【第5回・“江戸東京たてもの園”編】江戸と近代東京へタイムスリップ

▲いい加減半袖シャツじゃ寒いのでダウンベストをお召しになりました

▲いい加減半袖シャツじゃ寒いのでダウンベストをお召しになりました

ジブリ作品マイベスト3は『となりのトトロ』『紅の豚』『千と千尋の神隠し』の熊山です。次点で『平成狸合戦ぽんぽこ』『崖の上のポニョ』も入るかしら? ともあれジブリファンにとって、要チェックな展覧会が現在、小金井公園にある江戸東京たてもの園で開催されています。


それが『ジブリの立体建造物展』。

▲『アルプスの少女ハイジ』の世界観を再現した、だまし絵風ジオラマ。お立ち台に立てば、はるか遠くにアルプスの山々や麓の町並みが見渡せます。 ©ZUIYO ©Museo d’Arte Ghibli

▲『アルプスの少女ハイジ』の世界観を再現した、だまし絵風ジオラマ。お立ち台に立てば、はるか遠くにアルプスの山々や麓の町並みが見渡せます。 ©ZUIYO ©Museo d’Arte Ghibli

ジブリ作品内の“建物”をテーマに、『風の谷のナウシカ』から最新作『思い出のマーニー』まで、21作品の背景画、美術ボード、スケッチなどの貴重な資料や再現ジオラマが多数展示されています。言われてみれば、「サツキとメイの家」や「油屋」「カルチェラタン」など、ジブリ作品には必ずと言っていいほど魅力的な建物が登場しますものね。これは興味深い。


事実、昨年7月から12月までの入場者数は約30万人と同園過去最高の盛況ぶりで、途中で会期が延長されたほど。しかしそんな展示も3月15日で終わってしまうとのことで、いちジブリファンとしてあわてて訪れた、そんな次第です。

正直カップルは多い、負けるなおひとりさま!

JR武蔵小金井駅からバスで5分。桜の名所としても知られる小金井公園の広大な敷地内に、江戸東京たてもの園はありました。平日の午前中ながら『ジブリの立体建造物展』は大人気。特にカップル比率が高めゆえ、自身のノイズキャンセリング能力が試されますが、心置きなく好きな作品をじっくり楽しめるのはソロ活ならでは(泣)。前述したように、マイフェイバリットジブリ作品は人それぞれ違いますからね。

▲全長3メートルの「油屋」。他に「サツキとメイの家」ではマックロクロスケ、「スラッグ渓谷」では土中に埋もれた巨神兵など、隠れキャラを探すのも楽しい。©Studio Ghibli

▲全長3メートルの「油屋」。他に「サツキとメイの家」ではマックロクロスケ、「スラッグ渓谷」では土中に埋もれた巨神兵など、隠れキャラを探すのも楽しい。©Studio Ghibli

おもちゃ好きとして注目したのは、展覧会用に新規造型された「湿っ地屋敷」(思い出のマーニー)、「宗介とポニョの家」(崖の上ポニョ)、「油屋」(千と千尋の神隠し)、「グーチョキパン店」(魔女の宅急便)などのジオラマたち。特に油屋は全高3メートルもある大作で、いろんな角度から眺めまわすことで、作品内のシーンとシーンのつながりを把握することができます。


この『ジブリの立体建造物展』だけでも数時間は滞在できること請け合いですが、実は熊山が本当にオススメしたいのは、展示室の背後に広がる復元建造物エリア。こっちの方がメインディッシュなのです。

展覧会だけ観て帰るのは愚の骨頂よー

▲たてもの園のレイアウトは東京の縮図。西ゾーンには多摩の農村エリアや山の手、東ゾーン・センターゾーンには下町やお屋敷が設営されています。「ここ、二・二六事件で高橋是清が暗殺された建物ね」とボランティアガイドのおじさん。

