早起きをして、出勤前の時間を有効に使う「朝活」。朝ヨガ、朝読書会、朝英会話など、さまざまな朝活が注目されています。そんななか、朝からひと笑いできる「朝落語」をご存知でしょうか。仕事の前、ボーっとした朝の頭を“笑い”のパワーでしゃっきりさせれば、やる気スイッチもONになりそう。そこで、朝落語を聞くことができるカフェ「VANDALISM」にて、一人、モーニングがてら行ってきました!

落語とボリュームたっぷりの朝食がセットで1,500円!


朝5時半頃、起床。それにしても眠いです……。朝活は、前日に早く寝るところから始まります。普段はなかなか、5時に起きることはないので、ボーッっとした頭で向かいます。
渋谷のカフェ&バー「VANDALISM(ヴァンダリズム)」では、毎朝月曜日の朝7時45分から8時30分頃まで、出勤前の時間に落語を聞くことができます。お店は渋谷駅から「SHIBUYA109」に向かって徒歩3分ほどのところにあり、席さえ空いていれば、予約は必要なし。思い立ったが吉日です。


▲今年の3月にオープン。ここで、本当に落語が……? とつい疑ってしまう

地下にあるお店に入るとまず目につくのが、一段高いステージの上にテーブルを利用してつくられた高座。やはり落語には高座がかかせないのです。


▲ ステージ右側には落語家さんの控え室がカーテンで区切ってある

室内はブラウンの落ち着いた色あい。立食だと120〜130人入るという広い店内は、間接照明に照らされ、大人っぽく、ムードのある雰囲気です。


▲ バーカウンターには、お酒の瓶やグラスがたくさん並び、夜飲みに来ても楽しそう


▲ ギャラリーとして現代アーティストの作品も飾られている

席につくと、ハンバーガーかフレンチトーストの朝食を選択できます。コーヒー、紅茶、カフェオレなどのソフトドリンクもセットで1500円(税込)。ハンバーガーが人気とのことなので、コーヒー付きで注文。できたての肉厚ハンバーグがあったかいバンズに挟まれてでてきました。手づかみだとちょっと食べにくいくらいのボリューム感。普段朝ご飯なんて食べないのに、美味しくてあっと言う間に完食。しっかり食べるとカラダも目覚めてきます。


▲落語を聞きながら、カフェでハンバーガーって、すごいカルチャーミックス!

席についてしばらくすると、スーツ姿の方、若い女性など、ぽつぽつ人が集まってきました。祝日のせいか親子連れのお客さんも。お店の人によると、平日はOLなど出勤前のサラリーマンが多いそう。親子連れをのぞき一人客ばかりだったので、2人用のテーブルを独り占めして悠々と過ごせました。

真打ち登場! 題目は「鼠穴(ねずみあな)」


時間になると、いかにも落語がはじまりそうな三味線の音が流れ、落語家さんが登場。この日は、落語立川流、左談次門下の立川佐平次さんが出演。ワンマンショーで30分間じっくりと噺が聞けます。立川流とは、4年前亡くなったかの有名な立川談志さんの一門です。


▲左平次さんは、お店のオープン当初から朝落語に出演していたそう

落語家には、「真打ち」「二ツ目」「前座」「前座見習い」という階級があり、今年の10月に、二ツ目から真打ちに昇格になったという左平次さん。寄席では最後に出演するという、紅白歌合戦で言うところの“トリ”ですね。そんな方をこんな間近で見られるって、実はすごい!

落語ほぼ初心者の筆者ですが、噺家さんの流暢な話が、“マクラ”から“本題”を移るとき羽織を脱ぐ瞬間が好きで、そこばかり注目して見ていました。現実からいつのまにか時代をさかのぼっているという不思議な感覚。しかし、残念ながら羽織は脱がずに本題へ。お話によっては脱がない場合もあるのだと後で知りました。落語、奥が深い!


