vol.20 東劇

 

vol.20 東劇

歌舞伎座と新橋演舞場との相乗効果を発揮していきたい

vol.20 東劇

場内の天井はまるで星を散りばめたよう

地下鉄東銀座駅から地上に出ると目の前に東劇ビルが見える。若かりし頃、東銀座の近くで働いていた筆者にとってこのあたりは思い出深い場所。東劇ビルの向かいの松竹スクエアは、以前は松竹セントラルという映画館で…などと昔のことはよく覚えているから不思議だ。さて、今回紹介する『東劇』は東劇ビルの3階にあるが、1階のチケット売り場の横のエスカレーターに乗れば、一気に3階の入り口まで上がれ、館内に入るとガラス張りの広いエントランスが現れる。

東劇(正式には東京劇場)は、もともとは近隣の歌舞伎座、新橋演舞場と並ぶ、歌舞伎の上演劇場として昭和5年(1930)に開館。昭和25年にロードショー館となり、昭和50年に現在の形に建て替えられた。筆者も『愛と青春の旅だち』(82)や『さよならゲーム』(88)といったヒット作から『わが心のボルチモア』(90)のような佳作まで、たくさんの新作映画をここで見た。と、またまた昔語りで失礼。その懐かしき東劇が、現在はODS作品中心の上映形態へと変化したらしい。「ODSって一体何だ?」と思いつつ、支配人の山田直人さんに話を聞いた。

「ODSとはOther Digital Stuffの略称で非映画コンテンツのことを差します。うちでは、舞台公演を高性能カメラで撮影したシネマ歌舞伎やシネマ落語、それからオペラ(METライブビューイング)が三本柱になっています」と支配人。なるほど映画じゃないものを映画館で上映するということか。確かにこれは新たな試みですなあ。支配人はODS作品の上映について「ほかの映画館との上映作品の差別化を図る中で、もともと歌舞伎をやっていた劇場なので、歌舞伎や演劇ファンのお客さまにも楽しんでいただけるコンテンツとして2005年から始めました。正直なところ、最初は演劇をスクリーンに映すというのはどうなのかなという気持ちもあったのですが、シネマ歌舞伎やオペラを見たお客さまが『映画館で見るのもなかなかいいね』と言ってくださるのを聞いて安心しました」と語る。シネマ落語は東劇での上映を皮切りに、全国に広がっていったというから先見の明ありだ。

vol.20 東劇

映画館前に4人の名人落語家の“大看板”が並ぶ

もちろん生の舞台と映像作品はあくまで別物。迫力や臨場感、役者の息遣いまで感じられるのがライブの魅力だ。ところが支配人は「例えばシネマ歌舞伎なら、カメラが役者の表情や衣装の美しさを細かくとらえているので、より一層見やすくなっていると思います。『生の舞台とは、また違った楽しみ方ができる』とおっしゃるお客さまもいます」と確かな手応えを感じている様子。

「実際にお客さまから好反応をいただくと、やって良かった、やった意義があったと思います。もちろん、生の舞台にはかないませんが、歌舞伎を違った形で見るという新たな楽しみができたと思います。それぞれに良さがある舞台とODS作品の両方を楽しんでいただきたいですね」と語る支配人。歌舞伎公演と同じようにイヤホンガイドが利用できたり、特別映像が付いた作品も、一部にはあるという。今後はこうしたサービスがさらに広がっていくことだろう。

最後に上映作品の中で印象に残ったものを聞くと、支配人は歌舞伎座さよなら公演の歌舞伎座を舞台にしたドキュメンタリー映画『わが心の歌舞伎座』(10)を挙げた。「感激して泣いているお客さまもたくさんいらっしゃいました。歌舞伎座との縁の深さをあらためて実感させられました」。

その歌舞伎座は、現在建て替え工事中で2013年の春に新たな姿でよみがえる。「実演の歌舞伎座と新橋演舞場、それからシネマ歌舞伎を上映する東劇とで、これからもトライアングルで相乗効果を発揮していきたい。もちろん映画も忘れてはいません。特集上映なども交えていきます」と支配人。老舗映画館の新たな挑戦から目が離せない。

ここでの一本

スクリーンで観る高座 シネマ落語「落語研究会 昭和の名人 四」
東西巨匠が夢の競演!

東劇では6月30日からシネマ落語の第4弾となる「落語研究会 昭和の名人 四」を上映する。今回は上方落語から、六代目笑福亭松鶴の「高津の富」と五代目桂文枝の「猿後家」、そして江戸東京落語から、六代目三遊亭圓生の「猫忠」と五代目柳家小さんの「試し酒」というラインナップ。今は亡き4人の名人たちの至芸による東西競演が大スクリーンで楽しめる。山田支配人は「最初は、映画館で落語を楽しむ、という初めての体験への、お客さまの反応に不安がありましたが、やってみると『良かった』という声をたくさんいただきました。本来、笑いとは集団的なもので、ほかの人と共有してこそ楽しいと思います。ですから今回も、みんなで一緒に大いに笑いましょうということです。ぜひ東劇で、ほかのお客さまと一緒になって質の高い笑いを体験してほしいですね。今も色あせない昭和の名人の芸を、皆さんで楽しんでいただきたいと思っています」。

『落語研究会 昭和の名人 四』
提供:松竹

『落語研究会 昭和の名人 四』(6月30日~東劇ほか全国公開)

出演:六代目笑福亭松鶴、五代目桂文枝、六代目三遊亭圓生、五代目柳家小さん

「高津の富」は宝くじのルーツの富くじの噺。松鶴の人間臭い芸が生きる。「猿後家」のテーマは容姿コンプレックス。文枝の女性描写が見事だ。凝り性の圓生の猫の変化(へんげ)が見もの聴きものの「猫忠」。そして、小さんお得意の酔態演技の妙が見られる「試し酒」。どれも必見だ。

映画館の基本情報

〒104-0045 東京都 中央区 築地4-1-1 東銀座東劇ビル3F
TEL03-3541-2711
東劇

映画館情報を投稿しよう!

投稿する

確かな技術でした

口コミをもっと見る»

おすすめ情報