JR山手線の停車駅、大塚。隣駅の池袋に比べ、どこか謎のベールに包まれたその街は、懐かしさと新しさが混在するディープな魅力で溢れています。今回は、そんな大塚の街を盛り上げる“人”と“お店”に着目。現地インタビューを通して、不思議な活気に満ちた大塚エリアの魅力に迫りました。
戦前から歓楽街としてにぎわった大塚。居酒屋が密集するほか、夜のお店も多く、これまで治安があまり良くないイメージを持たれがちでした。しかし最近は、新しい商業施設やビルが次々と建ち、都電(チンチン電車)が走る昔懐かしい風情とスタイリッシュな雰囲気が混在する、唯一無二の街へと変貌を遂げています。今回はそんな大塚という街の北口エリアに注目し、おいしいグルメや遊び場を探索。人情溢れる出会いにもご注目を。
今や大塚駅北口の名所となっている、名店「ぼんご」。平日でも2時間待ちは当たり前、土日はなんと6時間待つこともあるというおにぎり専門店です。50種類以上の具材があり、トッピングを含めるとその掛け合わせからメニュー数は無限大に。毎日通っても違う味のおにぎりを食べることができます。
海苔から具材が豪快にはみ出たおにぎりは、どれも格別のおいしさ。中でも「卵黄+肉そぼろ」は、甘辛いそぼろの味付けが絶妙でペロリと食べられてしまうほど。目の前で握って出してくれる特別感もあり、これぞ日本人のソウルフードと言えるような温もりに溢れています。
二代目店主の右近さんは、華奢な体型ながら弾けんばかりのエネルギーを持った方。大塚の魅力について聞くと、「50年近くこの街を見てきたけれど、良いところは沢山ある。今後も若い人たちの力で、今の時代に適合した進化をしてほしい。私はその道標になって、みんなで街の温度を上げられたら」とキラキラした笑顔で語ってくれました。
一日中絶えない行列を見ても、どれだけ多くの人に愛されているお店なのかは明白。そんな名店が大塚にあるという事実が、この街のポテンシャルの高さを表しているようにも感じます。
スタイリッシュな外観が目を引くダイニングカフェ「eightdays dining(エイトデイズダイニング)」。全面ガラス張りの奥の席からは、チンチン電車が走り抜けていく様子を大パノラマで楽しめます。 天井が高く開放感のある店内は、洗練されていながらもつい長居したくなるような居心地の良さに溢れています。それはまるで、人々のエネルギーと温かさに満ちた大塚という街そのもののよう。料理長の青木さんも、「大塚のアットホームなところが大好き」と教えてくれました。
数あるメニューの中でもイチオシは、オニオンソースでいただくローストビーフ丼。幾重にも重ねられたローストビーフと、頂上にのった黄身の絶妙なマリアージュがたまりません!パスタやピッツァの評価も高く、毎日、いや一日に何度も通って多彩なメニューを味わい尽くしたくなるほど。
青木さんは、大塚で働き始めて現在4年目とのこと。大塚に来た当初は「パッとしない街だな」という印象を抱いたそうですが、ここ数年の盛り上がりには驚いているそうです。「大塚はお店同士がライバルというより、みんなで一緒に頑張って行こうというマインドがとても強いんです。僕も『eightdays dining』から大塚を盛り上げていきたいと思います」と力強く語ってくれました。
ぶらりと気軽に足を運びたいのが、気ままにハシゴ酒を楽しめる「大塚のれん街」です。個性豊かな店舗が集まっているから、今宵の気分や飲むメンバーに合わせてお店をチョイスできるのが嬉しい。今回は11店舗ある中から選りすぐりのお店と名物グルメをご紹介!
