペダルをこがなければならない乗り物も、一人で粛々とこぐ

ちなみに、遊園地の日取りを決める際にポイントとなるのは、祝日周りとイベントシーズンを意識的に避けることだ。祝日周りについては、みんなが祝日とくっつけて休みを取りそうな日を考えるとおのずと答えは出る。GW空けの平日がいいのはそこである。たいていの人は4月末と5月頭に休むことで、GWを長くしようとしたがる。今回はGWから10日ほどたった平日を選んだ。このあたりは、GW周辺で休んだ分そろそろがんばって働かないといけないぞ、となる日なのだ。ほかにも、大学生が休みの7月~9月、2月~3月は避けたい。

▲日清焼きそばU.F.O.をモチーフにした乗り物もある

▲日清焼きそばU.F.O.をモチーフにした乗り物もある

▲日清焼きそばU.F.O.の製造過程が乗り物になっている。乗ると麺の気持ちになれる気がする

▲日清焼きそばU.F.O.の製造過程が乗り物になっている。乗ると麺の気持ちになれる気がする

ところで、最初にも述べたが、私はジェットコースターが大好きだ。絶叫マシンも大好きだ。そう、大好きなのだ。ここまででひとつもそういう乗り物に乗っていないが、絶叫系はとても好きなのである。何度だって乗れるし、怖くない。怖くない、はずなのだが……。


軽めのコースターにいくつか乗っただけでも、思っていた以上に怖いのだ。一人で乗っている分、意識が“乗り物だけ”に集中してしまっている感覚がある。おそらく、人と一緒に乗るときは、隣に座っている友人にも意識が分散している、ということだろう。そのため、一人で乗ると、誰かと一緒に乗ったときの何倍も怖く感じる。子ども向けの乗り物でも充分満足できるという点で、コスパがいいと言えばいいかもしれない。


そういうわけで、さっきから絶叫マシンの目の前を通っては、乗ろうとせず、スタスタと通り過ぎている。そうこうしているうちに午前中が終わってしまった。

▲とりあえずご飯食べよう

▲とりあえずご飯食べよう

▲手ぶらで一人バーベキューをできる店に入った

▲手ぶらで一人バーベキューをできる店に入った

自分は絶叫系が得意だと思っていた。一人で行けば何周も乗れると嬉々として来たはずが、どうもそうはならない。一人遊園地は、「あれ乗ろうよー!」、「えー! やだよ怖い!」、「大丈夫だよ乗ろうよー!」のくだりがない。これを自分の心の中ですべて行わなければならないのだ。ハードな絶叫系に乗る上で、誰かの背中を押したり、押されたり、がこんなにも重要だったとは……。もしかしたら、誰かへの「大丈夫だよ乗ろうよー」の言葉は、自分への叱咤でもあり、「乗れるマウンティング」でもあったのではないだろうか。

▲振り子のように揺れたのち、一回転する「ルーピングスターシップ」。午前中ずっと乗ろうとしては勇気が出なくてやめる、を繰り返していた

▲振り子のように揺れたのち、一回転する「ルーピングスターシップ」。午前中ずっと乗ろうとしては勇気が出なくてやめる、を繰り返していた

▲怖すぎ

▲怖すぎ

あの子よりも私のほうが乗れる、あの子は怖がっているけれど私はそこまでではない、言い方は悪いが「自分より下がいる」ことが背中押しになって「絶叫系が得意」と思い込んでいた部分は大いにあるのだろう。弱き者を守るために、人は強くなれる。ポジションが人を作るとはよく言ったものだ。

▲よみうりランドの目玉アトラクション「バンデット」。落ちる瞬間、神妙な顔しすぎ

▲よみうりランドの目玉アトラクション「バンデット」。落ちる瞬間、神妙な顔しすぎ

▲一人で乗ると「わー」と叫ぶ声も不思議と出にくい

▲一人で乗ると「わー」と叫ぶ声も不思議と出にくい

一人でいると、本当に自分が丸裸になる。「好き」と思っていたものが、案外そうでもなかったかもしれないと気づくこともある。外向きの、「これが好きな自分だと思われたい」だけなことは結構多い。


一人遊園地には怖さの共有も共感もない。乗るのを決めるのも、やめるのも自分しかいない。自分に甘くしようと思えば、いくらでも甘くできてしまうのである。そこを乗り越え、自分で自分を叱咤し、絶叫系に乗る。一人遊園地とは、なんという精神修行の世界なのだろう!

▲ちなみによみうりランドにはバンジージャンプ(写真奥)もあるが、結局やる勇気は出ないまま、近くを長いことうろうろしていただけで閉園時間になってしまった

▲ちなみによみうりランドにはバンジージャンプ(写真奥)もあるが、結局やる勇気は出ないまま、近くを長いことうろうろしていただけで閉園時間になってしまった

一人遊園地を楽しむ三か条

その1 まずは観覧車に乗って遊園地の全体像を把握しよう

その2 絶叫系に一人で乗ると、怖さを普段の何倍も感じる

その3 遊園地は精神修行の世界

よみうりランド
  • 所在地

    東京都稲城市 矢野口4015-1

  • 最寄駅

    京王よみうりランド

  • 電話番号

    044-966-1111

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