動物園に行くからには、やっぱり動物が生き生きと動く姿や食事シーンを見たいもの。動物の習性や動物園ならではのアレコレを知っておくと、本当に一日満喫できますよ。“動物園巡り人”市嶋泰樹が「上野動物園の歩き方」を紹介します。

実は、動物園の動物たちは朝イチがとても活発


「動物園なんて、何時に行っても一緒でしょ」と思っているあなた、今日はいいことを教えましょう。

「動物園は朝イチから行くべし」。


▲上野動物園の開園は9時30分です。


実は、動物園の動物たちは、朝とても活発に動くのです。

動物たちは、開園前に寝室(宿舎)から運動場に出てきます。動物はその習性から、不在にしていた自分のテリトリー(縄張り)をチェックするために、運動場をひととおり歩き回ります。飼育員がエサを隠していたりもするので、動物たちは周辺に異変はないか、何か食べるものはないかと、活発に動きます。

他にも「朝は比較的すいている」「時間がたっぷりあって計画を立てやすい」という理由もありますが、「活発な動物を見られるチャンスが増える」というのが「朝イチの動物園」の一番の理由です。動物園に行くからには、動物の寝ている姿よりも生き生きと動いている姿を見たいですよね。


特にライオンやトラ、クマといった大型動物を見るなら、午前中がチャンス


その中でも、午前中は「肉食の大型動物」を中心に見るのがオススメです。

ライオンやトラといった肉食の大型動物は、気温が上がってくる昼から午後になると、座って休憩したり、寝てしまったりします。彼らは野生では天敵が少なく、比較的落ち着いて過ごせるからです。クマやアシカといった大型動物も、気温が上がると寝ていることが多いです。

つまり、午前の涼しい時間帯にライオンやトラ、クマが活発に動いているチャンスが多い、ということです。

上野動物園にいるライオンやトラ、クマは、表門から比較的近い場所で飼育されています。午前中に見て回るにはオススメです。


▲インドライオンのメス。朝に運動場をパトロール。目が合うとドキッとします。


▲スマトラトラも朝、ひととおり運動場をチェック。


動物園の動物たちが活発になる時間帯は、3つあります。
・寝室から運動場に出てくる朝
・エサの時間帯
・寝室に帰る夕方

こういった動物の習性や動物園ならではのことを知っておくと、活発な動物を見られるチャンスが増えます。


入園したら入園マップをチェック。ポイントは「全部見て回ろうとしないこと」


さて、9時30分の開園と同時に上野動物園に入ったら、入口で園内マップをもらいましょう。


▲入口で園内マップをもらおう。フリーペーパーや上野動物園の新聞もあります。


上野動物園は、大きく「東園」と「西園」に分かれています。「東園」にはジャイアントパンダやライオン、ゴリラ、ゾウ、クマなどが、「西園」にはキリンやカバ、ハシビロコウ、カンガルー、両生類や爬虫類などがいます。園内マップを見ながら、「どんな順番で回ろう」と考えてみると良いです。


▲東園と西園に分かれているので、園内マップを見て「どんな順番で回ろう」とおおまかに考えておくと便利。


ポイントは「全部見て回ろうとしないこと」。上野動物園には約400種、2,500点の動物たちが飼育されていて、これは日本でも有数の規模です。全部見て回ろうとするとゆっくり見られません。

動物解説員がテーマに沿って動物園を案内してくれる「ガイドツアー」もあります。入口に案内の看板があるので、気になるテーマなら参加してみましょう。参加は無料、テーマは日によって異なります(実施しない日もあります)。


▲ガイドツアーは、11時から所要時間45分、参加無料です。


ランチタイムも計画的に。週末は混雑するので時間をずらすといいよ


午前中にライオンやトラ、クマといった大型動物を中心に見て回ると、そろそろランチの時間帯が近づいてきます。上野動物園には、レストランが1箇所、軽食を販売しているところが3箇所あります。


▲東園の売店の一つ「Bird Song」。アシカやバードケージ付近の藤棚休憩所近くにあります。


▲西園にはレストラン「西園食堂」もあります。


レストランや売店は、週末の昼にはとても混み合うので、時間をずらして利用すると良いでしょう。東園と西園のどちらでランチにするかも大切です。「その後どの動物を見て回るか」が決めやすくなります。筆者は、比較的すいている11時台にランチを取ることが多いです。