都電の踏切を渡ってすぐの場所にあるお店。とろっとろのたこ焼きは、どこか懐かしい味わい。お昼に食事として頬張るのも、夕飯時にハイボールと一緒に味わうのもオススメです。店内外にあるカウンタースペースで、スタンディングでイートインすることも可能。目の前を走るチンチン電車を眺めながら、たこ焼きとハイボール片手にノスタルジックな気分に浸って。
焼き場に立つ店長の木村さんは、通りを行き交う人々と自然に挨拶しながらたこ焼きを作る姿が印象的。それもそのはず、ここ大塚で13年働いており、子どもの頃から同店のたこ焼きを食べて大人になった常連客などを日常的に迎えているんだそうです。「大塚は僕にとって出発の場所であり原点。街の発展になることは惜しみなくやっていきたいです。ただし先頭は得意でないので、二番手・三番手ぐらいで(笑)」と照れ笑いを浮かべながらお話する姿が印象的でした。
さまざまな部位の鰻串を中心に、鰻のつまみ“うつまみ”を多数提供する「う福」。鰻以外のフードメニューも充実していて、連日幅広い客層でにぎわいます。鰻串の美味しさはもちろんのこと、外せないのは「ポテトサラダ」(上写真・手前中央)。薫製した鰻の身と半熟卵を客自ら崩し、マッシュポテトと混ぜていただくスタイルです。箸休めにピッタリな「梅カマンベール」や〆の「鰻のタレのチーズ焼きおにぎり」も堪らないおいしさ。
昭和を彷彿とさせるレトロな店内は、清潔感があって女性でも入りやすい雰囲気です。屈託のない笑顔が印象的な店長の長谷川さんは、数カ月前に他店舗から大塚へ赴任してきたばかりだそう。それでもすでに大塚という街の虜になっているようで、「当初、大塚の街は怖いような、暗いようなイメージでしたが、全く違うものでした。街の人もお客さんも皆さん温かくて良い人たちばかりなんです」と笑顔で話してくれました。
気の置けない仲間と呑むも良し、一人でビールをチビチビやりながら鰻串を食べるも良し。どんな客層も受け入れてくれる懐の深さがこの店にはありました。
のれん街の中でも54席という最大の席数を備える「魚屋みらく劇場」。新鮮な魚介を使った料理は、質・量・コスパのどれも素晴らしいと評判です。「名物カツオのわら焼き」は注文してから厨房で大きな炎と共に藁焼きに。ウニとイクラがどっさりのった名物「魚屋さんの本気T・K・G」は、〆に贅沢にかきこみたい一品です。
日本酒や焼酎などドリンクの種類も豊富で、グラス473円からとリーズナブル。大きな梁が剥き出しとなった古民家風の店内は、隣のお客さんとの距離感も適度に近く、不思議な一体感を味わえます。夜になると流しの手品師やミュージシャンが席を巡り、より活気溢れる空間に。そのにぎやかさが心地良くて、つい長居したくなるような居酒屋です。
地元は熊本で、大塚に来て5年目という店長の丸山さん。大塚について、「シンプルにいい街で、アットホームな街」と評してくれました。閉店後には、仲良くなった常連さんと飲みに行くこともあるのだそう。そんな店長の親しみやすいキャラクターも含めて、店内にいるみんなで一緒に飲んでいるような感覚を味わえる、大塚北口エリア最強クラスの居酒屋だと感じました。
2021年7月にオープンした焼き鳥「結火(むすび)」。大塚駅北口から徒歩30秒、駅の真横に立つビルの8階にあります。食通が足繁く通うことで知られる目黒の焼き鳥店「鳥しき」で修行した店主・阿部友彦さんが手掛ける3店舗目となるお店です。店舗の設計は隈研吾建築都市設計事務所出身の建築家・白浜誠さんによるもの。全18席のカウンターのみの店内は洗練された趣です。
メニューはストップ制のお任せコース1種。鹿児島県産「黒さつま鶏」をメインとした食材を、“強火の近火”の炭火で焼き上げています。一本ずつ提供されるので、常に最高の状態の焼き鳥が味わえるのも嬉しいポイント。なお、埼玉県戸田市の畑から直送される野菜は、30種類の塩を使い分けて調理されるこだわりよう。大人の焼き鳥フルコースを存分に味わえます。
料理長の笠井さんは、一見すると寡黙で職人気質な雰囲気であるものの、ひとたび話すと笑顔が素敵な方。「当店は高級店の部類になるため、大塚でお客さまがいらっしゃるのか、当初は心配していました。でも実際にオープンしてみると、焼き鳥とお酒をじっくりと楽しみたいというお客さまに多くご来店いただいています」と語ってくれました。こういったクオリティのお店が駅から徒歩30秒の場所にあるということに、大塚という街の可能性を改めて感じさせられました。
ビルの地下1階にある本格ガストロパブ。テレビドラマのロケーションなどにも数多く使われています。階段を下りると大きな窓からアメリカンな雰囲気の店内が見え、奥には卓球台を常設。大勢でのパーティー利用も可能で、気の合う仲間とお酒を片手に卓球に興じることもできます。
店長の鈴木さんは、大塚はコンパクトで面白い街だと話してくれました。「面白い店、面白い人がこの街にはいっぱいいるんですよ」とのこと。最後は「渋谷、新宿、池袋に並ぶ一つのジャンルとして“大塚”の名前が出てくるように、皆で街を作っていきたいです!」と熱く語ってくれました。
大塚駅北口から徒歩60秒あまりの立地にある「ba GOLF’s」。完全個室のプライベート空間でシミュレーションゴルフが楽しめます。
店内にはラウンジも備え、プレイの前後にお酒を楽しむことも。会員限定の月額制使い放題なので、仕事終わりにラウンドを楽しんでから大塚の街へ繰り出す・・・というルーティーンも可能です。会員数は100名限定なので、気になる人は早めにチェックを。
「大塚では、食事していても飲んでいても、誰かしら知り合いに会うんです。だから繋がりが深いというか、馴染みやすいというか、心地良い街なんです」――ping-pong baの鈴木さんが取材中に仰っていたこの言葉が印象的でした。取材中にも、とにかくみんなが挨拶を交わし合う光景に何度も遭遇しました。
街に暮らす人みんなが“いい人”で、“いい笑顔”をしていて、深く繋がっている、そんな魅力に溢れた大塚。若い人の活気に溢れ、今後の発展が楽しみな街でもあります。そんな大塚の旨い食事と旨い酒、“いい人”たちに出会いに、今こそ足を運んでみませんか。
株式会社ironowaでは大塚をカラフルでユニークなまちにする「ironowa ba project」を実行中。ironowaが所有するビルとさまざまなサービスや魅力的なイベントを連携して、まちの体温を上げていきます。