
2016/3/9
日本が誇る18禁アート「春画」の鑑賞は箱根の美術館へ!

江戸時代に流行した、性風俗を描いた絵画である「春画」。近年、この「春画」がブームになりつつあるのをご存知ですか? 昨年行われた、国内初となる“春画をメインにした美術展”にはなんと来場者20万人! 現在は京都で同美術展が開催されていますが、「興味はあるけど、ちょっと遠い…」という人もいるのでは? 実は箱根に、春画が見られる美術館があるんです! 少し足を伸ばして、ライター川口がひとり小旅行に出かけてみました!
箱根屈指のリゾート地「小涌園」に到着、いざ美術館へ!
というわけで、新宿から箱根湯本駅まで電車に揺られること約2時間、そこから景色を楽しみつつバスに乗ること約18分で「小涌園」バス停に到着。ここ、小涌園はリゾート地として有名で、温泉のテーマパーク「箱根小涌園ユネッサン」をはじめ、ホテルや宿泊施設が密集している場所なんです。美術館の後は温泉リゾートでゆっくり、というのもおすすめですよ!
今回の目的地・岡田美術館はバス停の目の前。2013年に開館したこちらの美術館には、実業家・岡田和生氏が蒐集した、日本・中国・韓国を中心とする古代から現代までの美術品が展示されています。
こちらが入り口。まだ建てられて2年あまりということもあり、非常にきれいな美術館です。
荷物を預け、中に入ると巨大な壁画のある回廊がお出迎え。
この美術館、1階は中国陶磁器が中心、2階は日本陶磁・ガラスを展示…と各階でジャンルが分かれており、展示品はかなりのボリューム。美術好きならたっぷり楽しめますよ!
癒し系広報さんに、美術館について伺いました。
今回案内してくれた、広報の近森さん! 少しお話を伺ってみましょう。
春画が展示されている美術館ってけっこう珍しいですよね?
「そうかもしれませんね。じつはもともとコレクションの中に春画もあったんですが、開館当初は展示していなかったんです。」
えっ、そうなんですか?! ではなぜ春画の展示をするようになったんですか?
「春画は古い歴史を持ち、有名な作者のものもたくさんあります。海外でも高く評価されているものなのですが、描かれている内容が内容だけに、これまで日本ではあまり展示されてきませんでした。でも、『すばらしい日本文化のひとつ』としてやはり皆さんに見ていただきたい、という岡田名誉館長の思いから、会館の翌年に現在のスタイルで春画の展示を始めました。」
なるほど、春画には“Hな絵”というイメージがありましたが、そう聞くとちょっと見方が変わりますね。ではさっそく春画の展示に向かいましょう!
春画があるのは「絵画」が展示されている3階。大きな屏風絵に圧倒されていると、奥にライトアップされたパネルが見えてきました。ここが「春画」を展示する部屋への入り口です。
他の作品とは別室で展示されているとは、さすが18禁!? 期待に胸を膨らませ、いざ、春画の展示室へ入場します。
室内には2つの展示スペースが用意されています。
展示品は季節によって入れ替えられるそうで、取材時には渓斎英泉の『十二ヶ月風俗画帖』、葛飾北斎の『浪千鳥』という2作品が展示されていました。どちらも12図あるうちの一部が公開されています。
渓斎英泉の『十二ヶ月風俗画帖』は美人画で知られる英泉の若き日の作品。その名の通り、十二ヶ月の季節の中に男女の交わりを描いたもの。金銀を多用したその豪華さと、毛の一本づつに至るまで細かく書き込まれた描写が魅力です。この作品は全12図のうち、季節に合ったものを展示しているとのこと。
「春画史上の最高傑作」と言われる、葛飾北斎の『浪千鳥』は、墨の線だけを版木で刷り、一図ずつ筆で彩色している非常に手の込んだ作品。写真では少しわかりづらいですが背景は銀色に光っており、これは「白雲母刷(しろきらずり)」といって、白い雲母の粉を使用して刷る技法なのだそう。画面いっぱいに躍動する人物の造形のダイナミックさ、力強さに圧倒されます。北斎の作品としても非常に高く評価されながら、描かれた題材が男女の交わりということもあり、日本では残された物が少ないというまさに「幻の作品」なんです!
