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カフェライター川口葉子が選ぶ、二子玉川のおしゃれかわいいカフェ4選

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カフェライターの第一人者・川口葉子さんの連載「川口葉子の東京カフェクロニクル」。開店から3年以上経ち、地域に愛される存在になったカフェの歴史やエピソードを毎回綴ります。第12回は二子玉川の「カフェ リゼッタ」を紹介。

Date2016/02/19

[連載] 川口葉子の東京カフェ クロニクル ~カフェの上にも3年~

【川口葉子カフェ連載vol.12】カフェ・リゼッタで味わう、リネンのような空気感とフランスの田舎の味

街にはその空気感にふさわしいカフェがある。

自然に恵まれた暮らしの舞台、二子玉川には、美しさと実用性が共存する上等なものを好む空気がある。リゼッタはそんな街で10年に渡って愛されてきたカフェだ。

フランスのアンティーク家具に囲まれて、幸福な朝食。

午前10時30分、開店を待ちかねたように扉を開けて入ってくる人がいる。平日のオープン直後30分間だけのプチ・デジュネ、「平日の朝食セット」を楽しみに訪れるのだ。きつね色にトーストされたブリオッシュとコンフィチュール、ヨーグルト、ミューズリーパルフェにコーヒーが付いて500円というとびきり嬉しい価格である。

香ばしい匂いを漂わせて朝食が運ばれてくるのを待ちながら、手帳のページをめくって今日の予定を確認する。窓の外の陽射しを眺めて、ふと思いついたことを書きとめてみる。静かで気持ちのいい午前。

リゼッタはリネンやオーガニックコットン、カシミヤなどの肌に心地よい自然素材で作られる洋服のブランドだ。心を惹きつける佇まいのブティックとカフェが小路をはさんでほぼ向かい合っている。「長く大切にしてもらえる洋服を作りたい」という理念は、この街の空気にも似つかわしい。

ブランドの世界観をそのまま体現するカフェはフランスの田舎町をイメージしており、スタッフがまとうリネンのシンプルなユニフォームもリゼッタ製だ。店内には風合い豊かなフランスのアンティーク家具や雑貨、きちんと手をかけて作られたおいしいものが揃っている。

コーヒー豆は姉妹店である大阪のELMERS GREENで自家焙煎したもの、自慢のパンも同じくELMERS GREENで作られている。パン職人が名店ブランジュリ タケウチ出身だというのは、界隈の人には知られている話。

お昼には土のりんごのゴーフル。午後ならバニラ香る名作スコーン・ヴァニーユ。

カフェが最もにぎやかになる時間帯はランチとティータイムである。厨房で手作りする季節のスイーツの数々、タルト・サレやパテやスープ、ブリオッシュを使ったサンドウィッチなど、いずれも「毎日食べたくなる味」を心がけて良質の材料を用いた、ほっと安心するおいしさだ。

たとえば「土のりんごのゴーフル」は、じゃがいもとグリュイエールチーズの生地に、レモンとオリーブオイルで和えた新鮮なサラダをたっぷりとのせている。絶妙の焼き加減のおかげで、カリッとした表面の香ばしさと、もちもちした食感がともに楽しめる人気の一皿だ。香りの良い胡椒とローストした松の実がほどよいアクセントをもたらしている。

定番のデザート「フロニャルド」はフランス・リムーザン地方の伝統的なお菓子。クラフティ、つまり果実を混ぜこんだカスタードプディングといえばイメージしやすいだろうか。リゼッタの厨房で使われるフルーツは日によって異なり、この日は美しい色彩のグリオットチェリーとバナナだった。生地のプリンとクレープの中間のような食感がとにかく魅力的で、シンプルで素直な味わいの中に思いがけず深い喜びがある。

