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【川口葉子カフェ連載】すみだ珈琲/会話とコーヒーと傑作モカチーズケーキ

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カフェライターの第一人者・川口葉子さんの連載「川口葉子の東京カフェクロニクル」。開店から3年以上経ち、地域に愛される存在になったカフェの歴史やエピソードを毎回綴ります。第9回は東京・錦糸町の下町に根付く「すみだ珈琲」を紹介。

Date2015/11/19

[連載] 川口葉子の東京カフェ クロニクル ~カフェの上にも3年~

自家焙煎のスペシャルティコーヒーは江戸切子のグラスで。街の魅力が自然に伝わってくる憩いの空間。

カフェは人の色に染まる。素敵な人が通ってくるカフェは、素敵なカフェになる。

ある肌寒い夕暮れどき、すみだ珈琲の引き戸を滑らせると店内はあいにくほぼ満席だった。どうしようかな。躊躇していた私にカウンター席の女性客がにっこりして、「いま帰りますから、どうぞ」と立ち上がった。すみだ珈琲はそういう場面に出会えるお店だ。

入ってすぐ左手には3kg釜の焙煎機が輝いている。自家焙煎のスペシャルティコーヒーは、特注した江戸切子のカップに注がれる。

江戸切子は職人の手から生まれる墨田区の伝統工芸だ。藍色のガラスの表面に刻まれた星や市松などの紋様が、淡い光をゆらめかせながら街の歴史を物語る。

「店名にすみだの名を冠したのだから、江戸切子を日常に使って地域に貢献できれば」と店主の廣田英朗さんは言う。

ブレンドはすっきりとした浅煎りから、やや深煎り、ビターチョコレートのような苦さの中に甘みを感じる深煎りまで3種類。エチオピアやケニアなどのシングルオリジンも揃えられている。

廣田さんがコーヒーをドリップするスタイルは独特だ。

「コーヒー粉にできるだけ圧力をかけないよう近い位置からそっと注ぎます」

ポットの先端を可能な限りコーヒー粉に近づけて細く優しくお湯を注いでいく姿に、コーヒーへの愛情がにじみ出る。

注文が立て込んだときのドリップにはもう感嘆するしかない。3つ並べたドリッパーの前で廣田さんが神経を集中し、一定のリズムをキープしながらそれぞれにお湯を注いで3杯のコーヒーを抽出していくさまは圧巻だ。ポットの注ぎ口が踊る無音のワルツ。

もうひとつの名物は手作りのケーキ各種である。廣田さん自身が腕をふるうモカチーズケーキは、贅沢にもスペシャルティコーヒーを混ぜ込んで焼きあげた傑作。コクの豊かなチーズの風味を追いかけるようにコーヒーの香りがふわりと鼻に抜けていき、幸福な余韻を残す。

かつて良品計画の社員として無印良品のカフェの立ち上げに関わった廣田さんは、独立開業を視野に入れて世田谷の自宅に近い堀口珈琲のセミナーを受講し、スペシャルティコーヒーの魅力に開眼。退職し同店で修業した後、錦糸町にすみだ珈琲をオープンした。

当初は東京西部の物件を探していたにもかかわらず、なぜ東の錦糸町を選んだのか? 理由のひとつは父親の実家が錦糸町にあったこと。もうひとつは――

「そこの角にあるTシャツメーカー『久米繊維』の会長さんが『墨田区でやりなよ!』といって自転車で街を案内してくださって(笑)」

その折にスパイスカフェや東向島珈琲店を紹介され、「こういう素敵な人たちに刺激を受けながら、共に地元を盛り上げていきたい」と思ったのだという。

錦糸町に通っているうちに発見した築50年の空き家を改装し、2010年のクリスマスウィークにオープン。街の人々がくつろげる場所を目指したが、最初の1年間、小さなお店の存在はなかなか認知されなかった。東日本大震災の影響も受け、「やってもやっても成果が出なかった」と振り返る。

