たとえば突然ボートに乗りたくなったとしよう。そんなとき、カップルで行くとなると、大変なことである。ボートと言えば、カップルが別れるジンクスで有名。試しに「ボート 別れる」で検索してみると、「嵐山ボート別れる」、「井の頭ボート別れる」、「東山ボート別れる」、「不忍池ボート別れる」などの検索候補がずらり。実に全国各地のボートでお別れが発生していることが分かる。つまり、カップルならばどんなにボートに乗りたくても、別れる恐怖に怯えながら乗らなければならないのだ。あー、かわいそう! その点、ソロ活ならば何の問題もない。そもそも最初から一人ならば、別れる相手がいないのだから!
……いささか強引に論を推し進めてしまったが、今回挑戦するのは一人ボート。単なる都市伝説とはいえ、こんなにも「別れる別れる」とまことしやかに言われている以上、ボートはやはりカップル向きのレジャーではないのだ。カップルで乗るからいけないのだ。みんなボートくらい、一人で乗りゃーいいのだ。乱暴な方向に気持ちが盛り上がりつつ、都内のボート場に向かった。
ライフジャケットを装着し、こぎ方を教わってさっそくボートへ。ちなみに、スタート地点は、どうぞ見物して下さいと言わんばかりの橋の真下。あっ、はい、そういうプレイね。
乗ってひと漕ぎ、ふた漕ぎ。おや……なんだか、思った以上にスイスイ進む。ちっとも前に進まず悲しみに明け暮れる展開を予想していたのに、拍子抜け。この感覚は、なんだろう。漕げば漕ぐほど目に見えた成果が出るゆえか、次第に高ぶる全能感。漕げば漕ぐほど満たされてゆく水に対する支配欲。ありったけの夢を! かき集めたい! 探し物を! 探しにゆきたい!ボート王に!おれはなりたい!左に首都高、後ろにトラック、目を閉じれば大海原。漕ぎ始めてものの5分で私はすっかり海賊王になったのだった。
ほらごらん。後ろに写り込む標識やサラリーマンさえ気にしなければ、ここは大海。
漕ぎ方に関しても、左右の手の力の入れ具合で進路の角度が変わってくるため、わずかな角度のズレすらも許すまじ、とだんだん職人めいてくる。
こんな顔してオールの角度を調整し、
こんな顔してオールを動かし、
うまくいくとこんな満足気な顔に(当社比)。
さて、ひとしきり気が大きくなりながら、ボート場全体を漕ぎ尽くしたわけだが、今回のボートは予想していた以上にソロ向きだという実感があったのだった。写真だとなかなか伝わりづらいかもしれないが、上に載せた私の満足気な顔(当社比)を見ていただきたい。楽しそうでしょう? 楽しそう、と伝わったことにして話を進めようと思う。
“ソロ活”と称して一人であれこれ出掛けてきた結果、私の思うソロ向き、複数向き、の特徴は、以下のようになるのではないかと考えている。
【複数向き】
・雰囲気を分かち合うもの(テーマパーク、イルミネーションなど)
【ソロでも複数でも楽しめる】
・個人の好みが関わってくるもの(焼肉など。※複数なら多種類食べられるが、一人なら好きなものだけ食べられる)
・コンテンツ自体が充実しているもの(遊園地、プラネタリウムなど)
【ソロ向き】
・一人だけが熱中する事態が起こり得るもの(ボートなど)
・人と時間的なペースを合わせなければならないもの(買い物など)
・人とテンション的なペースを合わせなければならないもの(ボウリングなど)
・人との競争が発生するもの(果物狩り、ボウリングなど)
ソロ向きの特徴として挙げている、ペースを合わせることや、人と競争することが好きな人は、そもそも一人での行動を好まないことが多いと思われるので、そこはいったん度外視したい。
今回の一人ボートは、「一人だけが熱中する事態が起こり得るもの」に当たる。漕いでみて分かったが、ちょっとした力の加減で角度が変わってしまうオールを、左は彼氏、右は彼女、と一つずつ分担するのは至難の技。もしもうまいこと漕げようものなら、今すぐ結婚どころか、王国建立するね、私なら。だからといって、相手だけが漕いでいたら、私は黙って乗っているだけ、大海原で海賊王になれるのは漕いでいる相手だけ。私は海賊王になれない。そんなの嫌だ。ゆえに、ボートは一人で乗るのが一番なのである。
一人ボートをソロで楽しむ3カ条
その1 ソロでボートを漕げば、別れのジンクスの心配は無用!
その2 ソロでボートを漕げば、気分は大海の王者!
その3 ソロでボートを漕げば、都会でも手軽に大海原の解放感を味わえる!
- 弁慶橋ボート場
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所在地
東京都千代田区 紀尾井町4-26
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最寄駅
赤坂見附
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電話番号
03-3238-0012
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ライター紹介
ライター・コラムニスト。著書「ソロ活女子のススメ」(大和書房)がテレビ東京で連続ドラマ化。2024年4月にはシーズン4が開始する。他著書に「ひとりっ子の頭ん中」、「『ぼっち』の歩き方」。テレビ東京「二軒目どうする?」の準レギュラーとして居酒屋の案内人を務める。
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※本記事内の情報は2015年02月04日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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