vol.04 キネカ大森

 

vol.04 キネカ大森

おしゃれだけど、サンダル履きでも気軽に来られるような
映画館を目指して

vol.04 キネカ大森

正面入り口。ここからエレベーターで5階に。食堂街もあるので映画観賞の前後には便利

大森駅東口の西友の5階にある「キネカ大森」は、今から26年前の1984年に都内初のシネマコンプレックスとしてオープンした。ちなみに“シネコン”とは同じ施設内に複数のスクリーンを持つ映画館のこと。コンプレックスといっても、決して劣等感のことではない。

当初この映画館は、ヨーロッパ系の芸術映画を中心としたおしゃれなミニシアターの印象が強かった。筆者も『アマデウス 』(84)や『千利休 本覺坊遺文』(89)をここで見て芸術の薫りに触れた覚えがある。その後、経営母体が変わり、韓流ブーム前のアジア映画専門館を経て、『ドラえもん』などのファミリー映画や特選映画の上映館へと変化した。ゆえに、この映画館に対する観客の印象はその時期によって異なることだろう。とはいえ、映画館受難の時代を、試行錯誤を繰り返しながらも生き残ってきたのだから大したものだ。 その「キネカ大森」が、通常の新作映画の上映に加えて、12月から「名画座始めました。」と題して、一般1,300円というお得な料金で、名画の2本立て上映をレギュラー化する。スタートの12月は、『隠し剣 鬼の爪』(04)と『必死剣鳥刺し』(10)という藤沢周平原作の2本、韓国映画『クロッシング 』(08)と幻の日本映画『樺太 1945年夏 氷雪の門』(74)という国境問題を描いた2本など、興味深い組み合わせが並ぶ。これはなかなか渋いぜ。

ここの特色は、支配人の長島理恵子さん、営業の藤本朝子さんほか3人の女性スタッフが中心になって運営していること。だから女性ならではの視点を生かした映画選びをしている。1月の「ねこシネマ」(ネコ映画の特集)などは間違ってもオヤジの発想では浮かんでこない楽しい企画だ。「個性的だけど、居心地が良く、サンダル履きでも気軽に来られるような映画館を目指しています。地域密着型で皆さんの心に残る映画を提供していきたい」と藤本さん。キネマ旬報のバックナンバーなどを置くライブラリーの設置、お得な回数券「キネカード」のサービスもある。ホームページはほぼ毎日更新しているので、ツィッターなどで参加してどしどし意見を寄せてほしいとのこと。見せっ放しじゃない姿勢に好感が持てる。

vol.04 キネカ大森

黒猫が粋な「名画座始めました。」の告知ポスター

「ゆくゆくは小津安二郎、成瀬巳喜男、黒澤明などの監督特集や、年齢と経験を積み重ねてきた女性が、それを見て自分の生き方を肯定できるような映画を特集したいです。旧作映画を集めるときは、まず権利問題をクリアしなければならないし、他館との競争になれば名画座としての歴史の長さがものを言ったり、早い者勝ちのところもあるのでなかなか大変。でも、老舗の名画座に負けないように、企画を温めておいて絶対にやりたい」と言葉に力を込める長島さん。いざとなると女性は男性よりもたくましいものですな。

ここでの一本

「シネフィルキネカ」女優カトリーヌ・ドヌーブ
フランス人形のように美しい若き日のドヌーブに陶酔せよ

“シネフィル”とは聞き慣れない言葉だが、おフランスでは、ジャンルを問わず映画そのものをこよなく愛する“映画狂”のことをこう表現するのだ。キネカ大森では、作品選定を担当している藤本さんが特にお薦めの2本に“シネフィルキネカ”と付けて上映する。記念すべき第1回(1月15~21日)は、「女優カトリーヌ・ドヌーブ」と題した『シェルブールの雨傘』(63)と『ロシュフォールの恋人たち』(66)というフランス製ミュージカルの2本立てだ。最近、『クリスマス・ストーリー』(08)『隠された日記 母たち、娘たち』(09)『しあわせの雨傘』(10)と新作3本が次々に公開され、今も現役バリバリのドヌーブ。大女優としての貫禄十分の今の彼女もいいけれど、若い藤本さんが見て驚いたという、フランス人形のように美しい若き日のドヌーブの姿を、ぜひスクリーンで確かめてほしい。監督ジャック・ドゥミの映画への愛にあふれた演出、ミシェル・ルグランの華麗な音楽、衣装や傘などのおしゃれな色遣いなど見どころ満載。今回はデジタル上映なので、映画が作られた当時に近いポップで生き生きとした色と音の良さが感じられるはずだ。こういう映画こそぜひ映画館で見るべし。

『ロシュフォールの恋人たち』(67)
(C) Cine-Tamaris

ロシュフォールの恋人たち』(67)

出演:カトリーヌ・ドヌーブ、フランソワーズ・ドルレアック
監督:ジャック・ドゥミ

フランス西南部の海辺の街ロシュフォールに住む美しい双子の姉妹を中心に、さまざまな人間模様を描いたミュージカル映画。ドヌーブと夭折した実姉のドルレアックをはじめ、ダニエル・ダリュー、ミシェル・ピコリ、ジャック・ペランらが共演。ハリウッドからジーン・ケリーとジョージ・チャキリスも招かれた。音楽は『シェルブールの雨傘』でもドゥミとコンビを組んだミシェル・ルグラン。

映画館の基本情報

〒140-0013 東京都品川区南大井6-27-25 西友大森店5F
TEL03-3762-6000
キネカ大森

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