第1回:いちばんしっくりくる駅名をサーブ!【駅名ソムリエール/能町みね子】_95180

vol.1 私の中の歴史的に正しい駅名をつけたがる頑固じいさん

第1回:いちばんしっくりくる駅名をサーブ!【駅名ソムリエール/能町みね子】_95181

今月から新連載がスタート!土地の歴史や地名の由来に強い愛とこだわりを持つ能町みね子さんが、独自の視点で新たな駅名を考案。あなたの住むあの駅も、毎日通っている会社の最寄り駅も、本当は違う名前がふさわしいのかもしれません!

「新宿西口」は駅名ではない 出口の名前だと頑固じいさんが言う

以前から、都営大江戸線の「新宿西口駅」って何なんだ、と思っていました。


巨大な「新宿駅」の西の出口を新宿西口という。

しかしそこに別の「新宿西口駅」がある。

しかもその駅は新宿駅とつながっている。

そのうえ別のところに「西新宿駅」もある。


いくらなんでも分かりづらいじゃないか。

もっと地名を生かした、歴史的に正しい駅名がつけられないものかね!

と、私の脳内に住む、激動の昭和をずっと東京で生き抜いてきた頑固じいさんが嘆くのである。


ほかにも、押上駅という最寄駅があるにもかかわらず、東武線の「業平橋駅」が「とうきょうスカイツリー駅」に改名してしまったことにもじいさんは怒っているし、銀座線・都営浅草線の浅草駅と、つくばエクスプレスの浅草駅が徒歩10分ほど離れているくせに同じ駅名を名乗っていることにも怒っています。


じいさんは怒りっぽいんです。


私はかつて、大学での研究テーマが「地名」でした。

昔から散歩も地図も好きで、地名も大好きなのです。いま住んでいる新宿区の牛込区域はいまだに江戸期からの地名が住所になっていて、地名が好きだから住んでいるようなものです。


しかし、今の東京都心のほとんどの地域にはドライで記号みたいな地名ばかりが幅を利かせています。


本来、東京にはもっと味のある細かい地名があるのに。最近はそれを反省してか、わざわざ旧地名を案内する看板を作るような区もありますが、近年できた鉄道路線の駅名はやっぱりほとんどつまらないものばかりです。


メジャーな地名にしたほうが地価が上がるとか、そういういろいろな事情もあるんだろうな、と思う。

でも、個人的には、地名や駅の名前にはその地域の歴史に合ったようなものを残してほしい。



というような話を担当編集さんにしたら、それを連載にしませんか、という流れになってしまいました。

東京メトロの各駅の名前を評価して、高評価の場合はその理由を、低評価の場合は勝手に私が「こっちのほうがいい」と思う駅名をつけ直す、と。


いやいや、いくらなんでもそれはマニアックすぎるのではないか。あと、東京メトロの関わるLet’s ENJOY TOKYOでの連載でそんなことを言ったら偉い人に怒られちゃうんじゃないのか。


でも、たかだか私個人の妄想だから……まあいいか。前の「一人カラオケ」の連載もずいぶん偏ったものだったし……。

いちばんしっくりくる駅名をサーブする それが「駅名ソムリエール」

さて、私の思う「いい駅名」は、まず第一にその地域を代表する、特徴的な地名であること。


大きな施設などがある場合は「○○前」みたいなものも分かりやすくていいと思う。銀座線「三越前」なんて、開業当時に三越がどれだけランドマークとしての機能を果たしていたか分かって味があるし、実際に三越に行くとき便利です。


でも、メインの地名に東西南北をつけたようなものは基本的に細かな地名を無視しているのでダメ。「新○○」も手抜き感があるので避けたい。

「清澄白河」みたいに二つの地名を合成したヤツも、どちらにも決めきれず妥協してる感じがするので嫌。


といった基準で、一応それなりに地名に詳しい者として、勝手に各地下鉄路線の駅名をソムリエぶって評価し、いちばん適したものをサーブして差し上げようという、非常に極端で誰が興味を持つか分からない連載です。



でも私は楽しく書くよ。次回から具体的に、偉そうに行くよ。



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※本記事内の情報は2016年06月08日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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