▲ 落語家さんのよく通る声が、気持ちよく響く

今日の演目は“鼠穴”。酒と女にうつつをぬかし親からもらった田畑を失い、江戸で成功した兄に無心、たった3文のお金から事業をおこし、成功した竹次郎の話。

3文って、今でいう100円。たった100円しかくれないなんて、ひどい兄です。でも、実は竹次郎にやる気をださせようとして、わざと少ししか渡さなかったという、本当はあたたかいお話。

演目もいよいよヤマ場へ突入。落語家立川さんの額からも汗がながれ、手ぬぐいで汗ふきながら熱演されています。

一度は成功したものの、火事ですべてを失った竹次郎。妻子をかかえ途方にくれ、絶望して首をくくろうとしたときに、目が覚める……。

と、まさかの夢〜!


▲「夢は土蔵(五蔵)の疲れだ」と最後、とオチをつけて終了

話自体は、100円を元手に竹次郎が必死にがんばるところだったり、家が焼けて再び路頭に迷ったり、意外とシリアスなストーリー。オチの「夢は土蔵(五蔵)の疲れ」は、途中でちゃんと伏線もあり、大笑いというよりは、「なるほど! そうきたか! うまい!」という感じで、クスリと笑うイメージです。知的好奇心を刺激する笑いですね。

初心者が落語を楽しむには“ストーリーを想像してみる”のがポイント


日本の伝統文化である落語。落語初心者にとっては、少し敷居が高いように感じることもあるのではないでしょうか。落語家の立川佐平次さんに、初心者でも落語を楽しむコツについてお話を伺いました。

「落語は昔のお話なので、分からない言葉もあると思います。でも、ちょっと言葉が分からなくても話の前後で推測し、まずはストーリーを追いかけてほしいです。また、自分の頭のなかでストーリーを描いてもらえると、より楽しめると思います」

確かに、“さんだらぼっち”とか分からない言葉もでてきましたが、前後を聞くと「藁で造った何か」となんとなく想像できました。落語家の衣裳が着物なのも、みんなが着物を着ていた時代にタイムスリップしたようで、落語の世界観に入りやすい気がします。


▲ 起きぬけは声がでないので、朝5時には起床して準備するそう

「お金を3文しかくれなかった竹次郎の兄が本当に竹次郎のためを思ってやったのか、それともただ単にケチだったのか。お話の中の登場人物について想像するのもおもしろいですね」と立川さん。(私も兄はただケチなだけだったのではないかと想像……)

ストーリーを覚えた、いわゆる“落語通”の人は、音楽を聞くように落語を楽しむそう。リズムとテンポ、その日のアドリブやノリがポイントになってくるようです。確かに同じ曲でも演奏者によって違うものになるところは音楽と一緒ですね。

参加者の方からも、「YouTubeでは見たことあったけど、実際に落語を聞いたのは初めて。ライブ感があって面白かった」と感想を聞けました。


▲シンガポールやNYにも店舗をつくり、日本の文化を発信したいとオーナーの山口さん。お店は映画監督さんとの共同経営

オーナーの山口さんによると、「VAMDALISM」には“芸術破壊活動”という意味があり、寄席から噺家を、舞台から演劇を、シアターから映画を引き離し、新しい場所でカルチャーを展開するというコンセプトから、“朝カル”イベントがはじまったそう。
「今後も落語だけでなく、火曜は映画上映、水曜はお笑い、木曜は演劇、金曜は音楽ライブと曜日ごとに異なる文化を発信していきます」と山口さん(ただし12月いっぱいは“朝カル”はお休み!)。

落語が終わって朝8時半。日本の伝統文化である落語に触れ、知的好奇心も刺激され、頭もすっきり目覚めました。一人朝ご飯も落語を聞きながらだと寂しくないです。
朝活をきかっけに落語にもはまりそうです!


Alternative Cafe&Bar VANDALISM渋谷

〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町26-9 太田ビルB1F
TEL. 03-5784-0939

(ライター:橋村望 女子部JAPAN(・v・))


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