行ったことがないなんてもったいない!昭和の空気が漂うディープスポットへ/新宿西口思い出横丁
JR新宿駅の西口からすぐの場所にあるのが「新宿西口思い出横丁」。終戦後にできた「闇市」に端を発する由緒正しき飲み屋街として、今も多くの人が訪れます。
一見小さな路地のようですが、「表通り」「中通り」「線路通り」合わせて80以上ものお店がひしめき合う一大飲食街。今回は、メインである中通りのお店を巡っていきましょう。
頭からしっぽまで楽しむのが東京流!老舗店のウナギ串を独り占め/カブト
まずやってきたのは、創業昭和23年、この横丁の歴史とともに歩んできた老舗店「カブト」。 こちらは、ウナギを蒲焼きやうな重ではなく「串焼き」で提供するスタイルの飲み屋さんです。
席は中央の焼き台を囲む小さなコの字カウンターのみ。いつでも満席の大人気店ですが、14時からの開店直後ならば比較的空いていることもあるそうです。仕事帰りだけでなく、一人で過ごす休日にふらりと立ち寄ってみてもよさそうです。
空席を見つけて無事に入店。見上げると、目の前に広がるのはこの味わい深い店内。
大将の頭上には、長年ウナギのタレの混ざった煙にいぶされ、真っ黒になってしまった電球と、その傘。これぞカブト名物!歴史を感じます・・・。
まずは「キリンビール 大」(670円)を注文。 お通し(無料)に、醤油をちょろりとたらしたキャベツの漬物も。ウナギが焼けるのを待つ間の強い味方です。
串の注文に関しては、ウナギの様々な部位を取り揃えたお店なので、7本がコースで出てくる「一通り」(1,700円)が基本。「カブト」初体験なら、こちらを注文しましょう。気に入った串をあとから単品で追加するのはOKです!
最初は「えり焼」から。大将が「はい、ウナギの頭」と説明しながら出してくれるのでわかりやすいですよ。
ところで今「え? 頭?」と思った方も多いのではないでしょうか?そう、東京スタイルのウナギ串屋では、オーソドックスな身の蒲焼きだけでなく、頭からしっぽまで、余すところなく食べるのが流儀。これがまた、それぞれに食感、味わいが違って、いいお酒のつまみになるんです!
えり焼は、香ばしくカリカリとした食感と、ウナギの本来の旨味が同時に味わえる部位。 開店以来継ぎ足されてきた、甘ったるくなく、キリッとしたタレの味わいも相まって、初めてならば、「ウナギって、こういう美味しさもあったんだ」と驚くこと間違いなし!
続いて「ひれ焼」。その名の通り、背びれや腹びれ、しっぽを串にくるくると巻きつけて焼いたもの。脂の乗った身が、口の中ではらりとほどける絶品です。
ウナギ屋さんでもおなじみの「きも焼」は、ほろ苦さがお酒を誘う、ウナギ串の真骨頂!
たまらず「焼酎」(370円)を追加。
グラスのフチからこぼれるまで注がれるストレートの「キンミヤ焼酎」を少し飲み、そこに卓上の「梅シロップ」をたらり。 ほぼ原液なのにスイスイ飲めちゃう、けっこう危険な一杯。周りを気にせず自分のペースでゆっくり飲みたいお酒好きの方にオススメですよ。
もちろん王道の蒲焼きだって味わえます!
「一口蒲焼」はサクッと軽~い焼き上がり。いわゆるうな重などで味わうふわふわのものとは違い、とことんおつまみ仕様。 とはいえ旨味たっぷりで、「ウナギってやっぱり美味しいなぁ」としみじみしちゃいます。
最後は「れば焼」。こちらは唯一コースの中でしか味わえず、しかも単品の追加注文もできない限定品。
なんたって、ウナギの「肝臓」だけを集めた串で、ウナギ一匹につき、串にたっぷりとささっているひとかけらずつしか取れないという、超希少部位! 食感はぷりぷりなのになめらかで、上品なコク深さを香ばしさが包み込み、未体験の美味しさ!