テイクアウトにも人気の名作といえば、小ぶりの姿も愛おしいスコーン・ヴァニーユだ。ぜひ1個、購入して帰ってほしい。リゼッタの自家製コンフィチュールに合うようプレーンタイプ1種類のみ。小麦粉に風味豊かな発酵バターとグラニュー糖を混ぜて、手でこねて生地を作っており、低温のトースターで3分ほど温めたスコーンを噛みしめると、口の中にふんわりとバニラビーンズの香りが漂う。

高齢の常連客の男性は来店するたびにダージリンとスコーン2つ、そして「甘いものは控えているから小指の先ほどのジャムをつけてください」と注文し、さらに帰りがけにスコーンを3つテイクアウトしていくのだという。

リゼッタという店名は、1929年に刊行されたフランスの小学校の教科書に登場する女の子の名前からとられた。スタッフの入江さんが教えてくれた。
「フランスに行ってお店の名前の話をすると『かわいいけれど、おばあちゃんみたい』とよく言われますが、昔風のこの名前がぴったりだと思っています」

仕立ての良い、張りのあるリネンのワンピースが似合う女の子。真面目な優しい声で話し、料理上手。いつも少しの憧れと懐かしさをかきたてるそんな存在こそがカフェリゼッタであり、街の人々から寄せられる期待に手抜きをせずに応え続けてきたからこそ、現在があるのだと思う。


text&photo / Yoko Kawaguchi

HISTORY

HISTORY

2006/07 二子玉川の静かな路地にオープン。当初は店内に洋服のブティックとカフェがほぼ半分ずつのスペースで設けられていた。
2007/12~ 2か月に1度開催される「二子朝市」に参加。店内と店頭でタルトフランベやコンフィチュールなどを販売。
2010/08~09 毎週金曜日の夜に料理家・渡辺康弘が「間借り食堂」を開催。
2010/10 ブティックが独立して小路の向かいにオープンし、カフェは2倍の広さに拡張してリニューアルオープン。
2013/06 自由が丘店オープン。
2014/08 毎週土曜日の午前中、朝食イベント「果物のある朝食」を開催。20名限定で旬の果物をたっぷり使った特別メニューを提供し、予約で満席となった。
2015/04~ 「assemble!」のアンティーク雑貨市を定期的に開催。

SHOP DATA

Cafe Lisette
住所:東京都世田谷区玉川3-9-7
最寄り駅:二子玉川

まだある!川口葉子おすすめの東京・二子玉川カフェ

CHICHICAFE

多摩川の空を夕日が染めていく。春の薄青い空で飛行機がきらめく。季節の美しいシーンを眺められる小さなカフェには、ちょっと特別感が漂う。和の要素を取り入れたメニューが好評で、ごはんには特別栽培の新潟刈羽村産コシヒカリを使用。ソファでくつろぎなら、心なごむひとときを。

CHICHICAFE
住所:東京都世田谷区玉川1-2-8
最寄り駅:二子玉川

Cafe Soul Tree

築40年の鉄工所を改装し、錆のざらついたワイルドな質感と高い天井の開放感が魅力のファクトリー併設カフェが誕生した。家具は溶接や木工で自作しており、男の秘密基地といった風情。ランチプレートやスイーツ、ビールに合う料理も充実。

Cafe Soul Tree
住所:東京都世田谷区鎌田3-2-15
最寄り駅:二子玉川

FARMERS MARKET ゆっくりとカフェ

地域の農家が生産するとれたての野菜や園芸品の直売所の2階に、世田谷育ちの新鮮野菜をたっぷり使ったカフェがある。デリ3品とスープ、玄米ごはんまたはパンが選べるデリプレートのランチや、季節の果実を使ったスイーツが人気。

FARMERS MARKET ゆっくりとカフェ
住所:東京都世田谷区鎌田3-18-8
最寄り駅:二子玉川

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川口葉子

川口葉子さん

東京在住

プロフィール

喫茶時間を愛するライター。カフェについての著書多数。様々なメディアでカフェやコーヒー特集の監修、執筆を手がける。

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