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【文豪も愛した蕎麦】百年続く蕎麦の名店を訪ねて~ロマンが香る大人の休日~

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つかの間のオフ。「どこで、どう過ごすか」は大きなテーマ。食にこだわりをもつ大人なら、そこに「何を食すか」も加わってくる。いつものように都心で美食めぐりを楽しむのもいいけれど、究極の一品を求めて足を伸ばすのも贅沢な時間の使い方。かつてあの文豪が通ったという、手打ち蕎麦の名店を訪ねて奥多摩方面に向かった。

Date2016/07/14


玉川屋

つかの間のオフ。「どこで、どう過ごすか」は大きなテーマ。食にこだわりをもつ大人なら、そこに「何を食すか」も加わってくる。いつものように都心で美食めぐりを楽しむのもいいけれど、究極の一品を求めて足を伸ばすのも贅沢な時間の使い方。かつてあの文豪が通ったという、手打ち蕎麦の名店を訪ねて奥多摩方面に向かった。


ここは東京!?雄大な自然にしばし圧倒される

御嶽駅

▲御嶽駅のホーム。休日は登山者やアウトドア好きが集う

東京駅から電車に揺られ約1時間半。車窓に緑濃い山々が広がり出すと、今回の目的地、JR青梅線・御嶽駅に到着だ。

電車のドアが開いた瞬間、肺の奥まで新鮮な空気が染み渡る。酸素が濃い、とでもいうべきか。都心とはまるで違う空気を味わいながら、この地で作られる蕎麦に思いを馳せる。

奥多摩の雄大な山並みを担う御岳山のふもと、東京都青梅市御岳。大自然の景観に魅せられて移り住んだ芸術家や文人も多いらしい。駅からすぐの御岳渓谷は、環境庁が選定する名水百選にも選ばれている景勝地。これからの季節は、ラフティングなどウォータースポーツの名所としてにぎわう。

御岳山

▲渓谷沿いを散策し、マイナスイオンを浴びる



地元で約100年続く、手打ち蕎麦の老舗「玉川屋」へ

この御岳渓谷を見下ろせる絶景ポイントに建つのが、大正4年創業の手打ち蕎麦「玉川屋」。初代店主の店舗兼住まいだった茅葺き屋根の家を守りながら、地元の名店として歴史を重ねている。

玉川屋

▲明治時代に建てられた茅葺きの民家で営まれる「玉川屋」

現在、蕎麦を打つのは3代目の宮野敏彦さんと、そのご子息。石臼でひいた100%国産蕎麦の全粒粉を、山の水を使って打つ。だしは、本鰹を削り昆布と合わせてとる。「手打ち蕎麦の伝統を引き継ぐこと、そして天然の食材を使って安全な食を提供すること」が宮野さんの信条だ。

玉川屋

▲取り寄せた本鰹節は表面の汚れを洗い流し、干してから削る

昭和初期には、この店の評判を聞きつけた太宰治、木山捷平ら“阿佐ヶ谷文士”の面々が御嶽参りの帰りに立ち寄り、舌鼓を打った。近年では、山を愛し「花の百名山」を選んだことで知られる作家の田中澄江が常連だったとか。

玉川屋

▲文士たちが集った広間。見事な梁や柱を鑑賞するだけでも来た甲斐あり!

玉川屋

▲文豪が来店の折にしたためた色紙。手前から2枚目が太宰と木山の書




冷えた生酒をお供に、太宰と同じ蕎麦を味わう

玉川屋で供されるのは、打ち立ての蕎麦をはじめ、清流でとれたばかりの魚や、地元の山菜など。季節の味を大切にした素朴な料理に、奥多摩の水で仕込んだ名酒「澤乃井」の生酒がすすむことこのうえなし!

太宰らも、川魚をさかなに杯を傾け、シメには蕎麦を何杯もおかわりしたらしい。さっそく文豪を気取って、「太宰と同じ蕎麦を」と注文。

玉川屋

▲小ぶりながら深さのある、独特の形状のザルで供される「もりそば」(760円)。

店主こだわりのつゆは、蕎麦の先をちょんと浸してスマートに味わうのにちょうどよい、少し辛めの味付け。ずずずとすすると喉越しよく、蕎麦の香りが広がっていく。窓の外の素晴らしい景観と相まって心洗われるよう!

玉川屋

▲昭和初期に撮影された貴重な写真。向かって右の茅葺き屋根の家が玉川屋

玉川屋

▲快く撮影に応じてくださった、店主の宮野さん


聞くところによると、このあたりの景観は昭和初期からそれほど変わっていないのだとか。文士が愛した蕎麦を、同じ景色を見ながら味わう休日。だれかに自慢したいけれど秘密にもしておきたい、隠れ家を見つけた少年のごとき高揚感に包まれること間違いなしだ。

玉川屋

住所:東京都青梅市御岳本町360
電話:0428-78-8345
営業時間:11:00~18:00
定休日:月曜日
最寄り駅:御嶽駅





取材・文:芝 真紀子

※2016年7月の情報です。価格やメニュー内容は変更になる場合があります。





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