第22回(2020年度)三木淳賞受賞作家新作展 飯沼珠実写真展「機械と心 ―白くて小さな建築をめぐり」 が開催されます。
◆作家のコメント
私が養蚕・製糸に興味をもったきっかけは、長野県松本市出身の父の実家が、かつて養蚕農家を営んでいたことにあります。父の思い出話は、都心に生まれ育った私にとっては、映画の中の出来事かのように感じるくらいの距離があり、しかしながらそこに吹く風や滴る汗が、いままさに自分の肌に感じられるような、生き生きとしたものでした。そして同県岡谷市に現在も続く現場に通うようになりました。
それを知り学ぶ手がかりとして、養蚕・製糸の「建築らしさ」に注目しました。この背景には、これまで「建築」を被写体に作品制作に取り組むなかで、自分の関心が建物そのものには留まらず、建築物を起点として、都市や土地固有の歴史、個々人の営みの痕跡やその集積の広がりも、「建築」として捉えるようになったということがあります。
私がみた養蚕・製糸の世界は、その経糸に合理性や利便性を追求する機械時代、緯糸に人間の個性や心が織り込まれた織物のようでした。人間が機械の主人なのではなく、あるいは機械が人間を追いやるのでもない。機械と人間が、共に生きられる日常を創造してきたようなのです。心が機械にみえること、機械に心を感じること、カメラを通して現場をみつめてみると、歴史の織物は少しずつほつれ、その隙間に立ち現れる景色からは、不思議と写真表現の歩みのページをめくるような感覚が湧いてきました。見ることと見られること、モノのナラティブ、全体ではとくに目立たない存在の「存在」、日常の連続と不連続など。このような経験を手がかりに、「白くて小さな建築」をめぐる景色の断片を掬いたいと思いました。
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