
2016/12/24
クリスマスはリア充ならぬ“リア住”!?モヤモヤしすぎて疲れたら、坊主バーのリアル住職に相談だ!
12月になると街中がイルミネーションで彩られる。クリスマスムード一色だ。しかし、このクリスマスムードになんだかムズムズイライラしてしまう種類の人間もいることを忘れないでほしい。……いや。ぼくのことなんだけど。クリスマスから逃れるために今回向かったのは、お坊さんが接客してくれる「坊主バー」である。
坊主バーは東京メトロの四谷三丁目駅から徒歩5分の裏通りにある。看板に書いてあるのは「VOWZ BAR」。なんだか表記がオシャレである。
坊主バーのマスター、藤岡善念さん。浄土真宗本願寺派の現役の僧侶だ。
席についてさっそくを話してみる。
―― 街を見るともうクリスマスムード一色で……。ああいうのをみると無性にイライラしますね……。それでここに来たんですが。
藤岡「確かにそういうお客さんは多いですね。いわゆる『リア充』を嫌って、私共のような『リア住』……リアル住職を求めていらっしゃる方はいます」
いきなりバーカウンターからズッコケそうになった。いきなりカマしてくる。
藤岡「イルミネーションを見て楽しそうにしているカップルも、幸せそうに見えても、一皮むけばそうでもないというのが人間の世界ですから。全然うらやましがることもないと思いますよ。メリークリスマスならぬ、メリー苦しみますってところです。この世は苦しみですから」
お坊さんが言う「メリー苦しみます」最高だな。適度にクリスマスをディスりながら、こちらを癒してくれる……。本当にここに来てよかった。
―― 藤岡さん自身はさんはクリスマスについてどう思いますか?世間ははしゃぎすぎだと思いませんか?
藤岡「私はクリスマスとサンタクロースへのあこがれがすごく強いんですよ。母が尼さんだったので、小さいころ家ではクリスマスが禁止だったんです。だから本音を言うと、ちょっとクリスマスをやりたい気持ちすらあるんです」
――お坊さんがクリスマスやりたいんですね……。
藤岡「実は5年くらい前からお坊さん同士で『坊主バンド』っていうのをやっているんですが、そこであえてクリスマスをこっち側に引き寄せています」
――どういうことですか?
藤岡「『クリスマス法要ライブ』と言いいまして、クリスマスをお祝いしているんです」
――そこまで進んでいるとは……。というか、坊主バンドってなんですか?
藤岡「コミックバンドでして、音楽のジャンルとしては何でもありです。ロックだったり、民謡だったり。そこに仏教のネタを入れてゆくという……」
▲坊主バンドホームページより。熱唱だ
――すごい……。
藤岡「ちなみに牧師さんがやっている『牧師ROCKS』ってのもいまして。対バンしたりするんですよ」
――宗教違うのに一緒にやったりするんですね。揉めたりしそうですが。
藤岡「ステージ上のMCでわざとディスりあったりしてはいますね」
――なんだ、仲良いのか……。
意外とバーとして使える坊主バー
すっかり藤岡さんの話に引き込まれてしまったが、ここで坊主バーについて紹介してみたい。
カウンターに積まれているお経みたいな物。「これきっとメニューなんだろうなあ」って思っていたんだけど……
やっぱりメニューだった。仏教に関連したネーミングのお酒がそろっている。日本酒は「般若湯」、焼酎は「空海の道」など。
カクテルメニューも仏教がらみだ。瀬戸内の塩を使った「寂聴」など、これ考えるの楽しかったんだろうなあと思う。
一番人気のカクテル「極楽浄土」を注文してみた。極楽には四色の蓮の花があり、グラスの中でその色を表現しているという。
これが普通においしいカクテルで、逆にびっくりする。藤岡さんは学生時代バーでアルバイトをしていた経験があり、カクテル作りは得意だそうだ。確かにお寺でお坊さんの仕事だけしておくには惜しい人材である。
おつまみは精進料理だ。手前が「生麩のごま油炒め」。今風のモッチリ食感でとてもおいしい。奥にあるのが「そうめんをお線香風に揚げたもの」だ。パリパリしていて、ついつい酒が進んでしまう。
ゴマ豆腐の黒蜜かけ。甘味も充実している。お坊さん抜きでも普段使いできそうだ。一体何なんだ、坊主バー。
坊主バーへ気軽に悩み相談に来てほしい
――そもそもなんで坊主バーを始めたんでしょうか。
藤岡「布教の一環でやらせてもらっています。今の時代、なかなかお寺に来るっていうのがないんですよね。お寺は気軽に悩み相談したりしてもらう場所でもあるんですが、入りにくくなってしまっているんです」
――なるほど、お寺に悩みを話しに行くって発想ないです……。
藤岡「そこでお酒を介して、どなたでも来れるような場所を作ったんです。私たちの宗派である浄土真宗は戒律がないので、お酒を飲むことも禁じられてはいません」
――やっていて大変なことってありますか?
藤岡「坊主バーはもう17年やっているんですが、大変なことだらけです。まず『坊さんが酒を飲ませるなんて何を考えているんだ』っていう批判がありますね。『坊主がバーで金儲けしているのか』って抗議もあります。でも、お金儲けだったらバー以外にもっと方法があると思うんですよね」
――確かにバーはそんなに儲からなさそうですが……。逆に楽しいことは?
藤岡「生々しい人間の姿が見られるのがいいですよね。嘘ばっかりついたり、お金を踏み倒そうとしたりする人、いるんですよ。お寺ではなかなか見られません。人間のかわいいところですよね」
楽しいことを聞いたのに辛そうだ。藤岡さん、なんか人間ができすぎていて逆に性格悪くなっていないか?
藤岡「そうそう、最初の話に戻るんですが。斎藤さんはきっと心のどこかで『クリスマスを楽しみたい』って気持ちがものすごく強いんじゃないかな」
――う……。すごく痛いところ突きますね。
藤岡「思いっきり楽しんじゃってもいいんじゃないですかね?クリスマス」
――えー。それは嫌だ!
クリスマスから逃げるつもりが、まさかのクリスマス完全肯定だ。ただ、ぼくの方は一周回って、余裕を持って「クリスマスを嫌う」ことができるようになったと思う。ある意味どうでもよくなったというか。
みなさんもイルミネーションやクリスマスイベントに疲れたら、坊主バーに来てみるのもいいかも。ちなみに、12月24日(土)のクリスマスイブは営業していますよ!
坊主バー
住所:東京都新宿区荒木町6 AGビル2F
TEL:03-3353-1032
営業時間:月~土 19:00~翌01:00
定休日:日曜、祝日
最寄り駅:四谷三丁目
※2016年12月24日時点の情報です。情報、内容等は変更になる場合があります。
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