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【川口葉子カフェ連載】NOAKE TOKYO/浅草・観音裏の小さなスイーツの名店

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カフェライターの第一人者・川口葉子さんの連載「川口葉子の東京カフェクロニクル」。開店から3年以上経ち、地域に愛される存在になったカフェの歴史やエピソードを毎回綴ります。第10回は東京・浅草から「NOAKE TOKYO」を紹介。

Date2015/12/17

[連載] 川口葉子の東京カフェ クロニクル ~カフェの上にも3年~

ボンボンキャラメルの花束、クリスマスイブの夜空。創意あふれるお菓子には、懐かしさと楽しい驚きが同居している。

浅草寺の北側、観音裏と呼ばれる界隈に、スイーツとコーヒーの小さな屋台から出発したパティスリー、野空(ノアケ)の店舗がある。

店内の椅子に座って注文した人には、主役のスイーツとコーヒーが登場する前から、早くもちょっとした感動が待ち受けている。木製の小さな二段重がテーブルに運ばれてくるのだ。そっと蓋を持ち上げると、上の段には淡い色あいの金平糖とコーヒー用の砂糖が2種類、下の段にはカトラリーがおさめられている。フレンチプレスで抽出するスペシャルティコーヒーに、こんな和の魅力が添えられるのがなんとも心憎い。

どこか懐かしいのに意外性に満ちたおいしさを提案するノアケ。スタート地点からそうだった。屋台なのに高品質なコーヒー。小さな子が目を輝かせそうな可憐なロリポップなのに、パティシェールが作る洗練された味わい。これが評判にならないわけがない。浅草に店舗を構えてからも出店の依頼が相次いで、東京駅や銀座のデパートなどに販売スペースを持つようになった。

パティシェールの田中伸江さんはスイス・ジュネーブのパティスリーで修業し、帰国後は有名フレンチ「ベージュ アラン・デュカス 東京」でデザートを担当して技術を磨いてきた。ノアケの人気商品である可憐な「ボンボンキャラメル」は、スイス時代からアイディアを温めていたものだ。

フレッシュで濃厚な果実のキャラメルをチョコレートがまるく包み込むボンボンキャラメル。そこに木のスティックを刺してロリポップ型にした。その可愛らしいこと!

「お菓子はシーンが大切」という田中さんは、スイーツを構想するときに、必ずそれが食べられるシーンを鮮やかにイメージしている。
「ボンボンキャラメルの発想のヒントは、にぎやかな縁日の屋台に並ぶリンゴ飴やチョコバナナでした。屋台で売るお菓子だから、楽しい気持ちで食べられるものにしたかったんです」

ボンボンキャラメルを何本かまとめてラッピングしたブーケも、贈りものとしてたいそう喜ばれている。時には30本の薔薇の花束のかわりに、30本の色とりどりのボンボンキャラメルの花束を大好きな人に贈りたいし、贈られてみたいでしょう?

冬季限定の「イヴの夜空」はクリスマスにぴったりのケーキ。基本は「黒い森」を意味するポピュラーなケーキ、フォレノワールで、グリオットチェリーのソースとジェノワーズショコラを重ねているが、田中さんは定番の生クリームではなくミルクのムースを用いて、重たくならずにミルキーな風味を楽しめるようにした。

鈴の音を響かせてサンタクロースが降りてくるイヴの夜空。グラサージュの上にちりばめられた金銀のアラザン、赤いグリオットチェリーのコンポート、白い金平糖は、冴えた空できらめく星々や遠い街の灯、近くのあたたかな窓あかりだ。

このロマンティックなケーキは、お客に「送れるクリスマスケーキ」をリクエストされたことから生まれたという。離れて暮らす家族にクリスマスプレゼントとして送るケーキ。冷凍便で届く「イブの夜空」は、切り分けて4人で楽しむのにちょうどいいサイズだ。
「お菓子は本来、みんなで楽しみを分け合うもの。誰かとシェアして召し上がっていただけたら」

これからも従来にはなかった、しかし奇をてらわない「少しだけ心に残る」お菓子を作っていきたい、と田中さん。バターや小麦粉を筆頭に全ての材料が高騰している現在、多くのパティスリーは厳しい試練に直面している。値上げをせずに続けていくには、材料の質を下げるか、お店の利益を削るしかない。材料のクオリティを保つことで信頼を得てきたノアケは、小さなお店でなければできないことに挑戦していきたいという。

苦しくても続けてこられた秘訣はなんですか、と尋ねてみた。
「次にお客さまにお見せしたいアイディアをいつも温めているから、やめられないんです(笑)『こんなお菓子があったらいいと思っていませんでしたか?』とお客さまに差し出して、お役に立ちたい」

近くの東京スカイツリーを訪れた子どもたちは、展望台から空を眺めて「雲を食べたい」と口にする。「雲菓」は田中さんがそんな光景から発想した綿菓子だ。縁日で食べた大きな綿菓子ではなくて、両手のひらにのるくらい真っ白な雲。
洗練されたパッケージの「雲菓」を買いもとめ、部屋で包みを開きながら思ったのだ。そうそう、私も子どものころ、雲を食べる空想をしていた。


text&photo / Yoko Kawaguchi

HISTORY

2009/10 表参道でお菓子とスペシャルティコーヒーの小さな屋台「NOAKE」を出す。
コーヒーは前職の同僚、田中謙吾さんが担当。
2010/04 表参道から六本木ヒルズに移動し、お菓子の屋台「NOAKE」を出す。
2012/12 浅草・観音裏に初の店舗をかまえ、カフェスペースを設ける。
2013/09 神田に「NOAKE TOKYO マーチエキュート神田万世橋店」を出店。
2013/11 東京駅一番街に「NOAKE TOKYO 東京駅店TOKYO Me+」を出店。
2014/04 松屋銀座に「NOAKE TOKYO 銀座店」を出店。

SHOP DATA

NOAKE TOKYO
住所:東京都台東区浅草5-3-7
最寄り駅:浅草

まだある!川口葉子おすすめの東京・浅草カフェ

カフェを併設した実力派パティスリー。上質な焼き菓子は理屈ぬきに楽しめる純粋なおいしさ。姿かたちの可愛らしさと、どこか懐かしい風情も魅力。古い木造家屋を改装した空間は、元は日本舞踊のお師匠さんの稽古場と住まいだった。

菓子工房ルスルス 浅草店
住所:東京都台東区浅草3-31-7
最寄り駅:浅草

路地裏の古びた一軒家を洗練されたセンスで改装。1階と2階がアンティーク家具が並ぶ居心地のよいカフェに生まれ変わった。オーナー夫妻は夫が料理、妻がスイーツを担当。店名が意味するのは「音の場」。良質の音楽とおいしいものを味わいながら憩いのひとときを。

Cafe Otonova
住所:東京都台東区西浅草3-10-4
最寄り駅:浅草、田原町

1946年の創業以来、池波正太郎や手塚治虫など多くの著名人に愛されてきた喫茶店。家具のひとつひとつに風格と懐かしさが漂う。名物は水出しのダッチコーヒーと、店名を冠した小さなロールケーキ「アンヂェラス」。ダッチコーヒーは梅酒を加えて「梅ダッチ」を楽しむのが粋。

アンヂェラス
住所:東京都台東区浅草3-31-7
最寄り駅:浅草

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川口葉子

川口葉子さん

東京在住

プロフィール

喫茶時間を愛するライター。カフェについての著書多数。様々なメディアでカフェやコーヒー特集の監修、執筆を手がける。

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