この日は、西園の不忍池テラスの前にある売店で「竹皮パンダ弁当」を買いました。


▲西園の売店で「竹皮パンダ弁当 (580円)」を購入。かわいい。


草食動物は午後も活発。エサの時間帯に合えばラッキー


ゴリラやサル、アジアゾウ、キリンなどは、比較的一日中活動する動物なので、昼から午後にかけても活発に過ごします。

一般的に、草食動物は常に肉食動物から身を守ろうとするため睡眠時間が短く、昼間にずっと寝ているということは少ないです。また大型の草食動物になるほど多くのエサを一日中探そうとするため、体を動かしている時間が長くなります。


▲アミメキリンはのんびり過ごしたりエサを食べたり。


▲ワオキツネザルたちも活発です。


昼頃にエサを与えられる動物も多く、エサの時間帯にちょうど合えば活発に動く姿が見られます。


▲ホッキョクグマのエサの時間はプールでエサを採る姿も見られます。


▲エサの時間を事前にお知らせしているところも。西園の小獣館は毎日14時30分からです(執筆時)。


▲動物によっては、特定曜日にボランティアガイドなどによるスポットガイドが行われます。


夕方は動物たちもそわそわ。動物が宿舎に帰るときに意外な見どころが


夕方になると、「そろそろ帰る時間だ」とおおよその時間を理解している動物もいて、早く帰りたそうにそわそわとし始めます。17時の閉園時間を待たずに、少し早めに寝室(宿舎)に帰る動物がいるのですが、この「動物たちが宿舎に帰るところ」にも意外な見どころがあります。

アジアゾウのメスたちはゾウ舎に帰る夕方、飼育員とトレーニングを始めます。ほうきで足裏や背中を掃除してもらったり、簡単な健康チェックなどをします。15時30分から16時前頃に実施していることが多いですが、体調や天候、季節によって変わると思います(冬は1時間ほどゾウ舎に戻るのが早いです)。


▲アジアゾウのトレーニング。豪快にごろーんと横になって飼育員に背中をほうきで掃いてもらったり


▲飼育員に足裏を掃除してもらったりします。


トレーニングが終わると、3頭のアジアゾウは一列に並んで前のゾウの尾を長い鼻でつかみます。そしてそのまま運動場をぐるっと一周し、ゾウ舎に帰っていきます。


▲一列に並んで、前のゾウの尾を長い鼻でつかみます。


▲一列になったまま、運動場をぐるっと一周、そのままゾウ舎に帰っていきます。


また、西園の「子ども動物園」にはトカラ馬や野間馬といった日本在来馬がいますが、彼らも早めに宿舎に帰ります。そのとき、宿舎までの道のりを飼育員に連れられて並んで行進して帰る様子が見られます。


▲日本在来馬が宿舎までの道のりを並んで帰っていきます。希少種の馬たちです。


「ジャイアントパンダをいつ見るか」問題


実はここまでジャイアントパンダを紹介していませんでした。ジャイアントパンダは上野動物園の中でも大人気で行列ができることも多く、いつもどの時間帯に見ようかと迷ってしまいます。

この日は、夕方16時頃に見に行ってみました。ちょうどトレーニングが始まる時間帯でした。


▲ジャイアントパンダの足腰を鍛えるトレーニング。エサを釣り垂らして歩かせます。


トレーニングはジャイアントパンダの体調や天候、季節によって、実施する場所(運動場もしくは室内)や時間も変わるようです。実施しない日もあるそうなので、見られたらラッキーですね。

ジャイアントパンダは、朝、昼のエサの時間の後はお腹がいっぱいで寝てしまうことも多いですが、それ以外は比較的どの時間帯も活発な印象があります。暑さに弱く冬が大好きな動物なので、涼しくなる9月下旬以降はジャイアントパンダにとってはうれしい季節になります。


一日中歩くので、歩きやすい服装と靴を選んで


本気で一日満喫するための上野動物園の歩き方を紹介してきました。


  • ・9時30分の開園と同時に入ろう
  • ・ライオンやトラ、クマといった大型動物は、活発な午前中がチャンス
  • ・全部見て回ろうとしないこと
  • ・草食動物は午後も活発。エサの時間帯に合えばラッキー
  • ・夕方は動物たちもそわそわ。動物が宿舎に帰るときに意外な見どころが

こういった動物の習性や動物園ならではのアレコレを知っておくと、上野動物園をより一層楽しめます。歩きやすい服装と靴を選んで、17時の閉園時間まで上野動物園を一日中楽しんでみてください。


企画・執筆:市嶋泰樹

動物園巡り人。大阪出身、東京在住。本業はウェブのコンサルタント。週末は動物園に行っているか、美術館や博物館に行っているか、仕事をしているかのどれか。好きな動物はレッサーパンダ。


撮影:市嶋泰樹、市嶋智子


※2016年9月30日時点の情報です。情報、内容等は変更になる場合があります。

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