「岡田美術館ではこの2作品の他に、狩野派『春画絵巻』、鳥文斎栄之『春の戯れ』という作品を収蔵しています。特に『春の戯れ』は掛け軸になっていて、このような形の春画は珍しいですよ。」(近森さん)
掛け軸! それも見てみたいです。どうすれば見られるんですか?
「作品の劣化を防ぐため、展示替えを行いながら一部ずつ展示する形となっています。他の美術展に貸し出していることもありますので、気になる方はお問い合わせくださいね。」(近森さん)
こうやって比較してみると、春画と一言で言っても作者によっても全く表現が異なることがよくわかります。「春画=江戸時代のエロ本」というイメージを持つ人も多いと思いますが、「大人の遊び絵」として広く親しまれていたれっきとした「文化」であり、芸術作品といえるクオリティを持ったものなんです。
「もっと見たい!」と思った人はぜひ岡田美術館へ足を運んでみてください。
広大な庭園を散策すれば、森林浴で気分爽快!
春画の衝撃を醒ますため(?)展示室の外にある庭園をしばし散策してみました。ここ、岡田美術館は約15,000平方メートルにも及ぶ広大な庭園も名物の一つです。
庭園の池では鯉たちも気持ちよさそうに泳いでいます。
入口近くにある飲食施設「開化亭」では、素敵なお庭を眺めながらゆっくりと食事ができますよ。
巨大壁画を眺めながら、足湯と飲み物で疲れた足をリフレッシュ!
また、建物の正面には源泉掛け流しの「足湯カフェ」が! 立ち寄り湯での使用料は500円ですが入館者はなんと無料で利用することができるので、ぜひ浸かって帰りましょう。正面に見える福井江太郎氏による巨大壁画『風・刻(かぜ・とき)』(風神雷神図)をゆっくりと眺めながら、足湯を楽しむことができますよ。300円でタオルも販売していますので手ぶらでOKなのも嬉しいですね。
もちろん「カフェ」ですので、飲み物の注文も可能です。珍しい日本産の紅茶・和紅茶(400円)を注文、足湯で暖まりながらホッと一息つきます。自家製あんこを使用したおしるこ(500円)も美味しそうでした。お湯の温度もちょうどよく、いつまでもボーッとしていられそう…。
というわけで、春画目当てに訪れた岡田美術館でしたが、他にもさまざまな美術品に触れることができ、さらに足湯も楽しめて、かなり充実した1日となりました。
岡田美術館では企画展として、琳派400年記念『箱根で琳派 大公開 〜岡田美術館の RIMPAすべて見せます〜』を4月3日まで開催中。また、4月8日からは岡田美術館初の日本陶磁の特別展示 2 本立て「古九谷×柿右衛門×鍋島」と「古伊万里の世界」を開催予定とのこと。
入館料が2,800円と若干お高いですが、5,000平方メートルという展示面積の広さ、庭園の入園料は別途300円かかりますが、足湯の使用料は込みと考えるとむしろお得かも? もちろん美術観賞の後には周辺のリゾートを巡るも良し。貴重な日本文化に触れ、さらに日ごろの疲れを癒す大人な休日を過ごしたい方にオススメです!
この場所の詳細
岡田美術館
電話番号 |
0460-87-3931 |
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住所 | |
営業時間 | 9:00~17:00(入館は16:30まで) |
定休日 | 年末年始(12月31日・1月1日)、展示替えによる臨時休館あり |
最寄り駅 |
小涌谷 |
ライター:川口有紀
※2016年3月時点の情報です。メニュー、価格等は変更になる場合があります。