vol.15 有楽町スバル座

 

vol.15 有楽町スバル座

シックな雰囲気を持つ映画館で新作映画を見るのも楽しい

vol.15 有楽町スバル座

赤で統一された場内。背もたれが長い椅子の座り心地も上々

JR有楽町駅前の「有楽町ビルヂング」内にある「有楽町スバル座」は、1946年(昭和21)の12月31日に開館した老舗映画館。名物となったビル前の上映広告塔が道行く人の目を引く。まずはその長い歴史から語らせてもらおう。『わが心の歌』(42)で幕を開けたスバル座は、ジョージ・ガーシュインの伝記映画『アメリカ交響楽』(45)から、ハリウッドの新作映画を独占上映する“日本最初のロードショー劇場”となり、併せてイングリッド・バーグマン主演の『ガス燈』(44)やグリア・ガースン主演の『心の旅路』(42)など、戦時中は輸入が禁止されていた映画も数多く上映。筆者も、映画関係の大先輩が当時のスバル座の素晴らしさについて熱く語るのを何度も耳にした。

ところが、1953年(昭和28)に起きた火災でスバル座は一度消失してしまう。ちょうどSF映画『宇宙戦争』(53)を上映中で、宇宙人に向けて大砲を撃つ場面でスクリーンの上から火が出たため、最初は火事だとは気付かなかったらしい。幸い観客は全員無事だったが、スバル座は13年の空白を余儀なくされる。そして、1966年(昭和41)に現在のビル竣工後に再生し、日活との提携を経て東宝洋画系となり、今年、開館65年周年を迎えた。何ともドラマチックな歴史を持つ映画館なのだ。

営業係の加藤和人さんと石井陽介さんに話を聞いた。ここは今どき珍しい全席自由席のロードショー館。入れ替え制ではないので映画の途中から入ってもいいし、席の移動も自由にできる。早い話が一日中いてもOKだ。加藤さんによると、こうしたゆるい雰囲気が好きだという人も多いという。さらに上映前には昭和41年に録音されたアナウンステープが流れる。「ごゆるりと~」なんて言われるとまるで昔にタイムスリップしたような気分になるが、レトロな雰囲気を持った映画館で新作を見るというのもまた楽しいものだ。

vol.15 有楽町スバル座

JR有楽町駅が目の前という地の利の良さも魅力の「有楽町スバル座」

石井さんが過去の上映リストを見ながら思い出を語ってくれた。「『イージー・ライダー』(69)や『バニシング・ポイント』(71)などのニューシネマ、ビートルズの『レット・イット・ビー』(70)やプレスリーの『エルビス・オン・ステージ』(70)といった音楽もの、そして親子連れでにぎわった『スヌーピーの大冒険』(72)などが印象に残っています。特に『イージー・ライダー』は、半年間で17万人を集め、これがうちの観客動員数の記録になっています。それからビートルズの映画の時は一日中いるお客さまがたくさんいましたね。一番前の席に陣取ってスクリーンに向って花束を投げる人もいました。80年代からはフランス映画社が配給したアート系の映画を上映するようになりました」。そうそう、筆者にとってのスバル座は80年代が最も印象深いのだ。「ここでトルコ映画の『路』(82)やジム・ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84)を見ましたよ。ヒッチコックの特集上映で『めまい』(58)も見たなあ」とつい思い出話を語ってしまった。

とは言え、もちろんスバル座はノスタルジーに浸っているばかりではない。「お客さまの見心地や居心地の良さを考えて6年前にリニューアルしました。床に段差を付けて後ろからでも見やすくし、椅子も360席から270席に減らして座席のスペースを広く取りました。背もたれが長いこの椅子の評判がいいんですよ」と石井さん。「ところが、リニューアル後の最初の映画は何とスピルバーグ版の『宇宙戦争』(05)だったんです。これも何かの因縁かと思いましたね。『また焼けるんじゃないの』なんてきつい冗談を言うオールドファンもいました。もちろん何事もありませんでしたけど」と加藤さん。

最近は、邦画の上映が増えているという。「『僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.』(11)』を上映した際は、若い人がたくさん見に来てくれました。その中に、『初めて外に並んで映画館に入ったけど、一体感があってイベントみたいで楽しかった。何だか“映画”を見たという気がする』と言ってくれた人がいました」と石井さん。階段にもじゅうたんを敷き詰め、場内を赤で統一した昔ながらのぜいたくな造りに驚く若者もいるという。「アナログの良さを分かってくれる若者もいるんですよ。これからもこうした雰囲気を大切に守っていきたいですね」。シネコン主流のご時勢に、高級感にあふれた昔ながらの映画館が残っているとは何ともうれしいじゃないか。

ここでの一本

65TH「オールタイム ベストムービー イン スバル座」
スバル座の歴史の長さを物語るバラエティーに富んだラインアップ

「有楽町スバル座」では、12月10日から1月20日まで、メモリアル65TH「オールタイム ベストムービー イン スバル座」と題して、過去に上映した人気作品の中からピックアップした作品を上映している。ラインアップは新藤兼人監督の『午後の遺言状』(95)、フランク・キャプラ監督の『或る夜の出来事』(34)、デニス・ホッパー監督の『イージー・ライダー』(69)、山本薩夫監督の『華麗なる一族』(74)、黒澤明監督の『七人の侍』(54)、シドニー・ポワチエ主演の『いつも心に太陽を』(67)、フレッド・ジンネマン監督の『地上より永遠に』(53)、チャールズ・チャップリン監督主演の『街の灯』(31)と『モダン・タイムス』(36)、石原裕次郎主演の『夜霧よ今夜も有難う 』(67)、鈴木清順監督の『けんかえれじい』(66)。まさにスバル座の歴史の長さを物語る、バラエティーに富んだ素晴らしい陣容だ。特に『いつも心に太陽を』や『夜霧よ今夜も有難う 』は、今ではめったに映画館にかからない作品なのでぜひお見逃しなく。

『運命の子』
提供:有楽町スバル座

夜霧よ今夜も有難う』(1月12日~16日)

出演:石原裕次郎、浅丘ルリ子、二谷英明
監督:江崎実生

ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン共演の名作『カサブランカ』(42)をベースにして作られた日活歌謡アクション。裕次郎がボガートで、浅丘ルリ子がバーグマンの役どころ。浜口庫之助が作詞作曲し、裕次郎が歌った主題歌も大ヒット。歌手・石原裕次郎の代表曲ともなった。

映画館の基本情報

〒100-0006 東京都 千代田区 有楽町1-10-1 有楽町ビル2F
TEL03-3212-2826
有楽町スバル座

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