vol.2 歴史ある銀座線は昭和の地名をもっと大事にするべきである

駅名。その狭すぎて深すぎるテーマに、早くも(局地的に)話題沸騰の連載・待望の2回目!土地の歴史や地名の由来に強い愛とこだわりを持つ能町みね子さんが、独自の視点で新たな駅名を考案。あなたの住むあの駅も、毎日通っている会社の最寄り駅も、本当は違う名前がふさわしいのかもしれません!

アジアで初めての地下鉄 銀座線は歴史を感じる駅名が多い

東京の地下鉄路線図の「凡例」の部分を見ると、東京メトロと都営地下鉄に分かれていますが、東京メトロのほうでいちばん上に書いてあるのは銀座線です。


続いて丸ノ内線、日比谷線……となっていて、この順はどの図でもふつう統一されている。

これは、単純に開通の古い順に並んでいるわけです。


銀座線の浅草〜上野間なんて、開通はなんと昭和2年。

アジアで初めての地下鉄です。銀座線は生きる化石のような地下鉄なのであります。


だから駅名に使われる地名もとびきり古く、浅草と上野の間の田原町・稲荷町なんて今は住所としては使われていない地名です。もちろんこのあたりの駅名は評価◎。絶対に今後も改名しないでいただきたい。

台東区の半分を占めていた地名 下谷(したや)にもっと脚光を!

次の上野広小路駅もいかにも古い地名のようですが、なんとこのへんの太い道は江戸時代は「下谷広小路」と呼ばれており、これは両国・浅草と並んで「江戸三大広小路」だったらしい。


かつて台東区の西半分が「下谷区」という名前だったくらい「下谷」という地名は存在感が強かったのに、いまやほとんど知られていない。本当の上野広小路は、現:上野駅周辺。なぜ名前がずれてしまったんでしょう。


ということで、上野広小路は「下谷広小路」への改名を推薦します。今の人が由来を何も知らなくても!


その先、末広町〜神田〜三越前〜日本橋〜京橋〜銀座〜新橋〜虎ノ門と、ずいっと一気に並べましたが、ここはすべての駅名が申し分なし。いま消えてしまっている「末広町」の地名もあるし、「三越前」はかつての三越の栄華を思わせます。駅が三越に直結しているのもすばらしい。


一つ飛ばして赤坂見附も好き。

「見附」というのは、見張り番のいた城門の外側の部分を意味するそうですよ。

いいとこどりという観点は 駅名に必要ありません

しかし、その間の溜池山王は引っかかる。唯一平成時代に開業した駅なので、名前の選び方に妥協が見える。


港区と千代田区の境にあり、仮称では「溜池駅」(港区側が推奨)、しかし千代田区側は山王日枝神社にちなんだ「山王下駅」(これも伝統ある地名)を主張して、両方を取るハメになったそうで。

駅のほぼ真上の交差点名は「溜池」だし、ここは千代田区が大人になってシンプルに溜池でいきましょうよ。


青山一丁目〜表参道も、微妙だと思う。「青山でイベントがある」などと言ったとき、その会場は9割方、外苑前か表参道が最寄駅です。青山一丁目駅に用があることはそんなにない。にもかかわらず、「青山」という名前がつく駅は青山一丁目のみ。実際、私の知人で「青山でのイベント」に行く時に間違って青山一丁目で降りた人は何人かいる。これはゆゆしき問題ですよ!


だから、私はいっそ青山一丁目・外苑前・表参道に全部「青山」をつけたほうがいいと思うんです。北と南をつけて、完成。

「表参道」の名も決して悪くないので勿体ないですが……この材料はまたあとで、取っておきます。


渋谷は渋谷でOKとして、これで完成。歴史ある銀座線だから改良ポイントもほぼないかと思いましたが、意外とたくさんいじってしまいました。この調子では(私の)この先が思いやられます……。

本記事内の情報に関して

※本記事内の情報は2016年07月04日時点のものです。掲載情報は現在と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
※本記事中の金額表示は、税抜表記のないものはすべて税込です。