▲たてもの園のレイアウトは東京の縮図。西ゾーンには多摩の農村エリアや山の手、東ゾーン・センターゾーンには下町やお屋敷が設営されています。「ここ、二・二六事件で高橋是清が暗殺された建物ね」とボランティアガイドのおじさん。

そもそも江戸東京たてもの園とは、江戸時代から昭和初期までの歴史的・文化的価値の高い建物を、移築して再現した野外博物館。農家から郊外住宅、名家のお屋敷、下町の商店まで、その建物は30棟もあり、しかもほとんどの建物に入ることができるのが最大の魅力です。

▲東ゾーンにある下町再現エリア。関東大震災後に増えた看板建築の町並みにはノスタルジーを刺激されます

▲東ゾーンにある下町再現エリア。関東大震災後に増えた看板建築の町並みにはノスタルジーを刺激されます

多くの美術館・博物館では「観る」ことが主たる体験手段ですが、たてもの園のそれは「包み込まれる」と言った方が適切かもしれません。まるで映画のセットのように、体ごと往時の雰囲気にダイブイン。しかも、すべてが本物なのです。

▲二・二六事件で高橋是清が暗殺された二階の座敷。

▲二・二六事件で高橋是清が暗殺された二階の座敷。

なかには、二・二六事件で当時大蔵大臣だった高橋是清が暗殺された部屋や、『千と千尋の神隠し』の釜爺の仕事場のモチーフとなった文房具店、江戸末期から続く老舗居酒屋といった激アツ物件がゴロゴロ。なおかつ、テーマパークよろしく園内でお食事・喫茶まで楽しめるとあれば、ほら、興味が沸いてきませんか?

▲ジブリの立体建造物展目的で来たなら絶対に見ておきたい武居三省堂。この棚のマトリックスは、そう、釜爺の仕事場のモチーフですよ

▲ジブリの立体建造物展目的で来たなら絶対に見ておきたい武居三省堂。この棚のマトリックスは、そう、釜爺の仕事場のモチーフですよ

▲下町エリアの店蔵を模した休憩棟にあるうどん屋「蔵」。人気の限定かき揚げうどん(780円)をペロリ。うどんは毎朝手打ち。他に松花堂弁当、武蔵野うどん、和スイーツも

▲下町エリアの店蔵を模した休憩棟にあるうどん屋「蔵」。人気の限定かき揚げうどん(780円)をペロリ。うどんは毎朝手打ち。他に松花堂弁当、武蔵野うどん、和スイーツも

ジブリの立体建造物展が終わってもリピートしたい

▲下町エリアの最奥部にあるのは銭湯・子宝湯と居酒屋・鍵屋。仕事終わりにひとっ風呂浴びて、一杯ひっかける。そんな東京下町の暮らしぶりをしのばせる。他に旅館や醤油店、化粧品店などもあり

▲下町エリアの最奥部にあるのは銭湯・子宝湯と居酒屋・鍵屋。仕事終わりにひとっ風呂浴びて、一杯ひっかける。そんな東京下町の暮らしぶりをしのばせる。他に旅館や醤油店、化粧品店などもあり

敷地面積7ヘクタールにも及ぶ園内各所には、ボランティアのガイドさんがいらっしゃるので、それぞれの解説を聞いてまわるだけでも丸1日吹っ飛びます。ジブリの立体建造物展に園内での食事、さらにはミュージアムショップでのお買い物(ジブリグッズが買えるのは会期中だけ!)まで楽しむなら朝一番で入園するのは当然。


オススメの巡回方法としては、まずジブリの立体建造物展に直行し、お昼前には屋外展示に向かいたいところ。ランチを和食にしたいならうどん屋のある東ゾーンへ、洋食にしたいならカフェのある西ゾーンに進むと効率的です。

▲東京の建築学生がたくさん訪れる近代の住宅の名作、建築家前川國男の自邸。ぜひ中に入って心地よい空間を味わってください。ここに住みたい!

▲東京の建築学生がたくさん訪れる近代の住宅の名作、建築家前川國男の自邸。ぜひ中に入って心地よい空間を味わってください。ここに住みたい!