「そんな時期に精神的に助けてくれたのが常連客の方々。いつも『大丈夫、大丈夫』と言い続けて食事に誘ってくれたりして、本当に感謝しています」

5年間続けてこられたのは多くの人に支えてもらったおかげだ。

「お店には良い時もあれば悪い時もある。大事なのは、悪い時にどうやって自分のモチベーションを保つか。もう感謝しかないですね。支えてくれた人たちを裏切れない」

取材時、そんな話をうかがっているうちに最初のお客が入ってきた。ミドルエイジの女性である。コーヒーと厚切りのトーストを注文した彼女にお店の魅力を訊ねてみると、「もう家族みたいで」と、おっとりした声が返ってきた。

「あたしは独り暮らしでね、仕事を辞めたから、一日じゅう誰とも口をきかない日もあるの。そんなときはここに来ると、ほっと安心する」

そのようにして街の人々の日常に溶け込む一方、遠方から訪れる人々も増えた。自宅でティーバッグのように手軽にコーヒーを淹れることのできるコーヒーバッグを商品化した「THE COFFEE HOUSE」が好評で、全国の食品雑貨店などで取り扱われるようになったのだ。

旅と航海をテーマに5つの生産国のコーヒーをセットにしたパッケージの洗練されたデザインに目をみはる。もし街角で見かけたら手に取ってみていただきたい。街に根づいた小さなカフェの挑戦と、ひとつの到達点である。

HISTORY

2010/12 工事の遅れなどが原因で、予定より約2週間遅れてオープン。
2012/06 墨田区の職人や作家の作品を展示販売する「第4回すみだの手しごと作品展」のイートインに出店。地元の人々に認知されるきっかけとなる。
コーヒーバッグの商品化に取り組む。墨田区のものづくりコラボレーション事業を通して、プロデュースはmethodの山田遊氏、アートディレクションはDRAWER inc.の池田充宏氏に依頼した。
2013/04 コーヒーバッグ「THE COFFEE HOUSE BY SUMIDA COFFEE」発売。
便利さとおいしさ、デザインの良さで反響を呼び、全国の食品雑貨店などで取り扱われるようになる。
2014/06 東京ビッグサイトで開催された国際見本市「IFFT/インテリア ライフスタイル リビング」にコーヒーバッグを出店。
FRED PERRYやCassina ixc.とのコラボが生まれる。
2015/01 お店を2週間休み、グアテマラへコーヒー農園視察に出かける。
帰路にアメリカ西海岸でコーヒーショップ巡りをして刺激を受ける。
2015/03 モカチーズケーキが墨田区の「すみだモダン2014」ブランド認証を獲得する。

SHOP DATA

すみだ珈琲
住所:東京都墨田区太平4-7-11
最寄り駅:錦糸町

まだある!川口葉子おすすめの東京・錦糸町カフェ

広々とした開放的な空間。シンプルで洗練されたインテリアのあちこちに、子ども連れにもシニアにも優しい配慮が光る。メニューは全てオーガニックな素材を使ったヴィーガン料理やスイーツ。雑穀米を使ったミニミールスも好評。

ささやカフェ
住所:東京都墨田区横川1-1-10
最寄り駅:錦糸町

女性二人が営むこのカフェには水色の外壁に扉が3つ並んでいる。大人用、子ども用、犬用という素敵な遊び心だ。店内の雑貨づかいも魅力的。定番のワッフルやスコーン、季節のケーキを食べながらゆったり過ごしたい。

towa mowa cafe(トワモワカフェ)
住所:東京都墨田区太平4-18-5
最寄り駅:錦糸町

創業50年を迎える純喫茶は昭和の香り漂う懐かしい空間。店名はオーナー一家がこの場所でメリヤス工場を営んでいたことに由来する。飾り気のない分厚いホットケーキや、純喫茶の定番的なモーニングセットが人気。

ニット
住所:東京都墨田区江東橋4-26-12
最寄り駅:錦糸町

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川口葉子

川口葉子さん

東京在住

プロフィール

喫茶時間を愛するライター。カフェについての著書多数。様々なメディアでカフェやコーヒー特集の監修、執筆を手がける。

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