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カフェライター川口葉子がこっそり教える、原宿・表参道の隠れ家カフェ4選

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カフェライター・川口葉子さんの連載「川口葉子の東京カフェクロニクル」。開店から3年以上、地域に愛される存在になったカフェの歴史やエピソードを毎回綴ります。第13回は原宿の老舗カフェ「アンセーニュ・ダングル」を紹介。

Date2016/03/19

[連載] 川口葉子の東京カフェ クロニクル ~カフェの上にも3年~

【川口葉子カフェ連載vol.13】歴史はここから始まった。深煎りネルドリップコーヒーと14本の薔薇が香る場所

アンセーニュ・ダングルには40年以上にわたって貫いてきた美しいスタイルがある。深煎りのネルドリップコーヒーと、フランスの片田舎の一軒家をイメージした重厚な空間、そして端正なおもてなし。

たとえば、いかなるときもテーブルに14本の大輪の薔薇を欠かさないこと。お客が店内に入ってくるときと帰るとき、必ずカウンターのスタッフが視線を合わせて挨拶すること。お店の背筋というものは歳月を経るにつれてゆるんでしまいがちなのだが、このカフェはつねに背筋を伸ばして凛とした品格を保ちつづけている。驚異的なことだ。

フランス語で「角の看板」を意味する店名の通り、アンセーニュ・ダングルが隠れているのは、原宿駅から歩いて5分の距離にありながらひっそりと静まりかえった路地の角。小さな古いビルの蔦が揺れる外壁に掲げられた、赤いコーヒーポットと日よけが目印だ。

地階への階段を降りていくと仄暗い空間が待ち受けている。長く艶やかな木のカウンター。奥まった半個室のようなベンチシート。変化に富んだコーナーがしつらえてあるから、ひとりで読書、ふたりで静かなおしゃべり、数人で仕事の打ち合わせと、どんな状況でも居心地よく過ごすことができる。

おすすめしたいメニューは、快い苦みと豊かなコクをもつコーヒーと、きめこまかくしっとり柔らかな自家製チーズケーキの組み合わせ。コーヒーにはコクテール堂のエイジングビーンズが使われる。

贅沢にもラリックのワイングラスに注がれる「琥珀の女王」も、多くの人をとりこにする一品だ。カウンター席に座れば、お店の人が銀色のカクテルシェーカーに温かいコーヒーを入れて氷の上に横たえ、くるくると手際よく回転させて急冷する作業が見られるだろう。

きりりと冷えたコーヒーをグラスに注ぎ、生クリームをスプーンづたいにそうっと注ぎ入れて白い層をつくっていく。仕上げにコーヒー豆を一粒、ティアラのように浮かべれば麗しき琥珀の女王の完成である。ビロードのように喉をおりていく、まろやかでほろ苦い液体。

店主の林義国さんが建築デザイナーの松樹新平さんに依頼して1975年に作りあげたこのカフェは、「フレンチスタイル」と呼ばれて評判になり、やがて一世を風靡した。なにもかも当時の日本の喫茶店の主流とは正反対をゆくアンセーニュ・ダングルがどれほど革新的だったか。

そのころ喫茶店で流行していた軽い(もしくは単に薄めただけの)アメリカンコーヒーとは対照的な、豊かなコクと風味の際立つコーヒー。それをジノリやベルナルドなど名窯の高価な食器を惜しげもなく使って供する。

白い漆喰の壁と太い木の梁を照らすランプ。ひとつの世界観をもった重厚な空間づくり。アンセーニュ・ダングルはその後に開店した多くの喫茶店のお手本的存在となった。

現在、林さんがカウンターに立つのは1985年にオープンした自由が丘店である。アールヌーボー時代の調度品を集めた優美な空間だ。原宿店と同様に5、6日に1度ずつ、薔薇専門店「ローズギャラリー」から、その朝摘みたてのみずみずしい薔薇が14本届けられる。

