
2015/9/23
【午後起き上等!】遅めに起きた休日はソロ寄席で罪悪感を笑い飛ばす!

休みの日に大寝坊して「あーあ、せっかくの休日をむだにしちゃった…」と凹むこと、ありませんか? でも目覚めたのが昼過ぎなら、あきらめるのはまだ早い! 東京にはソロでも夕方から楽しめるところがいっぱいあるのです。今回は、たくさん笑って大寝坊の後ろめたさを帳消しにできる、とっておきのソロ活場所をお教えします!
寝坊した残念感も笑い飛ばす、小粋な大人のソロ活場・鈴本演芸場
やって来たのは上野の鈴本演芸場。ビルの中にある演芸場です。
「ビルの中? 風情がないなあ。これだから最近できた劇場は・・・」と思ったアナタ、大間違い! 実はここ、150年もの歴史を誇る老舗の演芸場で寄席好きで知らない人はいない劇場なんです。
そして、なぜここが寝坊挽回場所なのかというと、夜の部は17時半からだから。たとえ昼過ぎに目が覚めたとしても、十分間に合います。
おまけに寄席といえば、小噺に腹を抱えながらお弁当もつまめてしまうという、下町風情全開な場所。イチャつくのが目的のカップルなぞは足を向けない場所なだけに、心置きなく大笑いできるソロ活場所、というわけ。
小粋な小噺に大笑いして、寝坊してしまった自分への残念感をも吹き飛ばす、これぞ正しき休日のソロ活動。
太鼓をたたいてお出迎え。うーん、気分も盛り上がる!
開場の17時になると、なんとチケット売り場の上に着物姿の人が登場。道ゆく人々も、立ち止まって見上げています。おお、何事!?
着物を着た青年は慣れた様子で腰をおろし、目の前にある太鼓をたたき始めました。ドンドンドン、と気持ちのいい音が暮れゆく上野の街に響き渡ります。
近くにいたおじさんに聞いてみると、開場のときに客を呼び込むための「入れ込み太鼓」とのこと。太鼓を打ち鳴らしているのは、寄席で前座を務める落語家の見習いさんで、「(お客さんが)ドンドンどんと来い」と聞こえるように打つそうです。最後は大入りを願って、バチを「入」の形にして打ち止めます。
太鼓の音を聞くと日本人の血が騒ぐのか(?)、記者の気分は自然と盛り上がってきます!
全席当日売りの自由席。Webで予約できないのも、またヨシ!
チケット売り場は太鼓の真下。入れ込み太鼓を合図に窓口が開き、夜の部のチケット販売が始まります。
当日売りだから、思い立ってふらりと来られるのが魅力ですが、人気の芸人さんがたくさん出る鈴本演芸場は、休日は立ち見が出ることもしょっちゅう。早めに行って並ぶに越したことはありません。
チケットは全席当日売りの自由席。大人2800円です。休憩を挟んで3時間10分。10人以上ものプロの芸を楽しめてこの価格! さすが庶民の娯楽です。
ひと組の持ち時間は15分。次々に変わる出し物で客を飽きさせない!
チケット売り場の向かいには、誰がどんな順番で出てくるか示した出番表。寄席のプログラムは、上席(1日~10日)、中席(11日~20日)、下席(21日~末日)で変わります。興行は昼夜2回の入れ替え制。今夜のラインナップは下のとおり。初めて寄席に来た私でも知っている名前が! これは豪華です!
落語 春風亭一左
大神楽曲芸 仙三郎社中
落語 五明楼玉の輔
落語 入船亭扇遊
紙切り 林家正楽
講談 宝井琴柳
落語 春風亭正朝
漫才 ホンキートンク
落語 柳家はん治
奇術 アサダ二世
落語 春風亭一之輔
「奇術」は手品のことなのですが、昔ながらの言い方で「奇術」としているのが、なんだかいいですよね。
そう、寄席は落語だけではないんです。漫才もあるし、扇子で机を叩きながらしゃべる講談、傘まわしなどの曲芸、即興でいろんな形に紙を切る紙切りなど、多彩な楽しみがぎゅっと詰まっているのが魅力。ひと組の持ち時間は15分くらいで、出し物は次々に変わっていきます。
客席飲食可。飲酒ももちろん、可!!!
客席は3階で、出入口の前には弁当や菓子類を販売する売店があります。
菓子類はカステラ、豆あられ、アイス最中など渋い品ぞろえ。さきいかまであります。完全に酒のつまみじゃん! ・・・でも、売店にお酒は見当たりません。
聞くと、2階に缶ビールの自販機があるとのこと。やった! チケット売り場に「泥酔の御客様の御入場は御断りする場合も御座います」という札があったけど、中で飲めるんだ! 記者はすぐさま2階に走ります。
昔ながらのホールにさまざまな世代の人が吸い込まれていく
弁当とビールを手に、いざ客席へ。
中は市民ホールのような感じで、昔ながらのえんじ色の座席が並んでいます。ちょっと暗めの照明がいい感じ。
席は前から順に埋まっていきます。それにしても、客層の幅広いこと! 家族連れから中年夫婦、20代の若いカップル、ソロで来ている人まで、本当にいろんな人たちが来ています。途中で入って来て私の横にすわった30代くらいの女性は、終始楽しそうに声をあげて笑っていました。
ちなみに出入りは自由ですが、演目の切れ目を選ぶのがマナーです。
人間くささ満載の定番ネタ、ライブの醍醐味である即興が楽しい!
前の座席に付いている折りたたみ式のテーブルを広げ、一杯やりながらの寄席は最高!
落語のネタはあわて者の勘違いやお色気が定番だから、わかりやすくてすっと話に入れるし、話術が巧みだから、オチがわかっていても笑わされてしまうんです。小気味のよい話し方も気持ちが良く、あっという間に愉快な気分に。
即興が見事なのは客のリクエストに応える紙切り。
「ホームラン!」「うな重!」など、始まるやいなや、次々と客席から声が上がります。「ホームランって野球の?」「いや、お笑いの」なんていうなにげない演者と客のやり取りも楽しい。 切り終えた紙はプロジェクターに置いて光を当ててくれるので、後ろの席の人も舞台の壁に大きく映し出された影絵を見ることができます。
「うな重」は、客がお重のフタを開けたところ。見事な出来に、「おお~っ!」とどよめきが起きました。ちょうど会期中だった「世界陸上」というお題は、陸上選手が走る様子とキャスター席で表現。切るテクニックはもちろんだけど、とっさの発想力がすごいんだなあ。
切った紙はリクエストした人がもらえます。何よりのお土産です!
プログラムはうまく組まれていて、後半になるほど面白くなっていきます。トリを目当てに来る人もいるらしく、半分以上過ぎてから入ってくる人も。でも笑いのツボは人によって違いますから、初めての人は全部通して楽しむのがおすすめです。
寝坊の罪悪感を笑い飛ばし、早めの撤収で翌日にも支障なし。これぞ、完璧な休日
休日大寝坊には、17時半から楽しめる寄席が特効薬。おもしろくって笑いっぱなし! さっきまでの「やっちゃった」感はどこへやら。簡単に大寝坊の失敗を取り戻せちゃいます。舞台そっちのけでイチャつくカップルのような不届き者は皆無。ソロ活におあつらえ向きのスポットです。
大トリまで楽しんでも21時前。これくらいの時間に終われば翌日の仕事にも支障はないし、ちょうどいい感じです。お客さんを送る追い出し太鼓を聞きながら帰るのも、気分がいいもの。
絶対また来て、今度は紙切りで素早くお題を言うぞ!
ライター:佐々木志野
※2015年9月時点の情報です。