vol.08 飯田橋ギンレイホール

 

vol.08 飯田橋ギンレイホール

プログラムは覚悟を持って組んでいる。お客さんとの勝負です。

vol.08 飯田橋ギンレイホール

スタッフの努力で館内には清潔感が漂う

74年に名画座としてスタートした「飯田橋ギンレイホール」。ここには筆者も学生時代によく通った思い出がある。そして、神楽坂の旅館「和可菜」で『男はつらいよ』シリーズの脚本を書いていた山田洋次監督、新藤兼人監督と乙羽信子夫妻、伊丹十三監督などもよく訪れたという。また、森田芳光監督はここでのアルバイト経験を生かして『の・ようなもの』(81)を撮った、など映画関係者にまつわるエピソードにも事欠かない。だが、ここは決して追憶の彼方にある映画館ではない。時代の流れで名画座が次々と姿を消す中で踏ん張り続け、今も現役バリバリの映画館として存続しているのだからうれしいじゃないか。

今回は支配人の潮見洋子さんに話を聞いたが、自分が学生のころに通った映画館の名支配人への取材ということで、さすがのオヤジも年がいもなく緊張したぜ。

支配人は、「うちは37年間、映画を商品としてではなく映画そのものとしてとらえてきました。映画は数字には換算できない部分に良さがあるのに、客入りが悪いと上映回数を減らしたり中止してしまったり、単に映画を商品化して数字(金銭)に置き換えているところがありますよね。だから私たち名画座は、選んだからには、その作品の良さを伝えたいと考えて踏ん張っているんですよ」と語った。

また、今年第二回が実施された「午前十時の映画祭」についても、「大手の映画会社が旧作をニュープリントで上映するのは大変価値あることですが、実はこれらの映画は、名画座が一生懸命に地道に何度も上映して名画にしたという自負があり、ロードショーと銘打たれ当分の間上映できないのはちょっと悔しい気がします」と言う。名画座への愛に満ちた直言に、筆者も瑠飲が下がる思いがした。

vol.08 飯田橋ギンレイホール

壁には上映作品のプレスシートやポスターが張られている

さて、ここの基本は2本立てでの上映。映画の選定はすべて支配人が行う。いかに2本を組み合わせるかが悩みの種だが、見る人に先入観を持ってほしくないので、ほかの名画座のような2本通しのタイトルはあえて付けないという。そして、「プログラムを組むときは覚悟を持って組んでいます。お客さんとの勝負ですね。私の選定でお客さんが入らなくなったら潔く身を引きますよ」とまで言い切る。うぉー、まさに観客とのガチンコ勝負じゃないか。その志の高さが、ギンレイホールを37年間も存続させてきたに違いない。

「お客さんは厳しいですよ。なぜこの作品を選んだのかときちんと突っ込んでくる。だからこちらもちゃんと答えられる材料を持っていなければ駄目なんです。それには映画を提供する側も常に勉強しなくては。自分の好みだけではなく、ジャンルを問わずに、いいものはいいと判断できる目を養うこと。映画以外のものにも触れて、自分の生きている時代をきちんと認識することが大切だと思います」と支配人。こちらはもうすっかり恐れ入って学生に戻ったような気分で話に聞き入っていた。

「映画は時代性とは決して引き離せないものだと思います。だからうちは、すでに名画になったものではなく、比較的新しい作品の中から、今後名画になりそうなものを提供するように心掛けています。多くの人の目に留まるようにして次の世代に伝えたい。そのためにも、見て理解するのではなく心に吸収できるような映画を選んでいきたいですね」。名画座といっても決してノスタルジックな旧作上映だけでは終わらない。ここギンレイホールは、名画座の新たな形を提案しているのだ。

ここでの一本

『トゥルー・グリット』VS『少年は虹を渡る ハロルドとモード』
年齢の垣根を超えた異世代間のラブストーリー

ギンレイホールでは、6月25日から7月8日まで、『トゥルー・グリット』(2010)と『少年は虹を渡る ハロルドとモード』(1971)を上映する。支配人は、「『トゥルー・グリット』を見た時に、すぐに『少年は虹を渡る~』が思い浮かびました。少年と老婆の恋を描いたこの映画は、公開時はあまり受け入れられなかったけど、今なら納得する人がたくさんいるのでは」と語った。この2本を組み合わせた理由については、「どちらも同世代によるラブストーリーではなく、年齢の垣根を超えて、人と人とのつながりや感情の交流を温かく描いています。それに、若い人に大人とのコミュニケーションを学んでもらいたいという思いもあって選びました」という。また、ここでは日本初となるシネマパスポートを発行している。1人用のシングルカード(税込10,500円)か2人用のペアカード(税込18,900円)を購入して「ギンレイシネマクラブ」に入会すると1年間フリーパスで映画を見ることができる。現在の会員は5000人以上。名前は出せないが超有名スターも会員になっている。また、最近は地方へフィルムを持っていく映画の出前=「移動映画」も開始。東日本大震災の被災地での上映会も検討中だ。

『トゥルー・グリット』(2010)

トゥルー・グリット 』(2010)

出演:ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ヘイリー・スタインフェルド
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
提供:ギンレイホール

父を殺した犯人への復讐を誓い、2人の男を従えて危険な追跡の旅に出た14歳の少女がたどる過酷な運命とは。ジョン・ウェイン主演の西部劇『勇気ある追跡』(1969)の原作ともなったチャールズ・ポーティスの同名小説をコーエン兄弟が再映画化した。ロケーションを多用し、原作に忠実に骨太な作品として仕上げている。

映画館の基本情報

〒162-0825 東京都 新宿区 神楽坂2-19 銀鈴会館
TEL03-3269-3852
飯田橋ギンレイホール

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