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  4. 第9回:コーヒーの聖地、半蔵門線の清澄白河駅からおしゃれな響きを外してみた【駅名ソムリエール/能町みね子】

能町みね子の駅名ソムリエール

vol.9 比較的新しくできた路線・半蔵門線。流行りのイーストトーキョーにメス


土地の歴史や地名の由来に強い愛とこだわりを持つ能町みね子さんが、独自の視点で新たな駅名を考案する本連載。第9回目は、名前のわりに歴史の浅い路線・半蔵門線。駅数も少なめですが、そんなことでは駅名ソムリエールの手は緩みません!あなたの住むあの駅も、毎日通っている会社の最寄り駅も、本当は違う名前がふさわしいのかもしれません!


新しい路線だからソムリエールしがいがある、と思いきや!?

この連載は、東京メトロ(旧営団地下鉄)の建設された路線順に書いております。もうだいぶ新しくなってきまして、今回の半蔵門線は、渋谷から三越前までしかなかった時代を私が記憶しているくらい新しいです。新しい路線は名前の変え甲斐があるってものよ。

……と思ったら、半蔵門線は別の路線と接続している駅がかなり多く、ほとんどの駅はすでに今までの記事で出てしまっているのでした。これは残念……。しかも駅数も少ない。原稿が短くなってしまいそうですよ。




再び登場、南青山(表参道)、北青山(青山一丁目)

まず渋谷から始まって、表参道→「南青山」、青山一丁目→「北青山」、「永田町」(そのまま)。ここまでは銀座線有楽町線で既出です。「永田町」の乗換は少し遠いけど、駅名をわざわざ変えるほどではないかなぁ。

半蔵門も、路線を代表する駅名だし、江戸城の半蔵門から名づけるというのは私の好きなセンスなのでそのままです。「九段下」と「大手町」は既出、その間の「神保町」もずっと昔からの地名なので文句なし。ああ、あっという間に半分以上来てしまった。




江戸の洒落っ気をよみがえらせる駅名が誕生

しかし、ここからが難産でした。

銀座線の「三越前」はそのままにしたけれど、半蔵門線の「三越前」は銀座線の「三越前」からかなり遠い。1回改札を出なきゃ乗り換えられないし、ここは変えたくなります。

ここの地名は現時点では日本橋本石町ですが、明治大正期には本石町はだいぶ離れたところの地名だったので、まずこれはボツ。いまの半蔵門線「三越前」のあたりにはかつて、北鞘町、裏河岸、室町など細かい地名が密集していて、どれを選んだらいいか難しいので地名も保留。迷いながら古地図を見ていると……駅の西側出口すぐの場所にある「一石橋」が気になります。

調べてみると、江戸時代に2人の後藤氏が援助して再建したので「五斗と五斗で一石※」というシャレから命名された説があり、しかも、江戸時代に造られた迷子を知らせる石標が今も残ってたり、関東大震災でも崩れなかった部分が残されていたりと、かなり歴史の厚みを感じさせてくれる橋です。こんなにキャラが立っているのにあまり知られていないようなので、ぜひこれは生かしたい。「いっこくばし」ではなく、どうやら「いちこくばし」と読むようです。

※【編集部注】斗(読み:と)、石(読み:こく)は日本古来の尺貫法。日本酒などで用いる1合(180.39ml)の10倍量が「斗」、そのさらに10倍が「石」になります。つまり後藤(五斗)と後藤(五斗)を足すと一石……江戸時代の親父ギャグ!?




清澄白河のきれいな響きには騙されません

水天宮もいいランドマークなので駅名はそのまま生かし、さて次に腕を振るいたいのは「清澄白河」です。

確かに語呂はいいし美しいんだけど、まず「清澄」と「白河」の境目にあるから両方の名前をくっつける、という妥協が私は嫌いなのだ。で、その清澄も元々は「清住」の字を昭和になってからキレイに変えたものだし(清澄庭園の名前も昭和になってからの命名)、白河という地名も昭和になってからつけられたものだし、清澄白河の名前はちゃきちゃきの江戸っ子みたいな顔をしながら案外浅いのである。さかのぼればこのへんは東大工町、仲大工町、伊勢崎町などという小さな地名がひしめく場所。これもまた考えあぐねていると、またいいランドマークを見つけました。深川区役所。

いまの江東区は「深川区」と「城東区」が合併してできたものですが、深川と呼ばれるこのあたりの中心となるのは現在の清澄白河あたりで、深川区役所は明治初期からここにあったのです。となると、丸ノ内線杉並駅を命名した感じで、ここは「深川」でいいでしょう。いまの「江東区深川○丁目」はあまり根拠のない場所だし、「深川」は深川丼などに名を残す由緒ある地名なのに、今はどの駅にも使ってもらえてなくてかわいそうですもん。




「なんとなく」由来を駅名ソムリエールは許しません!

さあ後半に入って話が長くなってきましたが、「住吉」の件もいろいろ言いたい。

住吉の地名の歴史も浅く、昭和になってから。しかも、由来もどうやら「なんとなく縁起がいい」くらいのもののようで、これは変えるしかないです。

かつてここにあった都電の停留所は「猿江裏町」、昭和初期の地名は「猿江裏町」か「本村町」。このへんから決めようかと思ったら、もっとさかのぼると明治初期には単なる田んぼで、毛利新田とか言われていたみたい。どうも地名では決め手に欠きます。こんなときはランドマークを探しますが、ここは簡単でした。すぐそばに開園が昭和7年という、歴史のある「猿江恩賜公園」がある。ここで行こう。

……昭和初期からの地名は「新しい」と見なすけど、昭和初期からのランドマークは「古い」と見なす。矛盾してますね。でもいいの。感覚だよ、感覚。

と、東京東部の3駅でかなり言いたいことがありまして、駅の少ない半蔵門線でもずいぶん書けました。ラスト2つ、「錦糸町」と「押上」はこのままでいいと思いまーす。2つとも歴史ある地名だから、別に投げやりってわけじゃないですよ!



半蔵門線


能町みね子さん

文筆業兼イラストレーター。
「オカマだけどOLやってます。」でデビューし、近刊に「『能町みね子のときめきデートスポット』、略して 能スポ」(講談社文庫)「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。「久保みねヒャダ こじらせナイト」にも出演中。



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