茶トラの看板ネコ、サブちゃん(約6歳、オス)。第一印象は、カラダ大きい!けど、顔が小さい。鼻筋が通ったライオンっぽい横顔と、ピンと立った長い耳が特徴。オシキャットという種の血が混ざっているらしい。お店は、「甘露七福神」。
「お腹が大きいから、子供がいると思われることもあるけど、メタボだからダイエット中なんだよねぇ。」と店主の田中さん。お腹を下にくっつけてイスを2つ使って横たわっている様子を見ると、安心しきっているからか、何とも言えない幸福感で癒される。
サブちゃんがこのお店に現れたのは、寒い冬の日。3歳ぐらいのガリガリの姿で、お店の中を覗いたところを保護されて、その後すぐに入院していた。そんな子が、3年間で、こんなにまるまる、文字通りの幸せ太り。田中さんに出会えて、本当によかったね。
店主の田中さんはこれまでに、15匹以上のネコを飼ったことのある大のネコ好き。近くで保護したネコを、お客さんが引き取ってくれたこともあるという。この周辺は、お寺が多いからか「拾ってもらえますようにと、その近くに捨てて行く人が多いんじゃないか」と田中さん。
野良ネコが産んだ子供も増えていて、お店の周りでも縄張り争いがある。たとえ仏様のお膝元であっても捨てられたネコたちにとっては、生きていくのに厳しい環境に置かれてしまうことに変わりはない。田中さんとサブのような幸運な出会いばかりがあるわけではないのだ。
以前、サブちゃんが「猫旅ロマン」という番組に出演したときの録画を見せていただいた。「この取材のとき、サブちゃんが今までで一番良かったって言われたんですよ〜」と自慢げに話す奥さんがすごく嬉しそう。
散歩をしながら、他のネコたちとふれあいながらご近所付き合いも築いているようで、「外でいじめられているネコがいたら、飛んで行って助けてあげる兄貴分なんです」と田中さんは誇らしげに語る。
よくお店に遊びにくるご近所さんで、クロちゃんという小柄な黒猫は、サブちゃんのことが大好きでいつもついて回っていたり、チビと呼ばれる茶トラは、13歳のオスなのに、サブちゃんのことを兄貴のように頼って慕っていたり。最近は、ハクビシンに追われるクロちゃんを助けに入るなど、サブちゃんは、この界隈を守るまさに親分的な存在なのだ。
番組でも紹介されていたが、サブちゃんは毎朝、田中さんと一緒に自宅から出勤している。日中は、お店にいる時は定位置になっている奥のイスで、のんびりしているときもあれば、散歩に出ていることも多い。サブちゃんに会いたいなら、外回りから帰ってくる夕方の時間帯に来店するのが狙い目だ。
自宅で6匹もネコを飼っている田中さんがお店に連れてくるのはサブだけ。「この子はどんなネコとも人とも相性が良いんです。子供だけはちょっと苦手かな。でもお店の食べ物に手を出したりしないし、大人しくていい子なんです。」
このお店の看板メニュー「塩あんみつ」を頂いた。この“マクロビオティック”あんみつ、非動物性、有機の食材を使用し、すべて手作りしている。黒砂糖ではなく甜菜糖の蜜が程よい甘みと、塩味の効いたあんこがすっきりとしていて、豆乳のアイスものって、暑い日にもピッタリだ。人もネコも、健康第一だからね、とサブちゃんのお腹をさする田中さん。
これまで巣鴨という地はあまり馴染みがなかったが、なんだかとても親しみやすくて、地元のひと(ネコ)に仲間入りしたような気分だった。
石井芳征(ネコ偏愛者/クリエイティブディレクター/Cat’s Whiskers編集長)
甘露七福神
住所:東京都豊島区巣鴨3-37-5
最寄り駅:巣鴨駅
ライター紹介
ネコ偏愛者・クリエイティブディレクター。ネコを偏愛する5人で「ネコ親戚」と自称し、ネコ新聞やポップアップストアCat’s ISSUEなどで、ネコへの偏愛を普及する活動を行う。
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