▲三井財閥総領家の三井八郎右衞門邸は、三井家が所有した複数の邸宅を目にすることができる

▲三井財閥総領家の三井八郎右衞門邸は、三井家が所有した複数の邸宅を目にすることができる

▲ドイツ人建築家デ・ラランデが住んだ洋館は2013年に公開開始。のちにカルピス創業者の三島海雲邸として利用されていたそうで、現在は内部にカフェが併設されています

▲ドイツ人建築家デ・ラランデが住んだ洋館は2013年に公開開始。のちにカルピス創業者の三島海雲邸として利用されていたそうで、現在は内部にカフェが併設されています

▲デ・ラランデ邸内のカフェ「武蔵野茶房」。カレー、ハヤシなどのお食事から、ホットケーキ、おいもパフェなどのスイーツ、ドイツビールまでメニューが豊富です。元住民にちなみミルクカルピス(540円)をいただきました

▲デ・ラランデ邸内のカフェ「武蔵野茶房」。カレー、ハヤシなどのお食事から、ホットケーキ、おいもパフェなどのスイーツ、ドイツビールまでメニューが豊富です。元住民にちなみミルクカルピス(540円)をいただきました

楽しみ方は人それぞれですが、やはり人気展示というものがありまして、それが前述した高橋是清邸をはじめ、釜爺の仕事場のモチーフとなった文具店の武居三省堂、銭湯の子宝湯、老舗居酒屋の鍵屋、近代の住宅の名作である前川國男邸、三井総領家の三井八郎右衞門邸、カルピス創業者の三島海雲邸ともなった洋館デ・ラランデ邸などです。誰しもきっとお気に入りの一軒が見つかるはずですから、日がな1日そこでまったり過ごすのもソロ活ならではの楽しみ方と言えましょう。

▲現在も鶯谷で営業を続ける創業160年に迫る居酒屋・鍵屋。狭い店内ながらめちゃくちゃ居心地が良い。夏の夕涼みイベントに限り実際にここで酒が飲めるとか

▲現在も鶯谷で営業を続ける創業160年に迫る居酒屋・鍵屋。狭い店内ながらめちゃくちゃ居心地が良い。夏の夕涼みイベントに限り実際にここで酒が飲めるとか

今回は腕章を付けた取材だったので、さすがに無理でしたが飲酒ができる場所があるのも同園の魅力。桜の季節には花見酒としゃれこみ、夏の夕涼みイベントでは創業当時の鍵屋で一杯ひっかけるなど、酒好きにはたまらないシチュエーションも目白押しです。


そんな博物館が、いわば税金で運営されているわけですからね。都民なら楽しまない手はありますまい。宮崎駿や高畑勲も折に触れて訪れるという江戸東京たてもの園は、ジブリの立体建造物展が終わろうとも魅力十分。リピートしてたら、いつか監督本人や美術スタッフに出くわすかもしれませんよ。

▲茅葺き屋根に虫がつくのを防ぐため、ほぼ毎日行われている燻煙(囲炉裏に火を入れる作業)。これぞ日本の原風景。めちゃくちゃほっこりしますで

▲茅葺き屋根に虫がつくのを防ぐため、ほぼ毎日行われている燻煙(囲炉裏に火を入れる作業)。これぞ日本の原風景。めちゃくちゃほっこりしますで

“江戸東京たてもの園”を楽しむための心得

その1 園内は広大、朝一で入園しソロでマイペースにまわろう

その2 土足厳禁!脱ぎ履きしやすい靴で行こう

その3 無料のボランティアガイドさんとじっくり話しこむならソロで

その4 ほろ酔い気分でタイムスリップしちゃおう

その5 お茶会、盆踊り大会などイベントもチェック

江戸東京たてもの園
  • 所在地

    東京都小金井市 桜町3-7-1

  • 最寄駅

    武蔵小金井

  • 電話番号

    042-388-3300

本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2015年01月21日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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