東京のウナギ串の真髄は、一人飲みでじっくり味わっていただきたいです。
和やかな雰囲気に心もほっこり♪絶品オリジナル料理に舌鼓/つるかめ食堂
続いては、こちらも新宿西口思い出横丁を代表する名店「つるかめ食堂」へ。
こちらも60年以上の歴史を誇るお店。現在は仮設店舗で営業中とのことで、さっぱりときれいな店内は、今日も常連さんで大にぎわいです。
にぎやかな雰囲気の中でお酒を飲めるってだけで、テンションアップ!一人飲みの時は、カウンター席へどうぞ。
壁には色とりどりのメニューが。 食堂というだけあってご飯ものも充実してますし、一見すると想像もつかないような多国籍な料理もちらほら・・・。
先代やお店を支えた店員さんの写真に歴史を感じます。
お通しは、あっさりとしたダシが美味しい正統派の煮物。 毎日頑張る自分へのねぎらいにもなる、ほっとする味です。
まずは「酎ハイ」(400円)から。
同店に来たら名物「ソイのあたま」(400円)は外せません!
たっぷりの大豆とひき肉をカレー味に煮付けたこちら。ご飯にたっぷりとかけた「ソイ丼」(500円)はお店の看板メニューですが、おつまみにするならその「上」、つまり「あたま」がぴったり。 濃厚なカレー風味についついお酒が進んでしまいます。
「バカコンポジャ」(550円)は、牛スジを鶏のササミで巻いてフライにした、つるかめ食堂オリジナル。サクッと揚がった熱々のササミに牛スジのアクセントがおもしろいですね。
ソースをたっぷりかければ最高のおつまみですが、こんな風に・・・
ソイのあたまと合わせてしまうのだってアリ!一人時間に訪れれば、気になるメニュー同士を組み合わせて自分だけの一品を見つけられますね。これはお酒が進みすぎる~。
というわけで、「緑茶ハイ」(400円)を追加して最後まで堪能しちゃいました。
長く通っても飽きない豊富なメニューと、食事にも飲みにも対応する幅広さは、これぞ大衆食堂! 一人酒を堪能しつつ、しっかり夕飯を食べたい夜にもピッタリです。
豊富すぎるメニューに目移り!ボリューム満点の中華を堪能/岐阜屋
最後にご紹介するのは中華料理の「岐阜屋」。こちらもまた、新宿西口思い出横丁を代表する名店です。
中通りと線路通りの両側に入り口がある細長く広い店内は、ちょっと入り組んだ作り。秘密基地のような空間に自分がいるだけでワクワクしてしまいます。
さらに胸躍るのがこちらのメニュー。 「ラーメン(並)」(420円)からと、新宿の一等地でありながら時代が止まってしまったかのようなリーズナブルさと品数の豊富さ。
まずは「ウーロンハイ」(400円)で落ち着いて・・・。 注文に迷ったら、これを頼んでおけば間違いない名物メニュー、それが「木耳と玉子炒め」(570円)!
やってきました!
キクラゲ、玉子、豚肉で作る、中華料理でいうところの「木須肉(ムースーロー)」がベースになっていますが、そこに数種の野菜が加わった同店オリジナル。
どうです、このプリップリのキクラゲ!香ばしい醤油ベースの味付けが、とろみのついた各具材によく絡み、もうたまりません・・・。ボリュームたっぷりなので、食べ応えもバツグンです。
続いては、中華の定番でおつまみにもってこいの「ピータン」(360円)をお願いします。
またしても惜しみないボリューム。しかもシャキシャキとした白髪ネギが、おつまみ力を高めています!
「日本酒」(340円)を冷やでいただき、のんびり、じっくりと一人の時間を味わってみてください。
こうして巡ってみると、どこもリーズナブルで雰囲気良く、そして何より、美味しいものだらけ。 優しく楽しい店員さんたちとのやりとりにも、忘れかけていた人情を感じ、心も体も温まる一人ハシゴ酒が楽しめます。
新宿駅からすぐそばの桃源郷。今夜、寄り道してみては?
※メニュー・内容は、2018年3月9日時点の情報です。
※価格は全て税込みです。
ライター紹介
DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/酒場ライター。 酒カルチャー雑誌『酒場人』の監修をはじめ、さまざまなメディアで酒と酒場に関する記事を執筆する。書籍『酒場っ子』『晩酌百景』『酒の穴』の3冊を販売中。
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※本記事内の情報は2018年03月09日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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