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ソロ活の達人に聞く!

2016/6/1

一人で円卓を囲んで、一人で北京ダックを食べてきた

一人で食事に行けば、自分の思いのままに食事できる。「一口ちょうだい」と言われることもない。でも、一人では大きなものを食べることはできない。ただ、一つだけ、一人でも食べられそうなものがある。それは「北京ダック」だ。

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  • 上野・浅草

一人遊びの達人

朝井 麻由美さん

ライター・編集者。最新刊『「ぼっち」の歩き方』が発売中。その他、著書に『ひとりっ子の頭ん中』。

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ツイッター(@moyomoyomoyo)
一人で円卓を囲んで、一人で北京ダックを食べてきた

一人で食事に行けば、開幕からフィナーレまで、私が私のためだけに描いたシナリオで食事が進む。「一口ちょうだい」におびやかされることもない。物心ついてから、私はこの「一口ちょうだい」に苦しめられてきた。とりわけ女性同士でご飯を食べる際に顕著なのだが、注文した料理を食べ始めるやいなや、「あ、それ一口ちょうだい」としばしば持ち掛けられるのだ。「私のオムライスも一口あげるから」と。


これは一見、Win-Winに見えるが、実はまったくもって等価交換ではない。私はハンバーグを食べたくて注文したわけで、ハンバーグ1個を100とするなら100全部食べたいのである。オムライスが食べたければ、最初からオムライスを注文する。


一方で、一口交換を持ち掛けた側は、基本的にオムライスが食べたくて注文したけど、ハンバーグもいいな、と思っている。持ち掛けた側にとっては、オムライスとハンバーグの価値は同等。しかし、持ち掛けられた側は、オムライスよりもハンバーグの価値のほうが高いと思っているわけだ。「一口ちょうだい」とは、取引を持ち掛けた側だけが得するシステムなのである。


だがひとつだけ、どうしても一人ではできないことがある。大きなものを食べられないのだ。例えば、豚の丸焼きや、クリスマスのローストチキンなどを前にしたら、無力である。だからといって諦めてしまうにはもったいないくらいのアトラクション性が、こういった料理にはある。


目の前に運ばれてくることそれ自体が尊いのだ。出てきた瞬間の感動を、私も味わいたい。「おおお~~~!」と思わず口からこぼしてみたい。ならば、北京ダックはどうだろう。あれならば、実質、皮しか食べないため、一人でも食べ切れるのではなかろうか。


▲行ってきたのは「過門香 上野バンブーガーデン店」。近未来的な入口

▲席に案内されました

目の前には円卓。大勢でわいわいと中華料理を食べるときに、くるくる回すアレである。


麻婆豆腐が食べたいのに、麻婆のお皿は今、向かい側にある……円卓を回して取ろうとしたら別の人に先に回されてしまった……別の人が取り終わったところを見計らって、と思ったら、おーっとーーーー! ここでまさかの2回目のエラー! ツーエラーです! 今度は左斜め前に座ってる人が円卓を止めてしまった! これは悪い夢、悪い夢です! なかなか円卓を回せない! こんなことがあっていいのか!


……大勢で円卓を囲むと、こんなことになることがしばしばある。昔、ズレた間の悪さについて歌ったヒット曲があったが、本当に私はタイミングが下手なのだ。けれど、今日は私一人。円卓をうまく回せないなんて事態にはなるまい。


▲北京ダックと麻婆豆腐と点心を注文した

注文した料理のうち、点心と麻婆豆腐が先に運ばれてきた。本来は1品ずつなのだが、円卓を一人で回してみたかったため、一気に2品出してもらったのだ。もぐもぐ。くるくる。もぐもぐ。くるくる。


いまだかつて、円卓をこんなにストレスなく回せたことがあるだろうか。円卓を回すときは、別の料理を食べたいときだけ。円卓を回す回数も、大勢で食べるときと比べて圧倒的に少ない。いつもせわしなく回される円卓も、たまの休みを満喫できたことだと思う。


▲もぐもぐ

▲くるくる

さて、いよいよ北京ダックがやってきた。やはり、運ばれてきた瞬間が演出する胸の高鳴りは、麻婆豆腐や点心のときとはわけが違う。なんなら、運ばれる動作だけでいいから、あと2、3回はやってほしいくらいである。運ばれるだけでこんなに楽しくなる料理がほかにあるだろうか!


▲でかい

▲顔よりでかい

これの皮だけを食べるのだ。地域によっては肉付きのまま食べることもあるそうだが、この店は皮だけを食べる調理法を採用している。1羽から取れる皮は16枚。16枚くらい、たいらげることはわけないだろう。何しろ、私は鶏の皮が好きなのだ。


肉の中では、牛や豚と比べて鶏肉はさほど好きではないが、皮があるから食べてやっているようなところすらある。学校の給食でも、自分の分のシチューを取り分ける際に、皮のついている鶏肉をより分けて取っていたこともあるほどだ。


そうこうしているうちに、いったん下げられた北京ダックが、調理されて再登場した。自分で巻いて食べることのできる大皿と、すでに巻かれている大皿がひとつずつ。自分で巻くのを楽しむアトラクション性を大事にしつつ、全部を巻いていては手間がかかるゆえの粋なはからいだろうか。


▲自分で巻いて食べる

▲半分はすでに巻かれて出てくる

もぐもぐ。ぱりぱり。ぱりぱりとした皮を噛みしめた瞬間にじゅわっと脂分とうま味が染み出てくる。黙々と食べていると、注文した覚えのない肉料理が運ばれてきた。なんと、1羽注文すると、残りの肉を辛味あえにしてくれるのだという。


▲半羽以上を注文すると、肉も調理してくれるシステムだったらしい

これは想定外である。そもそも、北京ダックを5枚ほど食べた時点で、すでにお腹がいっぱいになりつつあった。北京ダックの皮自体にはボリューム感はないのだが、北京ダックを巻くための小麦でできた皮がなかなか腹持ちのよい代物なのだ。


だからといって、小麦の皮で巻かずに北京ダックの皮だけを食べると、こってりしすぎている。結局、全部を食べ切ることはできず、残ったものをお土産にしてもらって、店を後にした。


食べ切れなかった北京ダックを前にして生まれて初めて、「一口ちょうだい」と言われたい気持ちが私の中に生まれた。一口でも二口でも誰かほかの人に食べてもらいたかった。


普段、「一口ちょうだい」と持ち掛けてくる人は、もしかしたら、味を変えて気分転換しないと食べ切れない、とでも思っているのかもしれない。「一口ちょうだい」にちょっぴり優しくなれた気がした一日であった。



過門香 上野バンブーガーデン店
営業時間
月~日 ランチ 11:00~15:30
月~土・祝前日 ディナー 15:30~23:30(L.O.22:30)
日 15:30~22:00(L.O.21:00)
最寄り 上野駅
電話 03-5807-2288



一人北京ダックを楽しむ3カ条

その1
北京ダックが運ばれてくるアトラクション性を楽しもう
その2
運ばれてきた瞬間の胸の高鳴りをかみしめよう
その3
意外と食べ切れないので、残りをお土産にしてくれる店を選ぼう

お知らせ

ソロ活の当連載が、書籍化しました!

「一人プラネタリウム」から「一人豆まき」までの連載記事を大幅に加筆修正し、「一人スイカ割り」、「一人流しそうめん」、「一人ラブホテル」などの書き下ろしも収録しています。

この記事を書いた人

朝井 麻由美さん

ライター・編集者。最新刊『「ぼっち」の歩き方』が発売中。その他、著書に『ひとりっ子の頭ん中』。

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