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ソロ活の達人に聞く!

2016/3/25

一人しかいないバーでバーテンと客の一人二役をやってみた

大人になったら、当たり前のように「バー恋愛」をするものだと思っていた。大人の社交場であるバー。そこで年齢もバックグラウンドも何もかもが違うどこかの誰かと、杯を酌み交わし、距離を縮める、それが大人だと思っていた。ところがどうだろう。社会に出てずいぶん経つのに、バー恋愛をする兆しはかけらもない。当然である。バーに行かないからだ。

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一人遊びの達人

朝井 麻由美さん

ライター・編集者。最新刊『ソロ活女子のススメ』が発売中。その他、著書に『「ぼっち」の歩き方』『ひとりっ子の頭ん中』。

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一人しかいないバーでバーテンと客の一人二役をやってみた

一般的に「一人バー」はさほど特殊なものではない。いわゆる「おひとり様」向けのスポットが特集されるとき、バーが選択肢のひとつに挙げられることも少なくない。それこそ、「バー恋愛」は一人バーから始まり、「あちらのお客様からです」とありがちな出会いを経て、成就に至るのだ。しかし、それが私にはどうしてもできない。一人で行動するのをこんなにも愛しているのに、いくつになってもバーにだけは行けないままである。


そこで私は、正真正銘の「一人バー」に踏み切ることにした。一人で仕事帰りにバーに出向くそれではない。バーテンもいない、客もいない、私だけがバーに存在する「一人バー」である。今回は、知人が働く下北沢のバー「ギジドー」を少しだけ貸し切らせてもらうことにした。


私は、なぜバーに一人で行けないのだろう。バーテンとうまく話せないからなのか、見ず知らずの人と交流したくないからなのか、だとしたらそう思わせる原因はなんなのか。たった一人だけのバー空間で、静かに考えてみたい。


バー「ギジドー」は、下北沢の小劇場「ザ・スズナリ」の建物の1階部分にあった。初めてだとまず気づかないような立地だ。バーというものはつくづくそういうところがある。たいていが狭くて暗い場所にあり、店の中も外からはよく見えず、入っていいのか悪いのかもよく分からない。バーには「入ってもらおう」という気概が感じられない。もっと全身で「入ってほしい感じ」を表現してくれたらいいのに。


▲誰もいない


バーテンのいないカウンターに一人、立ってみる。近い。こうして立ってみると分かるが、お客さんの座る席と、バーテンの立つ場所の距離が、近すぎる。お客さんの席同士ももちろん近い。もしも一人でお店に行くと、右に他人、左に他人、目の前にも他人(バーテン)、ほぼ全方位を他人に囲まれることになる。バーを楽しめる最低条件として、“パーソナルスペース”(他人に近付かれると不快に感じる空間)が狭いことが挙げられるかもしれない。


▲とりあえずビール


さて、ともあれお酒を作ってみようと思う。バーテンの私が、客の私に出すお酒を。事前に、この店で働く知人に、バーテンがお酒を作るときの振る舞いを教わった。銀色の聖杯のような形をしたお酒を入れる道具(メジャーカップ)の使い方ひとつをとっても、何かと決まりがあるらしい。例えば、ジントニックを作るときには、左手の人差し指と中指でメジャーカップを挟むようにして持ち、瓶からジンを入れる。そして、メジャーカップを持った左手の手首を、左側にくるりと返して、左側に置いたグラスにジンを注ぐ。


▲メジャーカップにジンを注ぐ


▲手首をくるっと返す


お酒を混ぜるにも作法があるらしい。ジントニックのような炭酸で割るものは、混ぜるための長いスプーン状のもの(マドラー)を、氷の下にそっと入れて、下から氷を一回持ち上げる。ちょっとの振動で炭酸がすぐに抜けてしまうため、あまり大きく動かして混ぜてはいけないのだという。カシスオレンジなど炭酸ではないお酒は、マドラーを右手の人差し指と中指で挟んで、手首だけを動かすようにして回す。手をぐるぐると動かすと美しくないため、わざわざ手首だけを使うのだそうだ。


▲炭酸のお酒は下からそっと持ち上げるだけ


▲炭酸ではないお酒は手首だけを美しく動かす


プロのバーテンはこれを顔色ひとつ変えず、カッコよくやって見せるわけだが、これがまた緊張感を煽り、バーの敷居を上げているようにも思う。カッコいいバーテンの作るカッコいいお酒を飲むにふさわしい、カッコいい客であれ。バーには、そういう無言の圧力がある。


▲シェイカーも振ってみた


▲私「あちらのお客様(私)からです」



誰も話しかけてこないことが約束されている一人だけの空間で、お酒を飲みながら思った。バーは前述の通り、バーテンともほかの客とも物理的な距離が近い空間なわけだが、それでいて精神的な“距離感”を適切に測るセンスも求められるのではないだろうか。その日、その場で会ったばかりの人に対して、適度にこちらの情報を開示し、適度に踏み込む。そのちょうどいい距離感というのは、人によって大きく異なる。好きなお酒の話題程度でとどめたい人もいれば、身の上話を聞いてほしい人もいる。私は、この他人との距離感を測ることが絶望的に苦手である。そもそもこれが苦手だから、一人で行動するのを好むのだ。



つまり、たとえバーに行くまでは“一人”でも、ひとたびバーの門戸をくぐると、たちまち一人ではなくなる。それがバーというものなのだ。バーテンもほかの客もいない、正真正銘一人だけのバーは、バーで感じるストレスがすべて排除された空間だった。だったら家で一人でお酒を作って飲めばいいのでは……、と頭によぎったけど、あまり考えないことにする。



一人バーを楽しむ3カ条

その1
バーテンも客も自分だけならば緊張しない
その2
バーテンも客も自分だけならば誰も話しかけてこない
その3
家で一人でお酒を作って飲めばいいという説もある

お知らせ

ソロ活の当連載が、書籍化しました!

「一人プラネタリウム」から「一人豆まき」までの連載記事を大幅に加筆修正し、「一人スイカ割り」、「一人流しそうめん」、「一人ラブホテル」などの書き下ろしも収録しています。

この記事を書いた人

朝井 麻由美さん

ライター・編集者。最新刊『ソロ活女子のススメ』が発売中。その他、著書に『「ぼっち」の歩き方』『ひとりっ子の頭ん中』。

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