「最初につくったものを変えず、足しもせず、引きもしないよう努めてきた」と林さんは語る。
「学生時代にこの店に来ていた、という人が再訪して『変わらないね』と嬉しそうに言ってくださる。漆喰の壁も床も年月と共に色が変わっていくが、白くしない。歴史を消さないようにしています」
モンマルトルの居酒屋ラパン・アジルの壁は煙で煤けているが、あれが真っ白に塗り直されたらがっかりするでしょう、と林さん。

林さんがスタッフに伝えていることは、「お客さまがわざわざここに来てくださっているのだということを感じながら応対するように」。

原宿店の店長を20年あまり努めてきた新名さんによれば、「お客さまが出ていかれるときは最後まで視線で見送りなさい、と指示されます。人によってはもう一度振り返って会釈してくれることがある。そのとき、店の者が洗い物などしてこちらを見ていなかったら……」

たいていの人は振り返らずにお店を後にするが、少数の人のために、新名さんはたとえ洗い物などで忙しくしていても、お客の背中を最後まで目で追うのである。

休日の午後はにぎやかになるが、平日は終始、ゆるやかな時間が流れている。雨の日ともなればなおさらだ。 今日もアンセーニュ・ダングルにはコーヒーと、1本ずつ品種の異なる高貴な薔薇が香っている。


text&photo / Yoko Kawaguchi

HISTORY

HISTORY

1975/07 原宿のわかりにくい路地裏に開店。喫茶店は駅前の便利な立地に開くものと相場が決まっていた時代、「周囲の人には絶対失敗するといわれたが、個人の資金ではその立地しかなかった。それでも来てくれた人々が店を気に入り、再び友人知人を連れてきて自慢してくださったので、宣伝もしないのに評判が広がっていきました」
1979/11 広尾店オープン。
1985/06 自由が丘店オープン。
2015/07 原宿店がオープン40周年を迎える。

SHOP DATA

カフェ アンセーニュ ダングル 原宿店
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-61-11 第二駒信ビル B1F
最寄り駅:原宿

まだある!川口葉子おすすめの原宿・表参道エリアのカフェ

SEE MORE GLASS(シーモアグラス)

小さな空間に絵本の魅力、アートの魅力をぎゅっと詰め込んだブックカフェの先駆的存在。女性店主がひとりでほそぼそと営みながら、この場所を愛するお客や有名無名の作家たちに支えられて20周年を迎える。玄米カレーとチャイで心うるおうひとときを。

SEE MORE GLASS(シーモアグラス)
住所:東京都渋谷区神宮前6-27-8京セラ原宿ビルB1F
最寄り駅:原宿、明治神宮前<原宿>

Nid Cafe(ニドカフェ)

パリの伝統的カフェと現代東京のセンスを融合させて、ゼロ年代の東京カフェのひとつのスタイルを創りあげた名店。窓辺に座って東京タワーを眺めながら、ビストロ的な料理とワイン、あるいはスイーツとコーヒーで、このカフェ特有の魅力的な時間を楽しみたい。

Nid Cafe(ニドカフェ)
住所:東京都港区南青山3-13-23 青山パティオビル3F
最寄り駅:表参道

REVIVE Kitchen(リヴァイヴキッチン)

コスメブランド「THREE」が手がける、心身をリフレッシュする食事やスイーツが楽しめるカフェ。米類を活用してグルテンフリーを実現したパンケーキやパスタ。新鮮な野菜やフルーツで作るコールドプレスジュース。食と健康を意識する人には最高のメニューが揃っている。

REVIVE Kitchen(リヴァイヴキッチン)
住所:東京都港区北青山3-12-13
最寄り駅:表参道

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女子力応援レストラン

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川口葉子

川口葉子さん

東京在住

プロフィール

喫茶時間を愛するライター。カフェについての著書多数。様々なメディアでカフェやコーヒー特集の監修、執筆を手がける。

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