2015/12/11 19:31

能町みね子の東京妄想デートvol.10 東京藝大生とド下町デート

 

文筆業兼イラストレーターの能町みね子さんが、好みの男性とともに“妄想上で”完璧なプランのデートをする「東京妄想デート」。これを見てあなたの実在するステキなダーリンと実際に同じようなデートをするもよし、あなたもあなたの「妄想デート」をするもよし!?


東京藝大生の日常、ド下町デート

♥東京で下町と呼ばれる地域にもいろいろあります。東京スカイツリー®で注目される押上、もんじゃの月島、門前仲町などは「分かりやすい」下町だと思います。観光地的な要素も高く、カラッと晴れた日に店先でおせんべいなんか買って歩きたい感じです。

しかし、三ノ輪や入谷はちょっと違う。感覚でしか表現できないけど、もっとギュッと圧縮した、下町の濃度を限界まで高めたような街です。私の勝手なイメージでは、「下町でも散歩しようかな」という気持ちでフラッと来るよりも、どっしり腰を据えて住む街という感じです。

♥そんなわけで、今回は入谷に住む人とデートしますよ。実はここから徒歩で行ける範囲にあるのが、上野の東京藝術大学です。この辺の古くて比較的家賃の安いビルを好んで住む藝大生って、意外と多いんです。入谷の街は、年月を重ねて味わいの深まったものを好む人たちと相性がいい。

私と藝大生の彼氏は、二人とも3浪しているので大学2年生としてはちょっと老けている。あ、私も妄想上で藝大生、油画専攻。アトリエとしては狭すぎるけど住むにはそこそこ余裕のある、入谷の築50年のビルに同棲しております。夜に帰ると階段や廊下がお化け屋敷のように真っ暗だし、旧式のエレベーターも階に停まるたびに大きく揺れるので怖いですが、部屋の中は案外キレイです。

♥格好を気にせず年中サンダルの彼氏と出かけるのは、ほとんど歩いて行ける範囲に限られる。バイトもロクにしてないのでお金もない。単なる日常の買い物に、彼と私はだいたい裏道をたどって、たまに吉原のほうの様子をうかがったりしながら遠回りして、商店街「ジョイフル三ノ輪」にたどりつく。ここは東京下町でも屈指の「元気な商店街」だと思う。やかましいくらい。

ここで自炊用の野菜を買い込んだりして、そのあとは喫茶店に入るお金ももったいないので自動販売機で買ったコーヒーを路地裏ですすります。たまに余裕があるときは、都電三ノ輪橋駅のそばで、店頭で焼いているうなぎを買い食い。

誰がなんと言おうと、これはデートです。だいぶ私のあこがれと偏見が混じっていますが、藝大生(というか美術系学生)のデートはこういうのがいい! てゆーか私は藝大生そのものにあこがれてる! 藝大生になりたい!

もうデートとか関係なくなってきたので、以上!



文・イラスト:能町 みね子さん


能町 みね子さん
能町 みね子さん

能町 みね子さん

文筆業兼イラストレーター。「オカマだけどOLやってます。」でデビューし、近刊に「『能町みね子のときめきデートスポット』、略して 能スポ」(講談社文庫)「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。「久保みねヒャダ こじらせナイト」にも出演中。
https://twitter.com/nmcmnc

※この記事は、レッツエンジョイ東京のフリーペーパー「東京トレンドランキング」2012年4月号(3/20発行)に掲載されたものです。
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